「『蒼穹のファフナー EXODUS』に見る3DメカニックCG」公開講座が、バンタンゲームアカデミー「CONTENTS DESIGN PROGRAM」にて開催されました!
バンタンゲームアカデミーは、世界の“先端技術”と、“日本のオタク文化”からコンテンツ制作を学ぶ「CONTENTS DESIGN PROGRAM」として、6月13日(土)に、有限会社オレンジのCGアニメーター 吉本一貴氏、島本晋太郎氏、古市直樹氏をゲストに迎えて、「『蒼穹のファフナー EXODUS』に見る3DメカニックCG」をテーマとした公開講座を開催しました。
“アニメーターの卵”はもちろん、アニメファンにとっても、最新のCGアニメーション制作の裏側を知ることのできる貴重なお話をうかがうことができました。
ここではその講座の内容の一部を、3ページに渡ってご紹介いたします。
今回の講座では、TVアニメ『蒼穹のファフナー EXODUS』を題材に、メカ、ロボットがどのようにCGで表現されているか、ロボット同士の戦闘シーンがどのような意図をもって制作されているかなどを中心に講義が行われました。
右から、オレンジ CGチーフ 吉本一貴氏、CG アニメーター 古市直樹氏、CG アニメーター 島本晋太郎氏
●有限会社オレンジ
2004年設立。TVアニメや劇場アニメ、OVAなどのCGアニメーションを制作。
CGを作画と合わせても違和感のない映像を作り上げ、また3DCGのメリットを最大限に活かしたクオリティの高い映像が特徴。
これまでに80作品ほどの製作に携わり、近年では『蒼穹のファフナー EXODUS』のほかに、『攻殻機動隊 新劇場版』、『コードギアス 亡国のアキト 第4章 憎しみの記憶から』、『艦隊これくしょん -艦これ-』、『劇場版ドラゴンボールZ 復活の「F」』なども手がけています。
●メカ(ロボット・車などの無機物系の)描画について
近年、アニメ作品の中では「メカ類を3DCGで表現する」ということが確立してきています。
理由として、
1.ロボットや車など、パース感や形状に正確さが求められるものは3DCGが得意。
3DCGで対象のモデルを一度作ってしまえば、色々なアングルのアニメーションを取りたい時でも、カメラを変えることで形状の間違いなどが置きません。また、モデルのラインやスプライン(自然な曲線)が正確に出るので、設定から崩れない、作画崩壊が起きにくいというメリットがあります。
2.アクションシーンなどで、ダイナミックな動きやパース変化を付けやすい。
カメラの嘘の付き方や、レンズの使い方(広角・望遠を使い分けるなど)を駆使したり、アニメーションを撮影する際に加えるエフェクトで手描きの絵に近づけることができるので、極端な動き・漫画ちっくな表現は意外と3DCGは得意です。
【課題】
傷や破損などのモデル・オブジェクトの破壊表現やエフェクトなどの変化物は、時間がかかるのでTVシリーズなどでは難しいことも……。
理由として、ロボットの切断面や、鈍器で殴られて凹んだ表面など、個々のモデリングから作業をすることになり、時間がかかってしまうため。
解決策としては、カット数が少なければ作画で描くことによって対応しています。
●キャラクターも3DCGで表現したいという需要が増えている
1.セル表現技術の進歩
「レンダリング:CGモデルを加工して、目的の画像や映像を作ること」を行うことで、作画に近い色や影を忠実に再現できるようになりました。
2.視聴者のセル調CGへの慣れ
見慣れたものとしての認識が広がったことで、3DCGで表現したキャラクターが受け入れやすい土壌ができつつあります。
3.作画では手間がかかることでも、フルCGにすることで、よりダイナミックな演出を可能に。
先ほどのメカと同じくCGの利点を活かして、大胆なアニメーションが作画より少ない時間で表現できるようになりました。
【課題】
髪の毛や服などのシミュレーションにかかる手間と時間がかかる。(風を受けてなびいてるようなシーンなどは、物理演算など細かな設定が必要になる、など。)
作画ではそういったシーンの描き方が技術として確立されているので、手で描いてしまったほうが早い。また、アニメのキャラクターはアングルによって独特の形状をしているので、ひとつの形状では対応が難しいです。
具体的には、正面用に作ったキャラクターの顔のモデルを横や上など別のアングルから見ると、設定から離れた見た目になってしまいます。そもそもアニメ用の設定は三次元的にはおかしな形をしていますので、作画の場合はその都度調整して表現していますが、3DCGだと横用・上用などそれぞれのアングル用にモデルを作る必要があります。
●フレームレートやコマの仕組みは、セルアニメの基準に合わせて制作
普通の邦画などだと30fps(1秒間に30コマで撮影)で作られますが、アニメは昔から1秒間に24コマで撮影しているので、それに合わせて作らないとそこだけがぬるぬると滑らかに動いてしまい、違和感が生まれてしまいます。
