プラモデル人口の拡大を目指す静岡市が打つ次の一手とは!?「模型の世界首都・静岡」の取り組みと展望が語られたプレゼンテーションミーティングをレポート!
2024年11月、「模型の世界首都」を謳う静岡市によるメディア向けプレゼンテーションが東京・港区の特設会場にて行われました。今回のプレゼンテーションは、プラモデルを軸に“ものづくり”の発展、ひいては地域振興・地方創生へつなげていこうという静岡市の取り組みを発表するというもの。
あくまでもメディア向けのプレゼンテーションではありましたが、一プラモデルファンにも大変興味深い内容だったので、許可をいただきレポートという形でお届けします。
日本唯一の役職、“プラモデル振興係”を設けた静岡市
プレゼンテーションは、静岡市経済局商工部産業振興課プラモデル振興係 係長 石川直哉氏により行われました。石川氏は「プラモデル振興係は静岡市ならではの係。このような係は他にはありません」と挨拶。プラモデルに対して静岡市の本気が感じられます。
石川氏からは、まず静岡市とプラモデルの現状と、産業の勃興について説明が行われました。
現在、静岡市はプラモデルの出荷額が日本第1位で、シェアは82%を占めているとのこと。プラモデルの製造出荷額は全国で335億1,700万円に対し、静岡県は289億8,300万円、そして静岡市は277億8,200万円で、金額ベースではあるがプラモデル10個中8個は静岡市のメーカーのものであると説明。
ではなぜ、そんなにも静岡市にプラモデルメーカーが集まっているのかというと、豊富な森林資源に恵まれた静岡市は戦前から材木加工業が盛んな地域で、その材木を生かした伝統工芸が勃興。数世代にわたる歴史的な建築物も造営され、その作業に従事した職人たちが定住し発展を遂げたそうです。
そして、静岡初の民間パイロット・青嶋次郎氏(編補:現在の青島文化教材社の前身となる青島飛行機研究所の創設者)が木製模型飛行機の製造と販売を開始。国策による模型飛行機の推進は静岡での木製模型の原点となります。しかし、戦後、外国産プラモデルの輸入が開始されると木製模型は苦戦を強いられ、メーカーは木製から分野のことなるプラスチックモデルへと転換しはじめます。激動の時代を情熱と知識、そして努力のすべてをかけて乗り切った技術者たちの想いが、現在のプラモデルメーカーの源流となったと、石川氏は熱く語りました。
そして、文字通り「模型の世界首都・静岡」になった現在、市としてどのような取り組みを行っているのかのプレゼンテーションへと続きます。
電撃ホビーウェブでも特集を組み速報レポートを掲載している「静岡ホビーショー」をはじめ、「モデラーズクラブ合同作品展」や「RCカーフェスティバル with ホビーのまち静岡」、「クリスマスフェスタ」などなど、静岡市では数多くのホビーイベントが行われ、どのイベントも大変な盛況ぶりとのこと。近年では海外からの観光客も増え、お目当てのイベントに合わせて来日する熱心なファンも多いとのことです。
そして、新たな取り組みとして、「第1回 全国プラモデル選手権大会 次世代模型フェスティバル in ホビーのまち静岡」を企画。12月7日(土)、12月8日(日)の2日間、ツインメッセ静岡(北館)で開催するとのこと。このイベントは、高校生を対象とした模型制作作品展及びコンテストで「クリスマスフェスタ2024」と同時開催となります。
新たなイベントを企画した趣旨について石川氏は、「小学生の頃にプラモデル作りをしていた子どもたちが、中学生、高校生と成長するにつれて“ものづくり”から離れていってしまう現状がある。このような大会があれば、再びものづくりに情熱をかけてもらえるのではないか」と説明。市として、重要な役割を持つイベントなのでぜひ成功させたいと意気込みを語りました。
「静岡市プラモデル化計画」3つの柱
では、そもそもなぜ静岡市はそれほどまでにプラモデル振興に力を入れているのでしょうか。その点について石川氏は、静岡市の財産である「プラモデル」を活用し、ものづくりの楽しさ、素晴らしさを伝え、それが地域の賑わいや愛着となり“まちの魅力”となる、ものづくりを中心とした地方創生を実現するためと説明。その一環として、2020年2月より「静岡市プラモデル化計画」プロジェクトが実施されています。
環境づくり、人財づくり、コンテンツづくり、の3つを柱とする「静岡市プラモデル化計画」では、プラモデルが市民生活に溶け込んだ街を目指し活動が行われています。
