『仮面ライダー響鬼』ザンキ役の松田賢二さんが“恥部をさらけ出せる”数少ない存在――元東映プロデューサー・髙寺成紀さんとの“師弟関係”のルーツを探るインタビュー
東京のイオンシネマ シアタス調布で、2021年4月16日(金)から新たなプレアド(予告前の告知映像)が上映開始となります。そのプレアドは、『激走戦隊カーレンジャー』や『仮面ライダークウガ』を世に送り出したことで知られる髙寺成紀さんがプロデュースを担当、『仮面ライダー響鬼』のザンキ役や『仮面ライダーキバ』の次狼役などを務めた松田賢二さんが出演するという、特撮ファンにとっては気になる座組み。撮影当日には松田さんにインタビューする機会があり、本稿ではその模様をお届けします。プレアドにちなんだ「家族と映画」にまつわる思い出や、意外にもフィギュアコレクターだったという松田さんのホビー事情、さらには松田さんが師とあおぐ髙寺さんとの対談なども含めた内容でお送りします!
『コマンドー』や『ランボー』を観た帰りは肩で風を切って歩いた
――このたび撮影されたストーリーは「親子が映画を観に行き、そこで少年が父親の意外な一面を発見する」というものになっています。松田さんご自身は、ご家族と映画を観に行かれた思い出などありますか?
松田さん:あります。『レイズ・ザ・タイタニック』という映画で、沈没したタイタニック号をなんとか引き揚げようという内容でしたね。小1か小2ぐらいの頃だったと思います。兄貴と親父と観に行きました。ウチのオカンは映画観ない人だったので……。兄貴は僕と違って賢い人で、『二百三高地』とか、なんかああいう僕があまり観に行かないような作品ばかり観る人でした。背伸びして、兄貴を追っかけて梅田までついて行ったような気がします。
――当時の松田さんはどんな映画がお好きだったんでしょうか?
松田さん:僕が好きだったのは『ドラえもん のび太の恐竜』とかですね。
――松田さんも今回のプレアドのような感じで、お兄さんやお父さんと一緒に映画を観に行かれた日には、意外な一面を発見したり?
松田さん:意外な一面というのはなかったですけど、『コマンドー』とか『ランボー』とか、ジャッキー・チェンの映画を兄貴と観に行った後は、なんか肩で風を切って歩くような気分でしたね。
――娘さんとは映画を観に行かれますか?
松田さん:この間、『(鬼滅の刃)無限列車編』を観に行きましたよ。まぁ煉獄さんがカッコいい、カッコいいって。「ウマい!ウマい!」のシーンが特にお気に入りみたいで、喜んでました。そんな娘を見て、ハッピーな気分になりましたね。少し前だと、『アナ雪2』で僕が声を演じたキャラクターの人形を持って、何回も観に行ったりしました。パパ冥利につきるというか、そんな感じですね。
世界にひとつだけの「ザンキ」フィギュアが宝物
――娘さんが『鬼滅の刃』に夢中とのことですが、例えばクリスマスにはどんなものをねだられたんでしょうか?
松田さん:胡蝶しのぶのコスプレセットと、煉獄さんの抱き枕でしたね。本当に鬼滅一色です。あとはなんだっけ、うさぎのミニチュアで遊ぶアレ……。
――シルバニアファミリーですか?
松田さん:ああ、シルバニアです。結構日常的に買ってあげちゃってるので、クリスマスという区切りはあまりないですね。女の子は(つい甘やかしちゃうから)ダメですね~。
――お父さんといると、つい甘えたくなっちゃうのかもしれないですね。松田さんご自身は、何かそういう玩具やフィギュアの趣味はありませんか?
松田さん:何年か前に引っ越しをするまでは、フィギュアをいっぱい持ってたんですよ。『ターミネーター』や『スター・ウォーズ』や、『マトリックス』……主にSF映画のものですね。4段ぐらいのフィギュアケースを買って、そこにバーっとコレクションを置いて。ダース・ベイダーの後ろにストームトルーパーを並べたり、(『ターミネーター』シリーズの)T-1000、『パイレーツ・オブ・カリビアン』とかも結構集めてました。結局1個だけ残して、全部整理しちゃったんですけど。
――すごい!いっぱいコレクションされていたんですね。ちなみに、その残した1個というのは……?
松田さん:(『仮面ライダー響鬼』の)ザンキです。おもちゃ屋さんに塗ってもらって、オリジナルカラーみたいな感じにしたんですよ。そういうのやってくれるおもちゃ屋さんがあって。世界に1個だけのザンキです。昨日、髙寺さんに写真を送ったばかりなので良かったら使ってください(笑)。
髙寺さんは恥部をさらけ出せる数少ない存在
――今回の撮影では髙寺さんからオファーがあったかと思うのですが、どのような経緯だったんでしょうか。
松田さん:なんかね……(髙寺さんから電話がかかってきた時は)ちゃんと聞いてなくて(笑)。調布の映画館の、なんやらかんやらが~って説明されたんですけど、僕としては「師匠である髙寺さんから言われたら何でもやります」ってふたつ返事で引き受けて。こういう取材があるのも直前に知りましたね。
――何はともあれ受けるというところに、揺るぎない信頼関係を感じます。“師匠”という言葉が出ましたが、松田さんから見た髙寺さんはどんな人なんでしょうか?(ここでちょうど髙寺さんが取材部屋に入ってくる)
松田さん:さっき監督と撮影の合間に話してたんですけど、「髙寺さんって昔と比べてどうなんですか」って聞かれて。
髙寺さん:なにがなにが(笑)。
松田さん:今も昔もエッチな話してて、成長してないって答えました。
髙寺さん:成長っていうのはどういう(笑)。もっとパワーアップした方がいいってこと?