3DCGの場合も30fpsや60fpsで出力は可能ですが、アニメになじませるためにあえて24コマまで落としています。
第9話でのマークザインとマークニヒトが縦横無尽に戦ったシーンを見ても分かるように、3DCGを使用していても作画と違和感のない仕上がりとなっていました。
●『蒼穹のファフナー EXODUS』の設定、美術ボード(背景)の裏話
竜宮島は普段「擬装鏡面」に覆われていますが、その内部では日本特有の雲(湿度の高い空の様子)が再現されています。
※竜宮島は、実際には太平洋上を移動しているため、「擬装鏡面」が解除された際は、それに準じた描写がなされています。1話で描かれている竜宮島も、日本の夏空を思わせる雲が漂っています。
……この辺りのお話は直接今回の講座につながるものではありませんが、作品の裏側を知ることのできる貴重な機会ですね。
●CG制作の流れ
1.設定
キャラクター・メカニックデザイナーによって、設定画が作成されます。
2.モデリング
設定画を基に、ロボットや戦闘機をモデリング(3DCGモデルを作ること)。
3.セットアップ
可動部分の設定を基にリギング(モデルを動かして、動作をさせること)。
4.絵コンテ・レイアウト
監督やコンテマンによって、絵コンテ・レイアウトが作成されます。
5.アニメーション
絵コンテを基に、カット(アニメーションを構成する1場面)を制作します。
6.コンポジット
レンダリング(3DCGを作画アニメに近づけるための処理)したデータのコンポジット(複数の素材を合成すること)、エフェクトの追加、背景になじませる処理などを行います。
7.撮影
完成した素材をまとめて、アニメーションが完成します。※昔はセル画を実際にカメラで撮影してアニメーションを作っていたため、この呼び名が今でも使われています。
画像は、メカニックデザイナーの鷲尾直広氏によって用意された、遠見真矢機「マークジーベン」の設定画。
このファフナーの設定画に基いて、モデリング作業が行われます。
頭部の様々なアングルや、武器の細かなディテールに至るまで、膨大な情報が3Dモデルに吸い上げられていきます。
今作『EXODUS』で登場した新型のドラゴントゥースも、設定画が新しく描き起こされています。
先ほどの設定画に色彩設定が済んだもの。
明るいところのノーマル色、エッジ部分のハイライト色、影が2色決まれば、おおよその色みが再現できます。
アニメでは、作業量をいかに節約して枚数をこなすかが鍵となっているため、色数もなるべく抑えています。
こちらがモデルとして上がってきたもの。
この段階でおおよそのプロポーションを確認していき、各部の大小など修正を重ねていきます。
作画調にレンダリングされたもの。
設定画通りのモデルに仕上がっていますが、このままだと作画に比べて情報量が乏しく、様々なアングルに対応することができません。
立体感の足りない部分(ラインを出したい場所)に、スプラインを追加します。
赤丸内にディテールが追加されました。
実際にライトを当てて明るさを表現しようとするとキレイにならないので、あらかじめハイライトの形を作っておきます。明るさ(立体感)を出したい場所に、ハイライトをポリゴン(多角形の構成物)で追加します。
この時点でステッカーなどもマスク(モデルの上に被せる絵やエフェクトなど)として用意しておきます。
赤丸内にハイライトやアルヴィスのロゴなどが追加されました。
一連の作業を行ったものを比較。
基本的にどのモデルにも同様の作業を行い、場合によってはさらに手を加えることで、より良い仕上がりを目指します。
今度は全体図での比較。
ラインとハイライト追加前。
ラインとハイライト追加後。
赤丸内などが変わっていることが分かります。
さらにこの後、質感の処理などが加わえられたものが、テレビで放送されているものになります。
今度はオリンピアのモデル。
ボーンと呼ばれる各パーツを簡略化したモデルを作り、各部の可動の確認作業を行います。
武器や装備なども含めた、より実物に近いモデルはlowモデル。
完成形のモデルで作業を行うとどうしてもパソコンの処理などが重くなってしまうため、こういった簡略化したモデルでアニメーションの確認を行います。
マークジーベンの左手・左足の動きを確認。
各モデルや武器などはひとつのデータとしてまとめて、確認ができるようにしています。
●作画に寄せた動きを表現するための、セットアップ
ロボットのセットアップの特徴として、モデルにスキンを使用!
作画の場合は、ロボットであっても人間と同じように柔らかく描くことで、限られた枚数で自然な動きを表現しています。
スキンを使用していないCGのロボットの動きは、固く不自然な動きになりがちなので、ロボットのCGにスキンを割り当てることで、柔らかな伸び縮みやねじれに対応できるようにし、作画に寄せた動きが表現できます。
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