ボックスアートイラストレーター 加藤単駆郎氏の作品展が開催中!普段見ることのできないサイズで精緻なイラストを堪能できるチャンス!!加藤氏からのコメントも!
プラモデルのボックスアートを数多く手がけているイラストレーター 加藤単駆郎氏の作品展が2022年6月25日(土)から7月3日(日)までの期間、東京都江東区の「Book&Cafe ドレッドノート」にて開催中です。
本稿では作品展の模様をレポート! 作品展初日を迎えた加藤単駆郎氏へのミニインタビューと共にお届けします!!
精緻に描かれたボックスアートを大判サイズで見ることができるチャンス!
Book&Cafe ドレッドノートは、ハンドドリップで淹れられた本格的なコーヒーと自家製スイーツ・ホットサンドなどが楽しめるおしゃれなカフェ。また、店名にあるとおり書店でもあり、店内には店主自らがセレクトした(内容も扱っている題材も)“固い本”の新刊、古書などがずらりと並び、閲覧・購入することができます。
和書洋書問わず世界中のミリタリーやSFなどの書籍がぎっしりと展示されている店内は、本好き、ミリタリー好きには天国のような空間。その中でひときわ目を惹くのが、黒く額装された美しくも迫力あるイラスト! 加藤氏のボックスアート作品が展示されています。
今回の作品展で展示されているのは、「航空母艦 赤城 真珠湾攻撃」、「駆逐艦 夕雲・風雲・朝雲 キスカ島撤退作戦」、「川崎 H8K2 二式大型飛行艇12型」、「海上自衛隊 護衛艦 あたご」、「ZERO mashup(RED/BLUE/YELLOW)」(3種)、「三菱A6M5 零式艦上戦闘機 艦上戦闘機五二型」、「三菱A6M5a 零式艦上戦闘機五二型甲 隼鷹搭載機」、「愛知E13A1 零式水上偵察機11型 矢矧搭載機」、「川西E7K1 九四式水上偵察機 神威搭載機」の9作品(計11点)。
「あぁ、あのキットか!」と、プラモデルをすぐに思い浮かべる事ができる人も多いことでしょう。あのプラモデルのボックスアートが大きなサイズで鑑賞できるというのは、なかなかできない貴重な体験です。
展示作品は加藤氏がフレーマー(※)の方と1点ずつ打ち合わせをして額装した特別なもので、ロットナンバーは1/50になるとのこと。本作品のいくつかは、ドレッドノートのオンラインストアにて販売が行われます。
※絵画などを展示する際の額装を行う専門職のこと
――穴が空くほど見て欲しい
作品展初日を迎えた加藤氏に、ボックスアートならではのこだわり、そして作品展の見どころなどを伺いました。
――プラモデルの箱絵(ボックスアート)を違うフォーマットで見ることができるというのは、ファンにとって貴重な機会だと思います。今の心境は?
加藤単駆郎氏(以下、加藤):普段は水彩とデジタルのミックスで描いているのですが、納品してプラモデルとして販売されたとき、結構(絵のサイズが)小さくなってしまうんですね。ですが、元絵はかなり描き込んでいるので大きなサイズで見てもらいたいんです。そういう機会を得られたというのは、とてもうれしいですね。
今回の作品展で一番大きなサイズは「護衛艦 あたご」のA0サイズなんですが、このサイズでも耐えられる描き込みを全ての作品でしているんです。この大きさになって初めて「あ、ここに人がいる!」みたいな、新しい発見をしてもらえる、そんなギミックを描いている時にしのばせているので、この機会にぜひじっくりと見てほしいですね。
――ボックスアートはイマジネーションを想起させるものであり模型制作時のお手本のような存在です。通常のイラストとはまた違った難しさのようなものがあると思うのですが、描く際に気をつけている、注力をしている点はどういう点でしょうか。
加藤:やはり「キットを説明する存在」であることと、キャッチーな「あ、手に取りたい」ってものであること。この2つは常に意識しています。
あとは、とにかく形を間違ってはいけないというのがありますので、そこは資料を元にしっかり描くようにしています。もちろん、ハセガワの様々な部署のみなさんにもチェックしていただいて、色や形状といった設定面はもちろん、箱絵にしたときの見栄えとかも意見をいただいて、反映するようにしています。
――第二次世界大戦から現代にかけての艦船や航空機をはじめ、重機やSF作品など幅広いジャンルを描かれていますが、特に思い入れのある題材はありますか。
