僕だけが楽しいものは作りたくない――池松壮亮・浜辺美波のキャスティングも発表された「シン・仮面ライダー対庵野秀明展 合同記者会見」完全レポート
2021年9月30日(木)、東京の国立新美術館にて「シン・仮面ライダー対庵野秀明展 合同記者会見」が開催されました。『シン・仮面ライダー』の製作が電撃発表された4月11日の「仮面ライダー生誕50周年企画発表会見」に続いて、本会見では本郷猛役に池松壮亮さん・緑川ルリ子役に浜辺美波さんがキャスティングされることが明らかに。本稿では、脚本・監督を務める庵野秀明さんも参席した会見の模様をレポートしていきます。
会見が始まると、AとBの2種類を用意したという『シン・仮面ライダー』プロモーション映像のうち、Aパターンを初公開。Aは50年前にTV放送された『仮面ライダー』第1話のOPを可能な限り再現した内容となっており、ライダーが新たなサイクロン号に乗ってバイクアクションを繰り広げる様子が確認できました。走行中の疾走感を表現するために背景が動く仕組み、庵野監督いわく“回転バック”も本映像のために新たに製作したといいます。
ここで、本郷猛/仮面ライダー役が池松さんであることが初発表。その直後に現れた池松さんはなんと松葉杖をついており、思わぬ姿に会場は異様な雰囲気に包まれました。
続いて、緑川ルリ子役の浜辺さんが登壇。カメラのフラッシュを一身に浴びながら、にこやかな笑みを浮かべました。
キャスト発表とともに、『シン・仮面ライダー』の本郷猛/仮面ライダーと緑川ルリ子のビジュアルも初公開されました。
続いて、庵野監督が登壇。3人がそろったところで、いよいよ会見が本格的にスタートします。
まず始めに、壇上に持ち込まれた新しいサイクロン号を浜辺さんと庵野監督がアンベール。先のプロモーション映像中に登場した本機ですが、現代風にアレンジされたシャープなカウルや、3×3で連なるマフラー部分の再構築など、実物を目の当たりにすることで、その特徴がありありと感じ取れました。
最初の挨拶で、池松さんは「いきなりこんな姿で登場してしまいましたが、一昨日アクション練習を詰めていたところ、靭帯を痛めてしまいまして。一週間は足を地面につくなと言われました。撮影に支障はないので、“改造手術”に少し失敗したと書いてもらえれば……」と、ジョークを交えながら状況を説明。役に決定した際の感想を問われると「驚きました。1年前に庵野さんが『シン・仮面ライダー』を準備していると聞き、とてもワクワクしたのを覚えています。軽々しく引き受けられるものではないなと思いつつ、これだけ素晴らしい挑戦ができることが嬉しいです」と応えました。
一方の浜辺さんは、小さい頃から仮面ライダーが大好きなんだとか。「庵野さんが原点を描かれると聞き、どうなるんだろうと楽しみです。今でも現場に入る時は緊張しています」と話しました。
それぞれのキャスティングの理由について、庵野監督は「池松くんはオーディションに来てくれて、その感触がとても良かった。やはり自分の中では藤岡弘、さんが演じた本郷猛の存在がとても強いので、消化できない。自分ならではの本郷を作らざるを得ない時に、池松くんなら違うものにできるんじゃないかと思いました」とコメント。浜辺さんについては、東宝作品に出演したヒロインたちのカレンダーがあることに触れ、その8月に写っていた浜辺さんの姿を見て決めたとのこと。「決めたあとに(ドラマ版で浜辺さん主演の)『賭ケグルイ』を見て、間違いなかったと思いました」と満足気に明かしました。
本作のオーディションを行っていた時期は、池松さんは海外にいたんだとか。「ぜひ参加したいという意志は伝えていたんですが、(募集期間に)ほぼ間に合いそうになかったので、Zoomで初めて庵野監督とお話しました」と、リモートでのオーディションだったことを回想。
