ガンプラファンの「箱捨てられない問題」を救ったプラカード付ウエハース第2弾発売記念!開発秘話スペシャルインタビュー!

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プラモデルのキットそのものはもちろん、パッケージを見て心をときめかせたことが、モデラ―・ビルダーの皆さんなら必ずあるのではないでしょうか。箱の中に入ったまだ未完成の機体が、躍動感ある筆致で描かれ、側面には綺麗な完成図。大きく描かれた商品名が迫力あるフォントで誇らしげに踊る。

 

 

昨年末に発売されるや、大人気となった「GUNDAM ガンプラパッケージアートコレクション チョコウエハース」は、まさにそういった、パッケージの価値、存在感をまるごと商品にした意欲的なアイテムです。バンダイで菓子・食玩をリリースするキャンディ事業部とBANDAI SPIRITSでガンプラをはじめとしたプラモデル・模型をリリースするホビー事業部がタッグを組んだ、セクションを超えた特別なアイテムでもあります。

 

このちょっと異質な食玩ができるまでを、立ち上げ時のエピソードからボックスアートそのものの普段あまり語られない作業部分までを、バンダイキャンディ事業部担当・宮脇氏とBANDAI SPIRITSホビー事業部担当・齊藤氏にインタビュー。ここだけの話をお伺いしてきました!

 

宮脇氏:バンダイキャンディ事業部所属、ガンプラチョコウエハース担当。ほか「想造ガレリア」シリーズ、『神羅万象チョコ』なども担当されている。

 

齊藤氏:BANDAI SPIRITSホビー事業部、ガンプラチーム所属。ガンプラパッケージのデザインを担っている。

 

「チョコウエハース」を発売にこぎつけた事業部を超えた連携

――本企画のスタートはどのようなものだったのですか。

 

宮脇:いわゆるウエハース+プラスチックカードのフォーマットは15年前のオリジナル企画『神羅万象チョコ』から始まり、今ではバンダイの食玩カテゴリーにおいてひとつの柱となっている商品です。そのウエハースで『ガンダム』をやりたかった。個人的にもガンプラが大好きですけど、その大好きなガンプラのパッケージを題材に、バンダイならではの事業部間コラボで提案できないかな? とご相談させていただいたのが去年の春先です。

 

――齊藤さんはその話を受けて実際の作業に入られた?

 

齊藤:私たちはふだん、静岡の工場でひたすらガンプラのパッケージデザインを作っているんです。パッケージが“ボックスアート”と呼ばれるような、ひとつの付加価値を持っている、というのは十分わかっていましたが、こういった形で食玩にしたときときどのくらい売れるんだろう、というのは全く想像できなかったんです。でも、実際に売れた数を聞くと、メインになるだけの価値があるんだな、本当に凄いなあ、というのが正直な感想ですね。

 

――第1弾が好評だったと聞きました。

 

宮脇:想像していた以上の反響でした。とくに反応が大きかったのは30代から40代の方だったんですけど20代の皆さんからも好評いただいています。お客様一人あたりの平均購入数も多くて。

 

――大人が大人買いしている感じですね。

 

宮脇:SNSでもファイリングしていただいたりとか、ガンプラと並べてディスプレイしてもらったり。あと、ウエハースがきっかけでガンプラを購入していただいたと言う方も結構いらっしゃるんです。食玩ならではの広いタッチポイントというか、全国で買えるという強味が相乗効果を得たのかな、と。

 

――ウエハースが予想外においしかった、という声もあったとか。

 

宮脇:そこもですね、じつはかなり意識したポイントなんです。バンダイでは大きく「チョコウエハース」と「クリームウエハース」の2商材を展開しているのですが、「チョコウエハース」は味に定評があるものの、輸送条件やコスト面では「クリームウエハース」の方がが優れていて……。でも「おいしい“チョコ”にこだわりたい!」と「チョコウエハース」を迷わず選択しました。おかげさまで、味も好評いただいてます。商品アンケートの味に対する回答では「とてもおいしかった」という感想がトップで、これは冥利に尽きますね。

 

▲ウエハースとそれに近いサイズのカードがパッケージングされ、美しくまとまります。

 