加藤:僕はアニメーションの作画背景からスタートしたのですが、アニメの背景って描ける・描けないって考えるヒマもないくらいのスピードで描かなければいけないんですよ。街並みと車、港と浮かんでいるボートを描いてって言われたら、とにかくすぐに描く……だから描けないものがあっちゃダメなんです(笑)。良くも悪くも題材を限定しないで仕事をしていたので、ジャンルや題材には分け隔てはないですね。ただ、題材によって描くタッチは少し変えています。ここは実際に箱絵で見比べて欲しいですね。
――これまでに描かれてきたボックスアートで思い出深い作品はありますか。
加藤:一枚一枚、それなりに思い入れがあるのですが、今回の作品でいうと「キスカ島撤退作戦」の絵ですね。イメージを脹らませるために昔の映画(※)を観たのですが、描かれていたドラマを心の中で思い浮かべながら作画しました。
※『太平洋奇跡の作戦 キスカ』(1965年公開) 監督:丸山誠治、特技監督:円谷英二/主演:三船敏郎(大村少将)
――史実から逸脱せずにイメージを脹らませるというのは、とても難しそうです。
加藤:時間や場所、天候なども分かっていますから、描き上がったものが史実と違っていたら怖いので、その辺は史実に忠実に描いてます。「航空母艦 赤城 真珠湾攻撃」のイラストでは、艦の向かっている方向と時間が分かっているので、光りの方向や光線の高さなど、きちんと史実にあわせているんですよ。他の作品も同様にきちんと監修を受けていますが、題材によってはハセガワさんと相談して少し幅を持たせてもらっています。「キスカ島撤退作戦」は幅を持たせてもらったほうの作品ですね。
――今回の展示作品は額装もすごく素敵です。販売も行われるそうですね。
加藤:この額装は全て僕が選んだのですが、フレーム(額縁)もマット(※)も黒くしました。特にマットは断面も黒なんですよ。紙の断面って普通は白くなるんですが、それだと見た時に絵の邪魔になるので、断面も黒いマットにしました。
僕は絵を描くときに余計な光を反射しないよう絵のフチを全て黒くして描いているのですが、今回の額装は(僕が)画面で見ているものがそのまま全て現実になったという感じです。
※作品と額縁の間の余白を埋める窓用の用紙
――最後にファンのみなさんへのコメントをお願いします。
加藤:会場に来てくださる方には本当に感謝しかありません。ぜひ、穴が空くほど見て欲しい――細かいところ、箱絵では分からなかった、最初に僕が伝えたかった、色々なギミックを仕掛けているので、間近でじっくり見てぜひ気づいて欲しいですね。
作品販売のほか、最終日にはトークショー&新作受注会も開催予定
今回展示されている作品は、加藤氏監修の「エディション no,1」となる限定額装済作品。会期中はドレッドノートのウェブストアと会場が連動し、各作品“no,1”の販売が行われます。また、no,1以降は会期終了後に各作品エディション数/50枚・無額装での販売が予定されています。
さらに作品展の最終日となる2022年7月3日(日)には、加藤単駆郎氏によるトークショー&新作受注会も開催予定。作品を描くテクニックや秘話がたっぷり語られるとともに、新作のお披露目と受注会が行われます。詳しくはドレッドノートのウェブストアをチェックしてくださいね。
DATA
加藤単駆郎作品展
- 開催期間:2022年6月25日(土)~7月3日(日)18時 ※6月28日(火)は定休日です
- 開催場所:Books&cafe ドレッドノート(東京都江東区平野2-3-21)
- 入場料:無料 ※ワンドリンクオーダー制
DATA
加藤単駆郎トークショー&新作受注会
- 開催日時:2022年7月3日(日)10時スタート ※11時30分頃終了予定
- 開催場所:Books&cafe ドレッドノート(東京都江東区平野2-3-21)
- 入場料:3,000円(税込) ※ワンドリンク(コーヒー)付き
加藤単駆郎氏 プロフィール
1972年秋田市生まれ。日本大学芸術学部油絵学科卒業後、アニメーション背景制作会社に約20年勤務。在職の傍ら模型メーカーへのイラストの持ち込みをはじめ、2007年頃からパッケージボックスアート(箱絵)の依頼が増え始める。
2014年退社。イラストレーションアーティストとしてフリーランスで活動を開始。以後、模型メーカー ハセガワ専属でプラモデルのボックスアートを描く仕事を機軸としている。また、出版社への艦船のイラスト、軍作戦模式図、表紙等も寄稿する他、自らが主宰するデザインブランド“Giga-chemical Organic Bloodshed”名義で企業やアパレルのロゴデザイン等も手がける。
画集
- 「BOX ARTISTRY」2016年 プレスト
- 「Captured Moments」2017年 イカロス出版
関連情報