中二病はやり切るからカッコいい——島﨑信長さんが語る『断裁分離のクライムエッジ』の魅力

更新日:2020年2月19日 13:54

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フェチズムを刺激するストーリーで多くのファンを魅了し、2013年にはアニメ化もされた人気漫画『断裁分離のクライムエッジ』。その作者である緋鍵龍彦さんの最新作『私の傷は死んでも消さない』が、2019年8月より月刊コミックアライブにて好評連載中です。

 

 

2人の出会いについて語っていただいた第1回に続く、作者の緋鍵龍彦さんと声優の島﨑信長さんによる対談連載第2回では、『断裁分離のクライムエッジ』のお話を中心にお届けします。

 

▲緋鍵さんから島﨑さんに、『私の傷は死んでも消さない』より軒下山猫のイラスト入りサイン色紙も贈呈されました。

 

中二病はやり切るからカッコいい。『断裁分離のクライムエッジ』を作者と語る!

——『断裁分離のクライムエッジ』について、詳しくお話を伺っていけたらと思います。島﨑さんが最初に読んだときのご感想は?

島﨑信長さん(以下、敬称略):アニメや漫画などいろいろな創作物に触れていると、ジャンルごとのお約束と言いますか創作の文法が自分のなかに蓄積されていきます。『クライムエッジ』は僕のなかの中二病作品の文法に近くてわかる部分が多かったのですが、緋鍵さんの独創性というかフェチを感じるところもたくさんありました。

 


●「断裁分離のクライムエッジ」PV第2弾


 

島﨑:まず、主人公の武器がハサミじゃないですか! ハサミが変形してカッコいい武器になるのではなく、あくまでハサミ。僕の中二病のイメージとは、いい意味でずれていました。

 

▲断裁分離のクライムエッジ。過去の殺人鬼が愛用していた“殺害遺品(キリンググッズ)”の1つ。“殺害遺品”には呪いがかけられており、所有する権利者は元の持ち主と同じ方法で犯行を行う殺人鬼となる。

 

緋鍵龍彦さん(以下、敬称略):ハサミなど殺害遺品(キリンググッズ)は、そこを突き詰めたら中二病的に刺さるモノにできると思ったし、僕自身も楽しく描けそうだと思ったんです。

 

島﨑:あと、キャラクターたちが全力で「クライムエッジ」とか名乗りとポーズを決めて、カッコつけているのもいいですよね。

 

 

島﨑:中二病な描写は笑いのタネにされることが多いですが、笑われるくらいやりきらないとおもしろくないんです。

 

 

緋鍵:そうそう、登場人物たちが真剣にやっていないと、笑われすらしませんから。恥ずかしいと思う人もいるかもしれないけど、僕にはこれがカッコよく見えるんだというね。あと中学、高校のときに読んだら、楽しいだろうなという作品を作りたかったという気持ちも大きいです。

 

島﨑:その視点は大事ですよね。なんでも大人に合わせてしまっても、おもしろくありませんから。未熟だったり、整合性がとれないような行動でも、勢いでそのままいってしまうのが若さですよね。

 

緋鍵:何が何だかわからないままでも進んでいくような、登場人物たちの勢いは大事だと思っています。

 

島﨑:個人的にアフレコのときも思っていたんですけど、主人公が祝の髪に触れる、切るのがどう見ても……。かなり、濃密なやり取りをしていますよね(笑)。

 

 

緋鍵:そう見えるようにしましたから(笑)。

 

島﨑:でも直接的なサービスカットではなく、髪なのがピュアですよね。僕個人の感想なので、女性からどう見えるかは分からないですけど(笑)。

 

 

緋鍵:良くも悪くも、中学生のころのような思春期の恥かしさを入れたいと思ったんです。直接的な性描写を入れるとそれがメインになってしまうので、暗喩で攻めていこうと。

 

——祝の髪の設定は、最初から決まっていたんでしょうか?

緋鍵:髪は最初から決まっていました。パンチのある、普通とは違う漫画を作りたいと担当さんと案を出し合っているなかで、“切れない髪の女の子と呪われたハサミの男の子”のアイデアが出てきました。担当さんもいいといってくれて、そこに肉付けしていった感じですね。

 

——ラブコメとバトルのバランスは、どれくらいを想定していたのでしょう?

緋鍵:僕は切ったはったでカッコつける展開が好きなので、最初から半々を想定していました。編集さんは、ラブコメを想定していたみたいですけど(笑)。

 

島﨑:後半はもうラブコメというより、より深いラブロマンスになってましたね。

 

——最後の決着で“愛”を原因にしない終わらせ方も、マニアックと言いますか、深いなと思いました。

緋鍵:最終巻をまるまる使って心の決着を描いたのですが、読者からも珍しいというか、きっちりやってくれたという感想が多かったです。

 

 

緋鍵:僕自身最初から“祝にハサミを持たせる”という展開を考えていたので、あそこまで書かせていただけて嬉しかったですね。

 

▲祝は自分の恋心が女王を生かしてしまったと後悔するが、その先にはもっと深い理由が……。状況が二転三転する最終巻は鳥肌モノのカタルシスを味わえます!

 

島﨑:普通ならラスボスを倒した、呪いが解けた、ヤッホーでもいいわけじゃないですか。

 

緋鍵:10巻までなら、そんな感じですね(笑)。

 

島﨑:コンプレックスって自分の特徴でもあり個性でもあるし、意外なものが誇りになっていることも。そこを受け入れてもらえた嬉しさってありますよね。ラブコメであると同時に、しっかりとした人間ドラマになっていています。

 

▲生身での戦いは10巻で終わるが、最終巻では精神的な決着がつくまでがしっかりと描かれることに。

 

島﨑:あと、自分の選択というのもいいですよね。お姫様が王子様に助けられる童話のような物語も好きですが、祝ちゃんが自分で決断するのが好きです。

 

 

緋鍵:祝はお姫様じゃなく、最初から女王様として描いていたんです。だから助けられて、めでたし、めでたしにはしたくなかったというのもあります。本当に、描かせてもらえてよかったです。

 

 

次回、連載最終回は最新作『私の傷は死んでも消さない』に関する島﨑さんの深い考察や、役者としての想いなどをお届けします。

 

●『私の傷は死んでも消さない』連載情報

月刊コミックアライブ(毎月27日発売)での連載を基軸にしつつ、ComicWalker、ニコニコ静画でも月2回配信中です。

 

(C)Tatsuhiko Hikagi
(C)緋鍵龍彦・メディアファクトリー/断裁分離のクライムエッジ製作委員会

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