アニメ『女子高生の無駄づかい』さんぺい聖監督インタビュー。絶妙な笑いはこうして生まれた!
WEBコミック誌『コミックNewtype』から飛び出したハイテンションでおバカでお下品で超かわいい!? なんでもアリの抱腹絶倒コメディー『女子高生の無駄づかい』が、TVアニメになって絶賛放送中です。
アニメ放送記念インタビュー連載第3弾として、バカこと田中望役の赤﨑千夏さん、原作者のビーノさんに続いて登場するのは、監督として指揮をとるさんぺい聖さん。
大反響のアニメを支えている監督のこだわりに注目しましょう!
原作者・ビーノ先生も全面支援! コミック版の魅力を最大限に引き出す作品に
――初めて原作コミックを読まれた時の第一印象からお聞かせください。
さんぺい:原作は基本ショートギャグで、当時は3巻までしか発売されておらず、さすがにボリュームが足りないのでどうやってアニメ12本にするかなと悩んだことを覚えています(笑)。
ただ、単行本化がされていないストックはたくさんありましたし、原作サイドを交えた最初の打ち合わせの時に、ギャグにストーリーを加えた日常コメディというテイストにしたいという話になり、それだったら映像化もイケそうだなと思いました。
その時に、キャラ物としてもやっていきたいというオーダーもありましたね。
ジワジワきたりクスッときたりする原作のギャグは個人的に好みなのでそれを損なわないようにしつつ、各キャラの日常というか、この世界に生きている感じを足していって彼女たちのかわいさも出していけたらと考えました。
――ギャグ部分は原作のテイストを生かすことを意識されているんですね。
さんぺい:原作自体がそもそもコマ割りや絵だけで笑わせるタイプではないので、アニメは原作から変えるというより、原作のギャグをどうおもしろく見せるかを考えて作っています。
ネタをどう表現するかは原作者さん独特の感性があるので、やはり他人がいじれないなあって考えが僕の中であって、その方向性が変わっちゃうと原作ファンも「違うかな?」って思っちゃうなと。
なのでギャグはいじらず、日常描写をくわえて物語性を足すなど、かわいい方向性を足してる感じですね。
――原作者のビーノさんからオーダーを受けたり、相談して作った部分はあるのでしょうか?
さんぺい:ええ、ビーノさんもシナリオ会議に出られていましたから。
「キャラは原作よりかわいくしたい」というのがまず1つありました。さらに「カップリングとかも楽しんで描いてるんで、意識してくれるとうれしいなあ」って話をされてました。いわゆる百合的な要素ですね。
そこはなるほどと思ったので、百合ってほどじゃないですけど、僕的には友情レベルでキャラクター間の距離感を近づけるように意識しています。
ビーノさんとのお話で印象に残ってるのは、出てくるワードが「この人すげえ、天才的だな」って思うことばかりなんです。“強ワード”がすごく出てくる。
アニメの最終回もどう終わらせようかって悩んでる時にビーノさんからアイデアをいただいて、「あ、それだ!」って(笑)。
……とにかく発想が凄い方で、いつもそういう発想からネタを膨らませておもしろい話を作ってるんだなって感心しました。
動かすのは難しいのはバカ。逆に動かしやすいのは?
――メインキャラがみんな個性的な作品ということもあり、各キャラに踏み込んだ話をうかがっていきたいと思います。監督的にお気に入りのキャラや動かしやすいキャラはいますか?
さんぺい:やっぱり一番好きなのはヲタ(声優:戸松遥)ですね、わかりやすいですし。一喜一憂してて感情が一番出てるキャラだと思うんです。
――逆に感情が表に出にくいロボ(声優:豊崎愛生)は動かしにくいとか?
さんぺい:いえいえ、ロボは意外とわかりやすいですよ。アニメでいうとテンプレ的なボソボソしゃべりキャラですけど、心情的にはバカ&ヲタから離れず、自分の信念に基づいて行動してるんで、セリフや芝居に迷わないキャラではありました。
動かすのがきついキャラというと、やはりバカ(声優:赤﨑千夏)なんですよね。普通に立たせるだけでも悩んでしまうくらい、難しいんです。
他の子はそれぞれ個性的で、その路線から外れなければキャラをかわいく見せられるんですけど、バカは一定の形を作りにくい……。普通に描くと“かわいくない”女の子になってしまいがちなので、バランスが難しいんですよ。
まあ、基本的にはガニマタにしようとか、座る時などに僕らが思うような女性らしさを絶対に入れないようにしよう、みたいな決まりは作りました(笑)。
――かわいいといえばロリ(声優:長縄まりあ)などはいかがでしょう。まっとうにかわいいキャラですよね?
さんぺい:ロリはキャラ的に“かわいい”を外したらアウトなので、かわいさと言葉づかいの悪さのギャップを出せれば勝ちかなと。
バカたちにいじられてるのに自分から絡みにいくところがかわいいですよね。他のクラスメイトだっているのに。
そういう子どもっぽさは考えながら作っています。私服も子供のころしか着れない系統のかわいい服をあえて着せてみたり。
原作では8歳のころに両親と離れていて、親としてはそのころから成長してない感覚でロリにかわいい服を送り続けている……というイメージです。
――この作品では数少ない常識人のマジメ(声優:高橋李依)については?
