『ADVANCE OF Z』立体化計画_TR-6 ウーンドウォート編②
製作●空山竜司
『ADVANCE OF Z』立体化計画、第2回となる今回はいよいよ原型に手を加えていきます。前回で明確になったハイエンド設定画稿のイメージに近づけるため、各部を加工します。
細かい工作が必要な箇所もありますが、本記事から市販の(レジン)キットを改造する方法や、設定画稿のイメージを立体にするコツを掴むことができれば、決定版ともいえるTR-6ウーンドウォートをその手で作り上げる日が来るかもしれません。また、今回使用する道具も合わせて紹介していますので、参考にしてください。
※これまでのバックナンバーも併せてご覧ください。
『ADVANCE OF Z』立体化計画_TR-6 ウーンドウォート編①の記事はコチラ
■使用する道具
① ② 加工用パテ
「シアノン瞬間接着剤」(左)や「Mr.SSP(瞬間接着パテ) 」(中央)を加工用パテとして使用します。シアノンはそのままだと粘度が低く硬化後にレジンとの固さの差が出て、加工しづらくなりますが、Mr.SSPのパウダー(右)と混ぜることで代用可能(②)です。なお、どちらを使用する際にも硬化促進スプレーは必須ですので、ご注意ください。
③ ポリプロピレンのシート
きちんとした平面を出す必要のある箇所は、ポリプロピレンのシートを短冊状に切って原型に②のパテを盛り、切った板に硬化促進スプレーを吹き付け、硬化する前に押し付けて形成します。スラスターの写真②がこの加工をした状態の写真です。
④ エンボスヒーター
レジンパーツの歪みを修整する際に使用します。従来のドライヤー以上の熱風が出るので取り扱いには充分に注意して下さい。
■各部の加工
次から、頭部、上半身、スラスター、脚部、腕部といった各部の加工を解説していきます。各段階の加工を終えるごとに、全体のバランスやシルエットをチェックするなどしていきましょう。
■頭部
①パテ盛りによるパーツ形成
パテの「受け」も兼ねた0.3ミリのプラ板を赤い形状に切り出してパーツに接着し、その上からパテを盛って扇状にパーツを形成します。硬化不良を防ぐために「少量のパテ盛り→硬化スプレー」を繰り返し、左右と後方の面を繋げていきます。
②パーティングラインを広げる
頭部中央のパーティングラインをくさび状に広げます。左右どちらか片方の面を仕上げ、メンタムなどで離型処理をした後に反対側にパテを盛り、それを仕上げた面に押し付けて形成する手順です。
③ジョイント部分の新造
②の工作を行うと首のボールジョイントの受け口は使用できなくなるので、頭部中央の位置が決定してから4ミリのプラパイプで新造します。
④首パーツの加工
首パーツは全体の底上げと頭部との接続位置を変更するために、裏側に1ミリプラ板を貼り前方向の空いたスペースはプラ板を積層してディテールを追加します。
■上半身
①加工前後の頭部
左が原型、右が改修後の頭部です。額や両サイドのディテールを生かしたままサイズアップと全体的に丸みを帯びた形状になっていることがわかります。
②首関節のパーツ加工
首関節のパーツを後方(背中側)に移動するために、背中のパーツを2ミリ分切り欠きます。この工作と「■頭部④」で行った首関節の底上げ加工で、首をすくめて前傾していた姿勢が自然な雰囲気となります。
③肩関節の新造
肩関節の赤く囲んだ部分を切り取ります。その後、取り付け位置を下方に修正したものをプラ板から新造します。写真左の加工前と比較して、写真右の加工後は肩の取り付け位置が変更されたことがわかります。
④頭部の加工
頭部を加工した際に広がった頬あてをエンボスヒーターで暖め、内側に曲げる加工を行います。
■スラスター
①~②スラスター形状の加工
先端の内側から0.3ミリプラ板で補強してから先端に向かって細くなるように削り、後端も2ミリカットしています。両側から同形状の0.5ミリプラ板を貼り、硬化スプレーを吹き付けたPP板とパテを使用してC面を作成。面の形状を把握しやすくするため、エッジにマーカーで印を付けておくといいでしょう。
③下側パーツの加工
下側の受けパーツも先端が細くなるようにエバーグリーンのプラ材を加工して作成します。
④加工前後の比較
原型(左)と比べて先端に向かって細く短くなっていることがわかります。
■脚部
①すねパーツの加工
すねパーツの下側(赤くマークした部分)を2ミリカット。それに合わせて内部のフレームも短くします。また、前から見て両サイドが下に向かって細くなる加工もしています。
②ヒールパーツの加工…1
ヒールパーツは原型の赤の部分をカット。先端に向かって細くなるようにします。
③ヒールパーツの加工…2
ヒールパーツは展開状態になるのでプラ材を使用してディティールアップし、左右の脚部の開き角度に応じた関節を製作します。
④ディテールの追加と接地対策
内部フレームの空いた部分にスライドディティールを追加。しっかりと接地させられるように接続ダボは丸にして多少の角度変化にも対応出来るようにしています。
■腕部
①~②肩パーツの加工
肩パーツ赤線の部分で切り取り、平面になるようにします(①)。その後、2ミリプラ棒で肘関節フレームと接続し、上腕が横方向に回転できるようにします(②)。この加工で肩関節を胴体側に寄せた際の可動の制限も解消します。
③腕部パーツの加工
前腕上部で(C面が残るくらい)左右0.5ミリずつ幅詰めし、肩関節は4ミリプラパイプを斜めにカットして新造。複製後に片側をカットして左右それぞれのパーツにするため、写真では左右に4ミリプラパイプが付いた状態となっています。
④加工の可動
上腕の回転軸の追加と前腕の加工で脚部を大きく開いても腕と干渉しなくなります。
■途中全身比較
左の原型と比べて上半身に力が入ったようなイメージが、ほっそりとしたより女性らしいシルエットになりました。加工した左右共通パーツを複製し、表面処理後に塗装の段階に入ります。
次回はAOZ独特の「横バー」の仕上げ方法やマスキングなど、塗装行程を紹介します。
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