RIOBOT(ライオボット)とはいかなるものか――?「グレンラガン」と「R-GUNパワード」の初公開ショット多数!千値練の最新アイテム開発者インタビュー!!
東京都上野に社を構える玩具・フィギュアメーカーの千値練(センチネル)。同社が展開しているシリーズの中でも「RIOBOT(ライオボット)」は、アイデア満載のギミックと抜群のプロポーションを両立させた完成品ロボットフィギュアシリーズです。そのハイクオリティな仕上がりと作品のチョイスは、多くのロボット好きを魅了しており、今や通算約60商品を数える一大シリーズとなっています。
そんなRIOBOTシリーズの最新作「RIOBOT 変形合体グレンラガン」と「RIOBOT 変形合体 R-GUNパワード」が現在予約受付中です(前者は2022年6月15日、後者は同6月7日まで)。アレンジを効かせた造形も多かったRIOBOTシリーズですが、本アイテムは原作に忠実なシルエットで“変形合体”をテーマに立体化。そこには千値練ならではのこだわりのアイデアと情熱が詰まっていました!
今回は最新2アイテムの貴重な初公開ショットと共に、作品の魅力、そして千値練の物づくりについて、これら2アイテムの開発担当者であり、副社長兼企画開発部の部長である額賀伸彦氏にお話をうかがいました。
DATA
RIOBOT 変形合体グレンラガン
- 塗装済み完成品アクションフィギュア
- 素材:ABS・POM・PP・DIECAST・ATBC-PVC
- 全高:約210mm(グレンラガン)
- セット内容:グレンラガン本体(グレン、ラガン)、ドリル(2本)、フルドリライズ用ドリル一式、グレンブーメラン(2枚)、グレンウィング、ミニフィギュア(シモン、カミナ)、叫び顔、ミニ台座、台座
- 設計:T-REX
- フィニッシャー:早川洋司
- 発売元:千値練
- 販売元:ユニオンクリエイティブ
- 価格:35,200円(税込)
- 2022年12月発売予定
- 受注期間:2022年6月15日(水)まで
DATA
RIOBOT 変形合体 R-GUNパワード
- 塗装済完成品アクションフィギュア
- 素材:ABS・PVC・PP・POM・DIECAST
- サイズ:全高約155mm、メタルジェノサイダーモード時全長約400mm
- 付属品:本体、プラスパーツ、ツイン・マグナライフル、ビームカタールソード、スラッシュ・ブーメラン、拳、開き手、台座
- 設計:T-REX
- フィニッシャー:早川洋司(千値練)
- 発売元:千値練
- 販売元:千値練ストア
- 価格:19,800円(税込・送料別)
- 2022年10月発売予定
- 受注期間:2022年6月7日(火)まで
※「RIOBOT 変形合体 R-GUNパワード」は千値練ストア限定品です。
ロボット市場をザワつかせたい
――そもそもの話で恐縮なのですが、「RIOBOT」シリーズ立ち上げのきっかけを教えてください。
額賀:弊社は現在13期目なのですが、RIOBOTシリーズを立ち上げたのは創業間もないころ。初期にリリースした「RIOBOT 天元突破グレンラガン」がちょうど10年前になります。
創業当初の頃はまだロボットに力を入れている会社さんが少なくて、“ホビー業界は美少女フィギュア全盛”みたいな状況がありました。ロボットは固定費が結構かかる割に、なかなか値付けが難しいというのもあり、そういう点でも各社さんやっていなかったのかな、と。
でも僕らはロボット系が好きだったので、やっぱりロボット、メカ物をやりたい。そんな気持ちからRIOBOTシリーズを立ち上げたんです。RIOBOT(ライオボット)は造語ですが、後半の“BOTはもちろん“ROBOT(ロボット)”のBOTで、前半の“RIO”は“RIOT(ライアット)”(=混乱させる)からきています。「ロボット市場をざわつかせたい!」って思いが込められています。
目指すはアニメで描かれたど真ん中の姿
――今回発売される「グレンラガン」はシリーズ初期にも立体化されましたよね。大胆なアレンジがすごく印象に残っています。
額賀:「千値練はアレンジがあってこそだよね」みたいなことを言われたりもするんですけど(笑)、実はRIOBOTシリーズって、全てをアレンジするシリーズとしては捉えていなくて、その時々で差別化を図るためにはどうしたらいいのかを考えて(アレンジを)はじめたんです。もちろん版権元さまのご理解がいただけないとデザインリニューアルはできませんから、許諾いただける範囲内でやらせていただいています。