松田さん:いえいえ。僕は下ネタでいっぱい痛い目にあったから自分で制御する術を学んだけど、師匠は何も成長し……子供のまんまですごいなっていうことです。
髙寺さん:それはザンちゃん(松田さん)相手だから俺もエッチ系の話から入るわけよ。無駄を省いて、単刀直入に核心に入っていくっていう(笑)。
――個人的に髙寺さんには下ネタのイメージがなかったので、意外でした。
松田さん:『響鬼』時代は師匠という存在でしたけど、その……数少ない自分の恥部をさらけ出せる人っていう感じですかね、僕からしたら。時々電話で話すと、髙寺さんもプライベートなエピソードとか、そういうの話してくれる人で。
――役者さん同士でなく、番組プロデューサーと役者さんという間柄での師弟関係は珍しいですよね。松田さんはいつから髙寺さんを師匠と呼ぶようになったんでしょうか?
松田さん:(『仮面ライダー響鬼』で)師匠が降板になった時、キャストとのお別れ会があったんですけど、その席で「真剣に子ども番組を、正しく作ろうとしている」っていう姿勢を感じて。なんかそのへんからですね。師匠って言い出したの。
――そんな“弟子”である松田さんは、髙寺さんから見てどのような人ですか?
髙寺さん:「どういうところを見て(役者さんと)一緒にお仕事しようと思うんですか?」と聞かれることがあるんですけど、その時パッと頭に浮かぶのはザンちゃんのことで。『響鬼』のオーディションで、ドアを開けて部屋に入ってきた時の松田さんの空気感というか。『クウガ』の時のオダギリジョーもそうだったんですけど、自然体で、着飾らず、変に装わず、「ありのままの俺を見てくれ」っていう感じで気負いがなく……「嫌味がない」っていう言い方を良くするんですけど。そんな姿が印象的でした。
松田さん:歳もいってるからライダーは無理やろと。悪役以外ないと思っていたので。
髙寺さん:でもそういう欲のない感じがすんなりきたっていうか。逆に「俺が俺が!」の人と仕事すると、全部自分のところに引き寄せられちゃうので。ザンちゃんみたいに「役者は素材ですから。どんな色にも変わりますから」っていう姿勢の人とだと、こっちも役を預けやすいというか。役者さんは演技が上手いかどうかとは別に、存在感や人となりも大きな魅力のひとつだと思ってるので。その意味でザンちゃんには惹かれるし、信用できるなぁと。だから恋バナとか、下ネタって言い方してますけど、色んな人生経験も含めて話をしたんですよね(笑)。あの時っていくつだっけ?
松田さん:33~4ですね。
髙寺さん:特に30代の男性の役者さんって、大変なんですよね。それでも役者に対して夢を持っていたり、想いを持っている感じとか、そこに至る経緯とか……。元々はアメリカに行って、カウボーイになろうとしたっていうんだから。そんな日本人には初めて会ったので、「なんじゃこの人は!?」って。面白い人だなって思ったんですよね。松田賢二ってこういう人なんだな、と。
――依然として新型コロナの脅威が続きますが、最後に映画を愛するファンの皆さんへメッセージをお願いします。
松田さん:おっさんみたいなこと言うようですが、一時停止が押せる自宅の配信映画よりも――今はそれを観なきゃしょうがないですけど――やっぱり映画館で観る映画が一番パワーを感じられると思います。お客さんもわざわざ足を運んで観に来てくれる分、より楽しめるはずなので。自分も様々な映画に出られるよう、これからも頑張っていきたいです。今日撮った映像がどのような形になるかまだ分からないんですけど、「映画泥棒」みたいな感じで上映されるのを期待していますし、ぜひ多くの人に観に来てほしいなっていう思いです。映画を観るなら、ガチョラのプレアドも観られるシアタス調布で!(笑)
インタビューの後は、撮影現場を見学することもできました。終始和やかに質問に答えてくださった松田さんも、いざ撮影となると一転して役に没入。映画を観ながら涙を流すシーンでは、カメラが回っている時間以外は目を閉じ、集中している様子が見られました。
松田さんの息子役を演じた風見勇吾くんは、「映画のまち調布」応援キャラクターのガチョラとともに、風が吹きすさぶビルの屋上でのシーンも撮影。1月でまだ肌寒いなか、監督からの指示を受けつつ撮影に臨んでいました。お近くの方は、シアタス調布に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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