サイズ、ホロ、テキスト……多数の工程を経て完成する「パッケージアート」のカード

――いよいよカード本体のデザインについてお聞きしたいのですが、どのように作られていったのでしょうか。

 

宮脇:齊藤さんからパーツごとにわかれたデータをいただきまして、サイズに合わせて再構成、それを監修していただいています。例えば第2弾ではインフィニットジャスティスは、実際のアートはもう少し横長なんですが、齊藤さんからご指摘いただきながらカード用に合わせて調整・修正しています。

 

齊藤:MG(マスターグレード)のこの「縦に文字が入ってイラストが入る」というデザイン、この“らしさ”があればMGのパッケージに見えるんです。このフォーマットの非常に秀逸な部分です。このレイアウトをしっかり守れば、比率が変わってもしっかりMGに見える、という……。

 

▲カード版のインフィニットジャスティス。タテヨコの比率が変更されながらも美しくまとまっています。

 

宮脇:ゼータプラスなんかは初期のMGなんですけど、まったく見劣りにせずそのものに見えます。あと、第1弾のレアになっている1/100ガンダムなんですが、これは調整の効かないデータだったんですが、なんと偶然ぴったりカードにサイズが合いまして。これはラッキーでした。やっぱりこの当時の原画は手書きなので、スキャンなんです。

 

▲「ラッキーだった」という1/100ガンダム。特徴の白枠もくっきり。

 

――パッケージとカードでサイズ感やタテヨコ比などが変わってしまう部分はどうだったんでしょう?

 

宮脇:僕は作らせてもらう側だったので、カードになることには全く抵抗がなかったんです。むしろぜひ欲しい、というところだったんですが……。齊藤さんはいかがだったでしょう。

 

齊藤:最初に言ったように、パッケージに価値があって、カードになるというのはすごいなと思ったので、そこに抵抗はなかったんです。ただ、メタリックやホロに関しては「これを欲しい人たちって本当にこういうのを求めているのかな」っていう議論もありました。こんなにしちゃっていいのかな、加工せずにパッケージアートそのもののほうがいいんじゃないのかな……と。

 

宮脇:はじめはザクのモノアイや、ユニコーンガンダムのサイコ・フレームといった劇中でも発光するパーツは、ホロやメタリックで直接光るような処理にしてみたんです。でも、それはちょっとNGにしましょう、モビルスーツ単体に関わるものはそのままで、と齊藤さんと話し合いました。確かに仕上がったものを見るとその判断はすごくよかったんです。ちょっとうるさいし、アートが好きな人からすると余計な処理になってしまう。ホロやメタリックの加工に関しては、今後も印刷が明るく見えるよう気を付けながら、進めていきたいです。

 

▲ホロ、メタリックとも、アートの前に出すぎず、しかし個性ある光を放ちます。

 

――ホロというかメタリック処理は欠かせない部分でもあったんですね。

 

宮脇:『ビックリマンチョコ」や『カードダス』を子どもの頃コレクションしていた、40歳前後の方はお菓子の“オマケ”におけるホロやメタリックというのはやはり“ときめく”要素でもあるのでちょっと入れたいな、落とし込めたら面白いだろうなと。

 

――カード裏面の“濃い”テキストはどなたが書かれているのでしょう?

 

宮脇:これは専門のスタッフが書いてくださってます。 担当者が3人いらっしゃって、その中でもテキストの方がすごいガンプラ好きなんですよ。例えば1/100ガンダムはシールドのマークがかつてはシールだった……なんて文字通りマニアックな知識までしっかり書いていただいて、読み物としても楽しい内容になっています。本当にガンプラが好きという情熱で作っていただいてて、その熱いテキストが揃えるとガンプラ図鑑のようになっていく……、というのは開発各所でも非常に評価していただいてます。

 

齊藤:シールのくだりも本当にあっているのかな? と思って古い資料を引っ張り出したら本当にシールになっていたという……(笑)。

 

▲1/100ガンダム裏面テキスト。これを読んでそのガンプラの詳細を知るのも、本アイテムの楽しみ方です。

 

齊藤:書いている内容が私も知らないことだったりして(笑)、当時のパッケージや取扱説明書をひっくり返して、書いてあるかどうか確認するんですよ。で、たいてい「あ、書いてある。正しい」って(笑)。

 

宮脇:齊藤さんには校正というか、校閲までしてもらっている感じです(笑)。

 

こだわりの収録キット決定と台紙にまでいたるこだわり

――アイテム選定についてお伺いさせてください。MG中心のラインナップはどのように決まったのでしょう?