そうして差別化を図るために独自の解釈でデザインリニューアルをしてきたんですが、昨今は同じような手法をとる他の会社さんも多くなってきました。そこで今回の「RIOBOT 変形合体グレンラガン」は、「プレーンなデザインでもこんなに格好いいものをつくれるんだぞ!」というのを示せればと思って開発したんです。
――電ホビでもその第1報を掲載させていただきましたが、その時は「ラガン」のシルエットが大きく描かれていたので、まさか合体変形でくるとは思っていませんでした(笑)。
額賀:「ラガン」でデカいのを出すの!? と勘違いしてもらえたらいいなあ……と思っていたので、そう言っていただけると嬉しいですね(笑)。今回のラガンは小さいですけど、手足が可動しますし劇中同様の収納もできます。シモンもちゃんと座れるんですよ。可愛いですよね。
『天元突破グレンラガン』はロボットアニメの中でも特に好きな作品で、「作品の持つ熱量、作画の勢いみたいなものを立体で再現したい」というのが開発のテーマとしてありました。アレンジ版はすでにやっているので、今回はよりアニメ寄りのど真ん中のところを狙い、変形合体を実現したんです。
――シモンやカミナのフィギュアをはじめ、豊富なパーツはうれしいですね。
額賀:アニメの映像をできる限り再現できるようにしたかったので、ドリルや武器はかなり多く用意しました。劇中でラガンが飛んでいるシーンを再現できるよう、スタンドも用意しています。
あと、シモンやカミナのフィギュアは、このテストショットのような透明で最初は考えていたんですけれど、どうしても色を載せたくなっちゃったので、製品版は色がついています。工場からは「値段が上がるぞ」って怒られちゃいましたけれど(苦笑)。
――手にすると見た目以上にズッシリとくる重量感で、驚きました。
額賀:今回の「RIOBOT 変形合体グレンラガン」は、ダイキャストを使用している部分がとても多いんですよ。これは一緒に仕事している中国工場のスタッフのアイデアと尽力のおかげなんですが、外から見えるグレーの部分以外にも、内部構造で結構な量が使われています。僕ら日本人は重さをあまり重要視しませんが、海外だと大きなフックになるそうなんです。
――ギミックやシルエットだけでなく、製品の売りや工業製品としての質を同時に満たす物づくりというのは大変ですね。
額賀:その点でいうと1つ強みがあって。中国工場(香港)のスタッフがいるんですが、彼らもグレンラガンが大好きで積極的にアイデアを出してくれるんです。アニメやゲームの造詣も深く、製造時のアドバイスも的確です。各部署に彼らのような好きな人間というか、プロがいてくれるので、僕が投げたボールが思ったよりすごくなって返ってくるんですよ。そういうボールを受ける時が、この仕事をしてて一番楽しい瞬間ですね。
「SRX」発表の反響で製品化を決断
――「RIOBOT 変形合体 R-GUNパワード」についても教えてください。以前の商品「RIOBOT 変形合体 SRX」の登場がまず驚きでしたが、今回発売される「RIOBOT 変形合体 R-GUNパワード」は、SRXの開発当初から想定されていたものなんですか?
額賀:たしか「SRX」の発表って、弊社10周年イベント(※)の時だったんですよね……。あの時はどうしても展示に間に合わせたくて仮試作の状態だったんですが、「これって本当に合体できるのかな?」って震えながら展示していました。その頃から「R-GUNをやりたい」っていう想いはあったんですけど、そもそも3機合体ができるかどうかという大きな心配があったんですよね(苦笑)。
でも、「SRX」を発表したらものすごい大きな反響をいただいて、「これはイケるかも」って手応えを感じてR-GUNの準備を進めてきました。発表までにだいぶ時間がかかってしまいましたけど。
(※編注)2019年6月15日(土)、16日(日)の2日間、東京・千代田区のアーツ千代田3331で開催された「千値練10周年記念展」のこと。同社10年の歩みが分かる展示や開発中の原型、メカトロウィーゴ展など盛りだくさんの内容で開催された。
――「SRX」と「R-GUNパワード」をRIOBOTで立体化しようと思った理由は?
額賀:弊社で商品化する際に考えるのは、当たり前なんですが「欲しいもの」と「売れるもの」なんですね。「欲しいもの」は各個人の中にあるので人それぞれなんですが、「売れるもの」については、海外で売れるかどうかが大きい。そしてもう1つの基準として、実は「『スーパーロボット大戦』に登場しているか」というのがあります。ゲームで作品を知り、アニメを見てファンになってくれる人たちは確実にいらっしゃいますから。
――「SRX」と「R-GUNパワード」は、ロボットのプラモデルやトイ好きとしても有名な寺田貴信氏(※)も、かなり喜ばれたのでは?