さんぺい:これはビーノさんとも話していたことなんですけど、意外と使い勝手がいいキャラだぞと。いろんなキャラと絡ませやすいんですね。
常識的なことをいうキャラがいないので、話が常識を外れ過ぎちゃう時はマジメを持ってくると収まりやすいみたいな。
ただ、高橋李依さんの熱演のおかげで思ったよりも変なキャラになった手ごたえもあるので、アニメとしてはおもしろいマジメができあがったなあと。
――次に、作中でも屈指の中二病キャラ・ヤマイ(声優:富田美憂)についてお願いします。
さんぺい:ヤマイは独特の世界観を持ってますね。女性で中二キャラってリアルではあまり見られないところなのでおもしろいなあと。
オーバーな表現などはアニメの方が表現しやすいところもあります。
――続いて、百合美少女のリリィ(声優:佐藤聡美)の印象は?
さんぺい:リリィはそこそこ常識人なので、ヲタがいない場面ではリーダー的な存在になっちゃいますね。
初登場時こそインパクトがあって変態キャラでしたけど(笑)。それ以降はマジメとの友情がいい話になってるし、変な言い方ですけど唯一バカと対等に対立してるキャラでもあります。
たとえばロリはバカと対等になれてませんよね? でもリリィはバカのバカ度を気にせずふつうに向かい合ってるキャラだと思っています。
――次にマジョ(声優:M・A・O)ですが、この子も作中では他にいないタイプですよね。
さんぺい:マジョはヲタの次に好きです。原作でも生い立ちとかトラウマとかを持って物語に入ってきているのはマジョだけで、丁寧に描かれていました。
ロリなんかもみんなになめられたくない、みたいな想いは描かれていましたが、マジョはもうちょっと深いところにいろいろ抱えてます。そもそも存在がおもしろいってところが強キャラですよね。
――最後にワセダ(声優:興津和幸)はいかがでしょうか? 男性&先生という、他のキャラとは異なる立ち位置ではありますが。
さんぺい:立ち位置が先生なのであまり深く立ち入れはしませんが、この先生大変だなと(笑)。
ただしワセダはまだ二十代の若い男性って側面もあって、それはアニメではあまり描けなかったけど原作では好きなところです。
自分の夢を追いながら仕事もやっていて、僕も若いころだったら彼の魅力はわからなかったと思います。
――本作の先行上映会で声優さんが、リテイクが大変だった場面があったとおっしゃってました。どんなところにこだわっていたのでしょう?
さんぺい:僕もなんか言ってたところはあると思いますけど、それより音響監督の仁さん(明田川仁)のこだわりが強かったようですし、またギャグのところは声優さんに頼ってる部分もあったので、そこは多く録ってもらったのかもしれませんねえ。
プレスコや全天球イラストなど、新しい技術や演出にも挑戦!
――キャラクターたちの魅力を生かすために、本作ではキャストさんの声を先に収録した“プレスコ”を採用されていると聞きました。そういった制作上の工夫もお聞かせください。
さんぺい:日常物としての臨場感が増すように収録を先行でやらせていただいて、それを元に演出の方が声優さんの音量に合わせて演技をつけていくって方式をとらせていただきました。
ギャグなのでテンポをやはり重視したいと考え、そこを後でいくらでも調整できるようにとこういう形にしたんです。
あとは映像的なところでいうと、少ないですけど“全天球イラスト”という物も使っています。これは一枚絵を360度グルグル回してワンカットで見せられる手法ですね。
具体的には……最初に出てくるのは3話かな? アバン冒頭1分くらい、ヲタのリビングで3人がだべってるだけのシーンなんですけど、それをほぼワンカットで表現しているんです。
机のセンターにカメラがあって、回りながらそこに座っている各人の顔を順番に拾っていくような感じ。
制作的にはカロリーが高すぎるので、そんなに多用しないでっていわれてます(笑)。ちょっとだけ修正したいなんてとき、ワンカット丸々を調整しないといけないので、大変なんですよ。
――制作現場でのおもしろいエピソードなどもあればお願いします。
さんぺい:1話でバカとロリが某有名アニメのパロディをやるシーンがありましたよね。すごい偶然なんですけど、たまたま今作で作画をやっているスタッフのご家族が、その有名作の劇場版の動画をやっていた人なんです。
狙いにいったわけじゃないですけど、たまたま……。
――そういった小ネタから本筋の部分まで含めて、アニメの見どころをまとめると?
さんぺい:『女子無駄』のギャグはテキストでも笑えるけど、音にしてみても笑えるっていうのが、レコーディングしてからの発見です。
音として入ってくると、ついプっと吹き出しちゃう感じになっていて、そこは映像と相性がよかったのかなあと。
1話でいうと「おもしれー女だな」っていうネタは、ずーっとセリフとして言われ続けることで笑っちゃうんですよ。
みなさんも家にいる時だったら、琴線に触れたシーンでは我慢せず笑っていただけるとうれしいです。
――好評放送中のアニメはこれから後半戦に差し掛かっていきますが、毎回楽しみに見てくれているファンのみなさんに監督からメッセージをお願いします。
さんぺい:ギャグはいつも通りに楽しんでいただくとして、後半戦からはキャラクターたちの内面も描かれていく形になります。
笑いは我慢せず、泣きの部分なども我慢せず泣いていただければと思います。
僕は原作コミックのいい話とギャグとのバランスがすごく好きなので、そこはアニメでもうまく表現したいと思っています。
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(C)ビーノ/KADOKAWA/女子高生の無駄づかい製作委員会