『ダイス・オブ・ザ・デッド』と『片道勇者TRPG』!新規2作品が発表されたドラゴンブック春の大TRPG祭!
2016年3月19日(土)に飯田橋はKADOKAWA富士見ビルで行われた、ドラゴンブック編集部主催による「ドラゴンブック春の大TRPG祭」。コンベンションと新作発表、トークショーや著者によるサイン会など、さまざまなイベントが同時に行われた、一大祭典となりました。
このイベントにあわせて発表された、新タイトル2作をここでは紹介します!
ゾンビRPG『ダイス・オブ・ザ・デッド』!
DATA
ゾンビサバイバルRPG ダイス・オブ・ザ・デッド
- B5版ルールブック
- 2016年4月20日発売予定
- 3200円(予価/税抜)
- 監修:安田均 著:大井雄紀/グループSNE
- カバーイラスト:藤井英俊
- プレイ時間目安:1シナリオ1時間~
架空の東京を舞台とし、ゾンビの発生によるパニックを題材にした新作TRPG。東京23区に蔓延した謎の“ZOMB細胞”。これに感染したものはゾンビとなって知性を失い、人間以上の膂力で人々に襲いかかってきます。主人公たちはこのZOMB細胞に侵されながらも理性を保っている“ハーフゾンビ”!
プレイヤーはこのハーフゾンビとして、ZOMB細胞の力と知恵で、封鎖された東京を生き延びるのが目的です。
本作は数多あるゾンビムービーやゲームの空気感をどん欲に取り込んだハイブリッド。ありとあらゆるゾンビモノのお約束が、TRPGにマッチングするかたちで詰め込まれています。
サプライズからの即死、殲滅よりも撤退のタイミングが重要な戦闘。敵も歩くゾンビに走るゾンビ、火をまとったものや倒すと爆発するもの。使用回数と制限の厳しいアイテム。“ゾンビに擬態してゾンビを騙す”“武器を求めてショッピングモールへ”といったシチュエーションまでも再現可能。このフレーバーはやみつきになります。
ゲーム部分で象徴的なのは“ダイスドラフト”という独自性の強いシステムです。これは振ったダイスをプレイヤーとGMでシェアし、お互いの手の内を探りながら判定を行っていくというシステム。ダイスの数字が直接、達成値に関わるわけではなく、取る行動の幅を決定します。
シェアする段階で、プレイヤーの行動やGMのイベント発生に必要なダイスなどの情報は開示されているため、プレイヤー側は最適な手順のためのダイスを確保し、GMに有利なダイスを渡さない……といった駆け引きが発生する、新鮮なシステムです。
また、キャラクターの感染度が進行すると、ほかのキャラクターに危害を加える可能性も。これを未然に防ぐために、プレイヤー間で投票を行い、危険なキャラクターを追放する、“人狼”的な面白さも盛り込まれています。
シナリオはクラフトルールも豊富に掲載、さらにGMレスでのルールも用意されており、協力型ボードゲームとTRPGの良いところを併せ持つ大変な意欲作に仕上がっています。本作のメインデザイナーである大井雄紀氏は、じつは業界歴10年のベテラン。そして監修には『ロードス島戦記』『ソード・ワールドRPG』を産み出したTRPG界の重鎮、安田均氏がその腰を据えます。
大井氏は「本作がメインでゲームデザインを担当する初のTRPG作品となるので、慎重に慎重を期して製作しました。開発当初は(同じくグループSNEに所属する)秋口ぎぐる先生と『女子大生と合コンできるゲームを作ろう!』というのが目的でしたが、短いプレイ時間でもしっかり遊べるゲームに仕上がっています。今後のサプリメントが出れば、東京の謎が明かされるので、ぜひ皆さんの応援をお待ちしています!」と軽口を交えながら、次回作への含みを持たせました。
一方で、鋭意制作中となっているのがボードゲーム版『ダイス・オブ・ザ・デッド』。キャラクターの一人称という、ミクロな視点を楽しむTRPGに対し、東京全体のボードを俯瞰して、よりマクロな状況を楽しむ媒体となっています。こちらも2016年5月下旬発売を目指し、順調に進行中です。
背景マップやアイテムカードなど、充実した美しいコンポーネントはTRPGにも流用可能な優れもの。箱の裏もダイスドラフトの受け皿として使えます。ゲームシステムはRPGと異なりますが、相互に補完する内容となるとのこと。世界に関わる大きな真実の一つがボードゲームで明らかになるとのことです。1シナリオの想定プレイ時間は1時間前後。5つの連続シナリオで東京を救えるか? こちらもかなり期待できそうです。
DATA
ダイス・オブ・ザ・デッド
- ボードゲーム
- 2016年5月末日発売予定
- 価格未定
- 著:安田均/大井雄紀/グループSNE
- プレイ時間目安:1シナリオ1時間前後
- 傑作ローグライクRPGがテーブルトーク化! 『片道勇者TRPG』!