環境づくりでは、街中に「プラモニュメント」と呼ばれる模型を想起させるモニュメントを設置。人財づくりでは、学校と連携したプラモデルを活用した授業(静岡型学校教育プログラム)や、市と一緒にプラモデルをPRしてくれる人財育成プログラムを実施。そしてコンテンツづくりでは、プラモデル制作を体感できる機会を増やすべく、模型コンテストの開催や静岡ホビーショーでの中高生招待日の設定など、その取り組みは多岐にわたるとのこと。
「すべての取り組みは市だけでは何もできず、なにより協力してくれるメーカー各社があってのこと。最終的にはプラモデルに携わる人を増やしてものづくりに親しんでもらうこと、そして仕事にしてもらうことが目的です。経済白書を見ると、いまの日本はものづくりに携わる人の数がどんどん減ってしまっている。ものづくりは日本の屋台骨、日本のものづくり産業を支えていきたい」と、石川氏は今後の抱負を語りました。
官民が一体となって取り組む「静岡市プラモデル化計画」は単なる地域振興策ではなく、今後の日本を担う次世代に“ものづくり”を伝え発展させてゆくという、壮大なプロジェクトでした。プラモデル人口の拡大を目指し、精力的に活動する静岡市とメーカー各社の今後の動きに注目です。
クリスマスフェスタ2024 開催概要
- 開催日時:2024年12月7日(土)10時〜17時、12月8日(日)10時〜16時
- 会場:ツインメッセ静岡 北館・南館(静岡県静岡市駿河区曲金3-1-10)
- 入場料:無料
第1回 全国プラモデル選手権大会 次世代模型フェスティバル in ホビーのまち静岡 開催概要
- 主催:全国プラモデル選手権大会実行委員会
- 会期:2024年12月7日(土)10時~17時、12月8日(日)10時〜14時(予定)
- 会場:ツインメッセ静岡 北館(静岡県静岡市駿河区曲金3-1-10)
※クリスマスフェスタ2024と同時開催 - 入場料:無料
プラモデルファンの“開拓”と“回帰”のための重要拠点——TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO
プレゼンテーションの会場は、東京・港区のTAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYOがあるビルで行われました。当日はプレゼンテーションだけでなく施設の見学会も行われ、タミヤの最新アイテム、そしてタミヤの取り組みを間近で見ることができました。
5月24日(土)にグランドオープンしたタミヤ直営のフラッグシップ拠点「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」。外からガラス越しに中が見える開放的な店内、体験スペースやカフェの併設など、単なる販売店ではない“ものづくり”を体感できる施設として誕生しました。
売場には最新アイテム、人気のアイテムがずらりと勢ぞろいし、タミヤファン・プラモデルファンにはたまらない空間となっています。
今年はフルカウルミニ四駆生誕30周年の記念イヤーということで、店内にはフルカウルミニ四駆に関連した展示も。
施設内にはプラモデルの組み立て教室などを行うことができる工作スペースや、購入したミニ四駆を走らせることができる専用サーキットもあり、様々なイベントが開催されています。
また、タミヤが注力する企画のひとつであるロボティクスが学べる「タミヤロボットスクール」といった学習プログラムも展開されているとのこと。このプログラムは楽しい工作シリーズを活用し、プログラミングやメカトロニクスの基礎が学べるもので、「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」だけでなく全国各地で開催されています。
子どもたちの学習だけでなく、介護施設からもリハビリの一環としてプラモデルの講習会を開いてほしいといった問い合わせが数多くあるとのことで、プラモデルファンの“開拓”と“回帰”のための重要な拠点として、大きな役割を担う施設となっています。
DATA
TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO
- 所在地:〒105-0004 東京都港区新橋4-3-1 新虎安田ビル1階
- 営業時間:【平日(月〜金)】11時~20時/【土・日・祝祭日】10時~19時