 

宮脇:そうですね、「MGが好きだ!」というのはあるんですけれど(笑)、やっぱり最低限の情報でアートを見せている、という優れたデザインフォーマットが決め手ですね。HGUCはじめほかのガンプラパッケージももちろん好きなんですが、アートとして、絵を中心に、見せることに関してはMGが極めて優れている……ということで中心に据えました。第2弾ではもう、RE/100や1/60も登場して、広がってきてますけど(笑)。今後もMGを中心にしつつ、神出鬼没にサプライズ枠も入れつつという……という展開になると思います。

 

齊藤:第1弾の1/100νガンダムや、第2弾の1/60フルアーマーガンダムのようなサプライズ枠は宮脇さんの純粋なガンプラユーザーとしての嗅覚が選んでらっしゃいます(笑)。今後も宮脇さんのやりたいラインナップで全然問題ないかな、と思っていて。とはいえ、できればそのとき発売しているガンプラと関連性があると嬉しい……というのはあって(笑)。ラインナップの要望は、ガンプラを企画する担当者にも意見を貰い判断しています。

 

▲第2弾のサプライズ枠となる1/60フルアーマーガンダム。第1弾のMG 1/100 フルアーマーガンダムとも連携したチョイスです。

 

――現行ガンプラとの連動もあるんですね。

 

齊藤:SEED系の商品が出るからちょっとSEED系の機体がいるといいね、とか。やっぱりこれを入れてほしい、みたいなのもありますね。一方で、要望いただいたものを都合できない場合もありまして……。原画が存在しないとか、レイアウトデータが残っていないとか。

 

――作品ごとのアイテムの数というのは意識されているんでしょうか。

 

宮脇:さっきのアンケートにも関わるのですが、40年も続いている作品なので意図的に初代『機動戦士ガンダム』だけにならないように、とはしています。とはいえ厳密に作品ごとに枠数を、みたいな決め方はしていません。デザイナーさんやテキスト担当の方など、チーム全体で相談をしながら詰めていきまして、最終的には齊藤さんにお渡ししてご判断を仰いで決定……という流れですね。

 

齊藤:第1弾でほぼ、主役級のものが収録されてしまったので、第2弾以降どうなるかというのはすこし不安だったりしましたが(笑)。

 

宮脇:やはり最初は勝負の弾だったので、どれが出ても当たり! という機体セレクトです(笑)。第1弾だとジェガンが齊藤さんイチオシでしたね(笑)。

 

齊藤:ジェガンは外せませんよね(笑)。

 

宮脇:事業部間の連動という部分では、ウェハースの台紙に最新のガンプラ情報がプリントされているんです。さらに第2弾を買っていただいた方はお分かりかと思うんですが、この台紙の予告は次弾とも連動しています。予告されたものが次の弾で入る……みたいなギミックはぜひ続けていきたいです。第1弾で気づかれたユーザーさんからは「台紙まで凝ってる!」みたいなご感想もいただいたけて。

 

――最新情報が入ってくる意外なルートなんですね。

 

齊藤:デザインはこちらからお渡ししています。ホビー事業部としてもこれだけ人気のアイテムに予告が入れられるというのは大変ありがたいので(笑)。

 

宮脇:定番のギミックとして、これからも話題になってくれると嬉しいなと。

 

ポーズ、構図、文字……こだわりのガンプラパッケージワーク

――収録されたパッケージで、特に作るのが大変だったアートはありますか?