浜辺さんは「役に決まった経緯をまったく聞いていなかったので、初めて知りました。まさかカレンダーだったとは……。思わぬつながりですね。良かった、8月で!」と笑顔。庵野監督と初めて会った時の感想を問われると「色んなドキュメンタリー番組を見ましたが、想像以上に柔らかい印象でした」とイメージとギャップがあったことを告白しました。
それを受けた庵野監督は「ドキュメンタリーはそういうところ、全部切られているんですよ」と返して笑いを誘います。浜辺さんは続けて「そうだと思いました!質問をすると丁寧に・的確に答えてくれるので、役を演じる上で自分で考える余白がありながらも、しっかりとヒントをくれます」と、良好な意思疎通ができていることに言及。
話題が新サイクロン号のデザインにおよぶと、本作には出渕裕さん・山下いくとさん・前田真宏さんら3名のデザイナーが参加していることを説明する庵野監督。新サイクロン号のデザインは、そのほとんどが山下さんによるものだといいます。「50年前のイメージから離れすぎず、現代風にならないかなと思っていたところ、山下くんがやってくれました」と語りました。本作における仮面ライダーや怪人のデザインは出渕さんがメインで手がけていることにも触れ、「特にライダーは二転三転したんですが、最後は原点に戻るんだなと。展示会(庵野秀明展)ではライダーのスタチューがあります。ベルトはアクション用に近いものですけど……」と、10月1日(金)から開催となる庵野秀明展の見どころについてもアピールしました。
MCによる進行はここまでとなり、以降は会場に集った記者による質疑応答へ。
――(庵野監督へ)プロモーション映像Aは当時のOPを再現したとのことですが、そのほかにこだわったところは?
庵野監督:回転バックを使ってライダーの手元や足元をアップで撮っているところは、実際に池松くんが中に入っています。役者本人がスーツに入っているところも含めて踏襲しつつ、新しいものにならないかなと。Bの方は、お金も時間もないんですけど、そのなかでも新しいことにチャレンジしました。ノスタルジーは捨てたくないんですよ。僕たちみたいな、ライダーが好きで当時毎週見ていた人向けに作りたいし、その時まだ生まれていなかった人にも面白く思ってもらえるような、融合したものを作れないか模索中です。
――(池松さんと浜辺さんへ)庵野作品との出会いや思い出は?
池松さん:最初はアニメではなく『ラブ&ポップ』という作品で、夢中になって見ました。とても好きです。あと、やっぱり外せないのは『エヴァ』。『シン・エヴァンゲリオン』にあわせて見返しましたけど、ひっくり返りますね。この国の宝のように思っています。
浜辺さん:出会いなら『ナディア』です。当時は幼かったので庵野監督のことは意識していませんでしたが、ナディアちゃんがとてもかわいくて。でもどこかセクシーで、幼いながらに何度も惹かれて見ました。
――(池松さんと浜辺さんへ)脚本を読んだ時の感想は?
池松さん:ネタバレできないので難しいですね……。とても興奮しました。温故知新といいますか。古いものをなぜ新しくするのか。世界にはびこる問題、社会の問題、とてもタイムリーな内容になると思います。何より、カッコいいです。楽しみにしてください。
浜辺さん:内容が第1幕から第4幕まで分かれていて、そういう内容は初めてだったので驚きました。仮面ライダーについて疑問に思っていたことや、なりゆきが全部描かれていたので、なるほどと思いました。
――(池松さんと浜辺さんへ)そもそも、仮面ライダーにはどんな印象を持っていましたか?
池松さん:僕は1990年生まれなので、平成仮面ライダーがタイムリーでした。ヒーローも好きだったので、10歳からは夢中になって見ましたね。なので平成ライダーの方がイメージは強いんですけど、「ライダーって何なんだ」と向き合うことで考えも変わりました。本作ではより原点の、人間的なものに戻せたらなと思います。
浜辺さん:7歳下の弟がライダーで育ちました。今も映画を毎年見に行っています。戦う理由を見つけて、進んでいく姿に勇気をもらっています。
――(庵野監督へ)監督の考える仮面ライダーの魅力は?
