「『蒼穹のファフナー EXODUS』に見る3DメカニックCG」公開講座が、バンタンゲームアカデミー「CONTENTS DESIGN PROGRAM」にて開催されました!

更新日:2016年2月8日 18:14

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●CGアニメーションのポイント

CGで基本的なアニメーションを付ける手順は次の通り。

1.大まかな位置移動とカメラワークを決める。

2.動きにタメ詰めをつける。カメラワークを滑らかに。

3.ポーズなどの細部の動きを付ける。脇役の動き(本体の主な動きを主役とすれば、手足のちょっとした動きや武器のギミック動作など)を付ける。

 

これにより、3DCGならではのカットづくりが可能となります。

例えば、作画ではカメラが回りこんだりすることは難しいですが、3DCGで背景を含めてカットを制作することで、カメラを自由に動かすことができ、ダイナミックな表現をすることができます。

 

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ワイヤーブレードが発光するまでの一連の動作を紹介。

 

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lowモデルで各パーツなどの干渉がないか、動きを詰めていきます。

 

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次にhighモデルと呼ばれる、lowモデルより実際の表示に近いモデルで、確認を進めます。

 

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レンダリングを行い、エフェクトを加え、ワイヤーブレードが発光=発熱している様子なども追加していきます。

 

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背景が加わり、スピードを表現する集中線=漫画的な表現などが重ねられていき、実際に放送された映像に近づいていきます。

 

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今度は、第9話のマークジーベンの射撃シーン。

実際にカメラで追従して上手く撮影することは難しいので、あらかじめカメラを固定してしまい、画面奥から接近してきたジーベンが、中央で銃を構え発射、その後カメラからアウトしていくように見せています。

 

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ボーンの動き。

 

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lowモデルの動き。

 

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各部の干渉や、羽の動き、銃の反動の動きなどをチェックしていきます。

 

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highモデルでの動き。

 

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脇役の動き(頭でスコープを狙う動作など)も細かく加えていきます。

 

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レンダリングを行い、ライン・ハイライト・目の発光などが加わります。

 

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今回は射撃の動きがあるので、射撃エフェクトが加わります。

これは銃を撃った際の照り返し。

 

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さらにエフェクトを重ねていきます。

3Dだとどうしても“3Dっぽいエフェクト”になってしまうため、オレンジではエフェクトが手描きで表現されており、今までの作品で使用したものをアーカイブとしてストックし、その中から組み合わせたものを、新しいエフェクトとして使用しています。

それゆえに、他の手描きの作画ともよくなじみます。

 

ちなみにこのジーベンのシーンは、『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』で登場したエウロス型の射撃シーンのエフェクトを流用する形で使用しています。

 

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背景などが加わり、テレビ放送時にかなり近づいた状態。

 

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背景の雲の動きなどが加わることで、カメラが追従しているような映像を再現しています。

 

このように、エフェクトを追加することで、アニメーションをより迫力のあるものにすることができます。

また、オブジェクトに回りこむ光の処理や背景に色調を合わせるなどの処理をすることで、CGの画を手描きの作画になじませることができます。

 

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▲クリスタル カラー素材

『ファフナー』でおなじみの、同化現象のシーンなどで登場するクリスタル。

こちらは9話でジーベンのもとにザインが駆けつけたシーンで、ザインの手元(ルガーランスの根本)に現れたもの。

 

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▲クリスタル 裏側素材

先ほどのカラー素材に裏側素材を加え、透けている“透明感”を表現します。

 

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▲クリスタル 質感素材

さらに、質感素材で奥まったところの影を表現。

 

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▲クリスタル ライン素材

ライン素材は、クリスタルの形状に合わせて太めのラインと細めのラインの2種類を出すように調整。

 

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▲クリスタル 質感素材

そして、光が当たっている部分を光沢の質感素材を加えて表現。

 

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クリスタルを完成させるために、いくつもの素材を重ねることで、劇中の印象的な“同化”のシーンを表現しています。

 