さて、次に発表となったのは、冒険企画局の新作RPG。PCで好評を博した強制横スクロールローグライクRPG、『片道勇者』のTRPG化です。
DATA
片道勇者TRPG
- B6版ルールブック
- 2016年6月20日発売予定
- 1800円(予価/税抜)
- 原作・監修:SmokingWOLF 著:斎藤高吉/冒険企画局
- カバーイラスト:モタ
- プレイ時間目安:1シナリオ1時間~
原作はランダム性が非常に強く、ゲームオーバーを繰り返してクリアに辿り着く、デザイナーの斎藤高吉氏いわく、「死体の山の上にある栄光を掴む」タイプのゲーム。その多数の死がシステム上重要なことはもちろん、ストーリーにも高いレベルで組み込まれているのが特徴です。
この『片道勇者』を原作とした、気軽に遊べるTRPGとなるのが『片道勇者TRPG』。10分でプレイスタートが可能で、ルールに記載されたクエストとランダムイベントで自動的にドラマが発生するという自動的なつくり。オンラインセッションで、さまざまなスキマの時間に遊べます。
シナリオは、原作と同じく理不尽な死、ゲームオーバーが容赦なく襲いかかるタイプのそれ。でありながらも、短いプレイ時間とドラマチックなイベントで、ついリトライしたくなる中毒性が魅力とのこと。テストプレイでは原作同様、「畜生、もう一回だ!」というプレイヤーが続出したとか。
哀しく切ないイベントをこなすと、キャラクターが即物的に成長するのも、本作の大きなポイントです。プレイヤー視点では、「力が欲しいから悲劇をよこせ!」という、少し台なしながらも楽しいスタイルでゲームが進行します。また、データ面でも原作をガッチリ再現。原作のクラスを全て網羅し、人気NPCのデータも多数が掲載されています。
そしてそして、本作の驚きの展開はオンラインから。世界観を使った新キャンペーンシナリオが発売後には複数公開予定となっており、長編キャンペーンは読みものとしても楽しめそうです。
またルールブック付属のリプレイには、原作者SmokingWOLF氏と、冒険企画局の桜葉星菜。さん、そしてニコニコ動画で精力的にリプレイを発表しているブリッツPを迎えての、驚くべき企画が発表に。
さらに、原作者SmokingWOLF氏によるリプレイも小説投稿サイト「カクヨム」で連載予定。加えて、何とブリッツPによる公式リプレイ動画も後日発表予定です。公式リプレイ動画は、TRPGとしてはかなり珍しいプロジェクト。ぜひ、ブリッツPの作風を活かした楽しい動画を期待したいところです!
『ダイス・オブ・ザ・デッド』体験会
さて、ここからは4月20日発売となる新作TRPG『ダイス・オブ・ザ・デッド』のメディア向け体験会。ひと足早く、テストプレイに参加させていただきました。その模様をお届けします!