庵野監督:いっぱいあるけど、怖さとカッコ良さですよね。2話に出てきた蝙蝠男とはマンションの屋上で戦うんですけど、当時はテレビの受信状態も良くないし、真っ暗なんですよ。ライダーみたいな人と戦闘員が戦っていて、何をやっているか分からないけどカッコ良いのが魅力。2号もV3も見ましたし、アマゾンの時は年齢がちょっと上がっちゃったけど、ゼクロスもリアルタイムで見ました。平成ならクウガはちょっと見損ねたけど、アギトは途中から見ました。平成で最初にハマったのはファイズ。素晴らしい。カッコ良い。カブトも良かったですね。今は忙しくてリアルタイムでは見れていないんですけど、東映特撮ファンクラブに入って見るようにしています。あとは効果音が良いのも……このへんにしておきましょうか。話せと言われたら1時間以上、1日中もいけますから。
――(池松さんと浜辺さんへ)庵野秀明展の展示を見て回ったと聞きました。感想は?
池松さん:会見前の、時間が足りない状態でバタバタと回ってしまいました。個人的に気になっていたものから、ものすごい数の展示です。天才の頭の中を見ているような気分になりました。
浜辺さん:(過去作品の)セットやミニチュアが残っていることにびっくりしました。原画もたくさんあって、どうやったらこんな表現を思いつくのだろうと。
庵野監督:ありがとうございます。本当に一部なんですが、残っているものをなんとかかき集めました。まだまだ展示できてないものがあるので、初日が一番展示数が少ないと思います。(開催期間の)後半に見に行くと、内容が変わっている可能性がありますね。
――(3名へ)世界的にも注目を集める『シン・仮面ライダー』ですが、本作にかける意気込みは?
池松さん:これだけグローバルな時代ですから、日本が誇る仮面ライダーをどう作ろうか、日々考えています。個人的には、引き継いでいくべき美意識・美徳・夢をどう役に反映できるかと。
浜辺さん:私はまだ撮影に入っていないんですが、精一杯果たしていこうと思っています。色んなものを取り込んで役作りできたら。
庵野監督:あんまり世界に向けては考えていないです。東映さん、すみません。まずはライダーが好きな人に向けて、その次にライダーを知らない人に向けて、話題になったら興味がなかった人も……と。そのうえで、世界中の人たちが面白いと感じてもらえるものを目指したいです。まずは近場から。世界にウケるかどうかは、東映さんの力技次第かなと。よろしくお願いします。
――(池松さんと浜辺さんへ)会見冒頭に劇中衣装のスチール写真も公開されました。初めてスーツや衣装に袖を通した時の感想は?
池松さん:興奮しました。まさか自分がライダーになるとは、と。マスクなので感染症対策もバッチリです(笑)。
浜辺さん:今朝も衣装合わせをしましたが、本番までにまだ変わると思います。ジャケットを着て、「ルリ子はこういうヒロインなんだ」という思いがわいてきました。脚本だけでは分からなかったところまで、イメージが掴めたと思います。
最後の挨拶では、会見が行われた9月30日の朝日新聞朝刊に掲載された本作の広告内容について「これを見せられた時、東映さんに怒っちゃったんです」と庵野監督。「僕が見たいものじゃなくて、観客の皆さんが見て楽しいものを作りたい。僕の夢がうんぬんというより、当時ライダーを好きで見ていた50代・60代の人たちに良いと思っていただけるような……2号が好きなちょっと下の世代や、平成・令和から見始めた人にも、可能な限り楽しんでもらいたい。僕だけが楽しいものは作りたくない。みんながやって良かったねと思えるもの、その上で自分が面白いと思えるもの。公開まで、面白いものに仕上げたいと思っています」と熱弁。熱い胸中を吐露したメッセージで会見を締めくくりました。3名が降壇した後は、プロモーション映像Bをスクリーンに投影。各映像はYou Tubeの東映映画チャンネルにて視聴することができます。
『シン・仮面ライダー』プロモーション映像 A
『シン・仮面ライダー』プロモーション映像 B
DATA
シン・仮面ライダー
- 脚本・監督:庵野秀明
- 2023年3月公開
(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
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