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完成したものがこちら。

舞い散る細かいクリスタルなども、同様の処理が行われています。

 

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他にも、クリスタルは動いている状態のものもあります。

9話のザインが街を丸ごと同化するシーン。

シミュレーション系の効果を使い、用意した数種類の素材(クリスタルのモデル)が、ランダムで生えるという処理を行うことで、表現していきます。

 

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劇中では、何もないところから生えてくるようなもの、腕を再生するとき、武器を転送するときなどは、このパターンのものが使われています。

 

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この街全体を同化するシーンは非常に手間がかかったとのことで、もちろん細かいラインなどを全て手描きでやるよりは簡単にできますが、準備するだけで半日、レンダリングで1日かかっているそうです。

ドーム状の建物や建造物に沿う形で生やすため、作業量が非常に多くなっています。

しかも、放送ではカットされて、制作した全ての映像は流れなかったようです……。

 

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ザインがルガーランスを掲げているカットでは、奥の方からクリスタルが順々に割れるように段階を踏んでシミュレーションがかけられていて、リテイクなども含め時間がかかっています。

※放送当時、「制作進行は順調そう」との見方がネットなどではささやかれていましたが、現場の状況はかなり緊迫していたとのことで、それだけ高いクオリティを出すために時間をかけて作られていたということがうかがえます。

 

 

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こちらは8話で一騎が回していたろくろのシーン。

3DCGはこんなところでも使われています。

 

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細かい設定や、実写のろくろなどを参考にしてモデリングをされているとのことですが、最終的にレイアウトの見た目に合わせるために実際のものとは異なる形になっています。※作画と同じような見た目にするために、モデルを本来ありえない形に変形させています。

 

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一騎と合わせたものがこちら。

リアルなろくろの形のままで作っていたら、レバーなどはこのようには見えません。

 

“メカ”とはちょっと違いますが、セルアニメで表現の難しい「車のタイヤなどのように回転して見せる表現」をCGで再現しています。

講義では語られませんでしたが、このカットも普通に回転させるとテーブルと器の速度が違って見えてしまうので、テーブルと器の回転数を変更して回転させていて、作画の手法と同じ様な処理などを追加してなじませる調整が施されているとのことです。

 

 

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視聴者に大きな衝撃を与えたアザゼル型の1シーン。

フェストゥム特有の金色の光沢が見られます。

 

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元となっているのは、このまっ黄色の素材。これに特殊な光り方の処理を乗せることで、劇中の金色を表現します。

 

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“光り方”は一辺倒ではなく、首筋から頭部(赤)、顔面(黄色)、まぶた(紫)、目(ピンク)、口(緑)と、それぞれ異なる設定によって光らせる方向を変えることで、あの独特のうねるような光り方の表現がなされています。

 

 

●ファフナーに3DCGを使う利点と課題

【利点】

作画リソースの最適化

メカに代表される“線の多いオブジェクト”を破綻なく迅速に描画できるのはCGの強みと言えます。

作画で描く場合、細かいモールドなどは省いて描いているので、よく見ると動いてるシーンは、線が少なくのっぺりしていることがあります。(1枚1枚を細部まで描いている時間がないため。)

3DCGであれば、一度設定すればどのカットでもそのまま使うことができるので、その分浮いた時間で作画や決めカットにパワーを回すことができます。

メカであっても決めのカットなどでは作画で時間をかけて描いているので、将来的に作画がなくなることは恐らくありません。

3DCGと作画にはそれぞれの強みがあり、それぞれの利点を効果的に生かして作られたのがこの『ファフナー』です。

 

【課題】

緻密な感情表現や変化物

キャラクターの表情・感情の機微、メカのキズ、射撃・炎のエフェクトなど、手間と時間がかかってしまうため、苦手です。

この辺りは作画の十八番とも言えて、実際にエフェクト系などはほぼ手描きで作られています。

ただし、苦手な部分は作画でカバーするとは言っても、今後どんどん3DCGでカバーできる面を増やしていくことが目標です。

 

 

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