原作者の大井氏みずからマスターを務めていただいてのテストプレイ。まずはゲームの世界観に関してレクチャーを受けます。さまざまなゾンビものの世界観が内包されており、世界観の振れ幅もシリアスから軽いタッチのものまで幅広くフォローできる印象です。
キャラクターメイク
「死んでしまったら次を用意してください」と恐ろしい軽口を聞かされながら始まったキャラクターメイク。キャラクターの能力値的な万能感の高いゲームではないですが、プレイングで大きく難易度やできることを左右できる手触りです。能力値が足りなくて、初期装備のアイテムが使えない……なんてハプニングもありましたが、アイテムはほかのプレイヤーに渡す(正確には、捨てたアイテムを拾ってもらう)ことも可能で、パーティー全体を見据えたプレイングが重要そう。
スリリングな”ダイスドラフト”!
ダイスドラフトのやりとりは「ひたすら楽しい!」。ダイスはプレイヤーにとっては攻撃手段であり、有利なイベントの発生手段であり、そしてGMの思惑を妨害する手段でもあります。
一方でGMにとってはイベントの発生はもちろん、プレイヤーのアクションをピンポイントで封じるためにも重要です。プレイヤー全員とGMを含めた場の情報を整理しながら、数字をみんなで操作する面白さは、協力型ボードゲームのそれ。これはぜひ体験してほしいシステムです。大量のダイスをみんなで振るのも盛り上がりますね!
逃走が鍵を握る戦闘フェイズ
戦闘では、プレイヤーの脚力を敵戦力が上回ることで確実な“撤退”が可能になります。テストプレイのパーティーは戦力が充実していたので、撤退せずに戦闘を進めることもしばしばでしたが、それでも「次のターンでゾンビを2体倒せば、アイテムを拾って即撤退だな……」と考えながらの取り回しは新鮮です。逃走を“戦略的撤退”というのは定番のジョークですが、本作の戦闘はまさにこの“戦略的撤退”。シーンにあるアイテムを余さず回収し、最低限の被害で撤退しましょう。ゾンビがわらわらと後ろから現れてくる焦燥感もなかなかオツです。
感染の進行とフラッシュバック
感染度はほかのプレイヤーに開示されない、クローズドな情報のため「誰がゾンビ化するのか?」は、容易には知れません。ただし、感染度が進むとプレイヤーの能力値が上昇するので、戦闘中に能力値以上の活躍をしたプレイヤーは怪しまれてしまいます。今回のプレイでは誰も追放されませんでしたが、細かな変化に気を配るのもポイントです。
「リソース管理が大事」というのが、『ダイス・オブ・ザ・デッド』のシステム面での印象であり、楽しさの肝でした。すぐに壊れる武器や防具に始まり、総数の限られたドラフトによるダイス、徹底的に管理すべき感染度、そして究極的には“追放”というかたちでパーティのキャラクターすらリソースとして管理していかなければなりません。
そのひりひりしたゲーム感覚でドラマが生まれる一方で、ゾンビものを多く盛り込んだフレーバーはプレイヤーにイメージの共有を容易にし、興奮やときにメタな笑いまでも提供してくれます。システムを把握すれば短時間でサクッと終わるシナリオクラフトも相まって、ボードゲームやTCGのような感覚で遊んでほしい一本でした。
また、今回は紹介できませんが口絵部分に挿入されるコミックは本格的。モンスターイラストなどビジュアル面での充実もかなり嬉しい、『ダイス・オブ・ザ・デッド』なのでした。
ドラゴンブック編集部主導で行われた春の大TRPG祭。コンベンション会場も大盛況で、こういった場が華やかに用意されていること自体、TRPGというエンターテインメントがリュウセイしていることの証左でしょう。展開中のほかのシリーズとあわせて、今回発表になった2作品も、ぜひあなたの本棚のルールブックコーナーに納めてみてはいかがでしょうか。
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