 

齊藤:私の担当ではないですけど、「MG 1/100 ガンダムVer.2.0」は難航しました。何回もいろいろな構図を提案していた覚えがあります。RX-78ガンダムは初代「MG 1/100 ガンダム」、続く「MG 1/100 ガンダム Ver.1.5」やゲーム版となる「MG 1/100 ガンダムVer.ONE YEAR WAR」などのバリエーションを経て満を持しての発売でしたから、このイラストやポージングをどうするか、というのは部内でも複数の意見が出ました。安彦(良和)さんの設定画準拠の造形なので、それに対してどんなイメージでイラストを作るのか……というところでたいへんな試行錯誤があって、何回もリテイクがありました。イラストを担当された天神(英貴)さんもガンダムベースのイベントでだいぶ苦労したというお話をされていました。RX-78ガンダムってやっぱり、みんなの中にいろいろなイメージがあるんですよね。だからこれをまとめていく作業が大変だったんです。

 

▲特に難産だったという「MG 1/100 ガンダムVer.2.0」。イラストレーターの天神英貴氏は深夜に頭を抱えて散歩をされていたとか(画像はカード版)。

 

――ポージングやアングルを含めて大変な試行錯誤があるんですね。

 

齊藤: MGは基本縦型のパッケージが多いのですが、縦型というのはポーズがかなり制約されるんです。足や腕や武器が見切れてしまう。なので、まず縦型の中でどれだけ最大限ポーズをつけられるか、という勝負があります。そのうえで、そのモビルスーツらしさ、イメージを出すにはどんな見せ方が、ポージングがいいのか。もちろんプラモデルなので、ギミックや造形の“売り”があるのならばそれも見せたい。ディテールや形状に特徴があるならそこも……。そのうえで過去に出ている商品と似ていないかとか。そういった多数の要素を突き詰めながら作っていきます。さらにMGの場合は背景込みのイラストなため、物語性も重要になってきます。例えば同じく天神さん担当のG-3ガンダムでは、周囲の人影や、ボールの動きを含めたシチュエーションの妙があります。宇宙では空気遠近法が使えないので、それを含めてどう遠近感を出して表現するか、ということも話されていました。そういったところは私たち発注側の人間では考えが及ばないところなので、プロフェッショナルのイラストレーターさんの力量を信じている部分です。

 

▲G-3ガンダム。本体はもちろん、背景を含めてはじめてパッケージアートが完成します。

 

 

――最後に、今後の展開はどうなっていくのでしょう。

 

宮脇:ホビー事業部をはじめ、各所のご了承がいただける限り続けていきたいアイテムです。作品を大事にするという感覚を忘れず、1弾1弾をお客さんが求めるような、いい作品としてまとめながら続けていきたいですね。

 

齊藤:普段、僕たちが作っているガンプラとはまた違うお客様にも、買ってもらえるアイテムだと思うので、これをきっかけにガンプラに初めて触れていただいたり、ガンプラのファンになってもらえれば嬉しいです。第2弾ではスーパーレアとして収録されているMGシリーズ100点目の∀ガンダムは、MGロゴが箔押しになっているという、当時の記念アイテム仕様まで再現しています。こういったパッケージアートの細かいところまで再現しているこだわりに、ぜひ注目してほしいですね。

 

宮脇:カードナンバーも100に合わせられればよかったのですが、収録のタイミングで56番になってしまっています。そこはちょっと反省点ですね(笑)。

 

▲第2弾のスーパーレアとなる、MGロゴが箔押しとなった∀ガンダム。ガンプラにとっての記念碑的存在が、カードとして再現されるのは史料的にも興味深い試みです。

 

製品化にいたるまでの調整と、製品に携わるこだわりが産んだプロダクトの「GUNDAM ガンプラパッケージアートコレクション チョコウエハース」。現在は第2弾が発売中ですので、ぜひ店頭で手に取って、そのこだわりを確かめてみてください。

 

DATA

GUNDAMガンプラパッケージアートコレクション チョコウエハース2

  • 内容:プラスチックカード1枚(全30種+シークレット2種)、ウエハース(焼菓子)1枚
  • カード種類:1.ホロカード5種/2.メタリックカード27種
  • 売場:全国量販店の菓子売場など
  • 販売元:バンダイ キャンディ事業部
  • 価格:120円(税抜)
  • 発売日:2019年5月27日(月)

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