額賀:いつも監修の時間より、その後のおもちゃ談義のほうが時間が長かったりしますが(笑)。寺田さんは世にある全部のおもちゃを買っているんじゃないかと思うくらい造詣が深いので、僕らとしても下手なのは出せないんですよ。でも、逆に寺田さんが驚いてくれれば、ユーザーさんは驚いてくれるだろうな、って。
(※編注)長年にわたり「スーパーロボット大戦」シリーズのプロデューサーを務めてきた寺田貴信氏のこと。現在はフリーランスとして幅広い分野で活躍中。「スーパーロボット大戦」シリーズにはスーパーバイザーとして作品づくりに携わっている。
――最初に見る一番詳しいユーザーですものね。
額賀:僕らが物づくりをしてて感じるのは、携わっている人間が「おお! コレはすごい!!」って驚けると、リリース後にユーザーのみなさんも同じポイントで驚いてくれることなんです。つくっている本人たちがワクワクしないと、(当たり前ですが)ユーザーさんもワクワクできないんですよね。
――その点でいえば、メタルジェノサイダーモードへの変形からの「ハイパー・トロニウム・バスターキャノン」の再現はかなりワクワクします。
額賀:ゲームでは変形プロセスについて詳細に描かれていなかったので、今回は変形前と変形後の形態を優先させてもらい、パーツをバラバラにしての組み替えという形で変形を再現しています。
――このSRXとの組み合わせは、本当に大迫力ですよね。「スパロボ」ファン的には、これが実現できたのなら次の展開にも機体をしてしまいます。
額賀:個人的には「バンプレイオス」とか、やっぱりやってみたいって思っているんですが……、設定だとめちゃくちゃデカいんですよね。合体は無理でも、この横に並べるバンプレイオスはやっぱり欲しいなあ(笑)。
開発会議ってやったことないんですよ
――さきほど商品化の際に検討するのは「欲しいもの」と「売れるもの」とおっしゃっていましたが、これまでのラインナップを振り返ると作品・ロボットのチョイスが絶妙だと感じます。このあたりは社内で相談して決めているんですか?
額賀:実は、よく驚かれるんですけれど、弊社って開発会議みたいなことをやっていないんですね。開発担当者が「これは売れるだろう」、かつ「自分が欲しい」というもので、各自勝負するというか。極端な話、イベント会場で展示されている原型を見て「こんなのやっていたの!?」って驚くこともあります(笑)。
――えぇっ!?
額賀:よく他社さんからも言われるんですよ、「どうやってラインナップ決めているの?」って。不思議に思われているみたいなんですけど、ラインナップはそういうふうに各開発担当が決めているんです。だから急にいっぱいゲッターロボ出ちゃった、みたいことのはあったりして……(笑)。
開発担当者が企画と開発、製造から売り上げまでを通して見ていますが、これは弊社が4人でスタートして、今でも10人程度の小規模な会社だからこそできる強みだと思っています。
――単なる開発担当者ではなく、プロジェクトマネージャーといった感じですね。
額賀:そうですね。……あ! もちろん社長には「これだけ売れると思うので予算を使わせてください」ってプレゼンはしますよ。売れなければ会社に影響を与えちゃいますし、次の作品がつくれなくなってしまいますから。
僕らの開発のスタートは「あのアニメよかったよね」「いい作品だったなあ……つくりたい」って想いからはじまることが多いので、どうしても後発になってしまうんです。作品への想いでライセンスをお願いしに行くので、「今ブームだからやろう!」みたいなのは苦手というか……普通なら飛びついたほうがいいとは思うのですが。
――作品がリブートされるタイミングで「過去商品の再販とかしてもいいのになあ……」と思うことはあります(笑)。
額賀:普通はそう思いますよね。他のメーカーさんからは商売っ気がないってよく言われます(苦笑)。
ただ、先ほども申し上げたとおり小さな会社なので、大規模な工場を構えているわけではありません。工場のキャパ的な問題もあり、再販よりも新しい製品で種まきをしたほうが……って思ってしまうんですね。なので、弊社の場合は再販って本当に珍しいことなんです。ぜひみなさん、予約受付期間中のタイミングで予約をお願いします!
――RIOBOTシリーズがはじまって10年を超えました。この先、どういう展開を考えていますか?
額賀:シリーズをはじめた頃からの状況の移りかわりは感じています。特に感じるのは、先ほども言いましたが海外の比率が大きくなった点です。弊社のつくっているアイテムのうち、キャラクターによっては海外、とくにアジア地域の方が販売数が多くなることも増えました。製造面や円安で販売価格も上がってきた分、日本での販売数の伸びしろは限界に近いのかもしれません。
弊社の場合はどうしても高額トイが多いので、ホビーユーザーの入り口になる低価格帯の提供がなかなかできません。それを解消するためにプラモデルの「プライオボット」シリーズもはじめましたが、そうやって手に取ってもらえる機会を増やすことで、後々もっといいのが欲しいと思ってもらえたら……と考えています。趣味って、そういうふうに突き詰められていくものですからね。
(C)中島かずき・今石洋之・プロジェクト「グレンラガン」
(C) SRWOG PROJECT
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