素組みでガンプラ!【基礎】フィルタリングによる色味の変化 後編
超基本からちょっとしたワザまで、ガンプラを素組みで作る“コツ”を、プロモデラー・桜井信之氏が指南する本コーナー。
ここでは「1/144 HGUC・MS-06F-2ザクⅡF2型(連邦軍仕様)」を使用して、〈フィルタリング〉について紹介します。
〈フィルタリング〉とは、油彩系塗料やエナメル系塗料を使って、模型の上から色の付いたフィルターを被せたように、若干の色味の変化を加える技術です。本来はフル塗装を行った作品に行うテクニックですが、成形色を活かした“かんたん仕上げ”においては、元々のプラスチックの色味を変化させることができるので、むしろ有効な手段といえるでしょう。前編は基本的な〈フィルタリング〉の方法を説明しましたが、後編ではさらにキットに強弱を付けていきます。
前回「Mr.ウエザリングカラー」は油彩塗料に近い性質だと述べましたが、今回はまず、エナメル系塗料との違いを説明します。写真左が「Mr.ウエザリングカラー」エナメル系溶剤で希釈し、右が専用薄め液で希釈したもので〈フィルタリング〉を行ったパーツです。左側は色ムラが強く残っているのがわかります。これは塗料の乾燥速度が違うために起こる現象です。専用うすめ液で希釈塗し塗装したパーツは、乾燥時間が遅いため、ムラなくパーツ全体に色が付いています。これが塗料の“のびが良い”という状態です。
ここからはキットにアクセントを付ける作業です。「Mr.ウエザリングカラー・ステインブラウン」より色味の濃い「グランドブラウン」を使います。
〈フィルタリング〉で使った塗料より、若干濃い目に希釈した「グランドブラウン」を、面相筆で凹モールドやスジ彫り部分・逆エッジになっているところに、ポイントを絞って一滴だけ塗料を置いていきます。これを〈ピンウォシュ〉といいます。
塗料が付きすぎたと思う部分は、専用薄め液を含ませた筆で、塗料の周囲をぼかしながら、余分な塗料を落としていきます。綿棒などで塗料を吹き落しても良いですが、せっかく滲み効果が発生しているので、ボカすように色を調整していく方が良いでしょう。
写真左側は〈フィルタリング〉のみ、右側が〈フィルタリング+ピンウォッシュ〉を行ったパーツです。色味の変化に加え、各モールドに一段暗い色が加わることで、よりメリハリが付いているのがわかります。
肩アーマーのように明確な凸凹やスジ彫りがない部分にも、「グランドブラウン」を使って強弱を付けていきます。緩やかな三次曲面で構成されたパーツこそ、〈フィルタリング+ピンウォッシュ〉を用いて、その形状を際立ててやると、完成後の見栄えが変わってきます。
これで完成です。通常のザクとは異なり、連邦軍仕様のF2型ザクは白に近い色味なので、〈フィルタリング〉で色味をシフトさせ、〈ピンウォッシュ〉でアクセントを付けると、単調にならずメリハリの効いた仕上がりとなります。
最後に「Mr.ウエザリングカラー・グレイッシュブラウン」と「サンディウォッシュ」を使って、脚周りにウェザリングを施します。ザクのソール部分はダークグレーの成形色のため、明るい色でのウェザリングは効果的です。
「Mr.ウエザリングカラー」を筆で点打ちし、塗料が乾く前に、専用薄め液を含ませた筆を縦方向に動かし、塗料をなじませていきます。単調にならないように「グレイッシュブラウン」「サンディウォッシュ」を適度に使い分け脚周りを汚していきます。
完成写真はコチラ!
これで完成です。前編でも述べたとおり、〈フィルタリング〉〈ウォッシング〉〈スミ入れ〉は、使用する塗料の種類は同じで、大切なのは“希釈率と目的”です。同じ塗料・材料を使っても効果は目的によって変わってきます。やみくもに油彩塗料やエナメルと量で色を加えていくのではなく、“完成までの道筋”を考え、効果的な色変化を加えていってください。
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DATA
1/144 HGUC・MS-06F-2ザクⅡF2型(連邦軍仕様)
- 1/144スケールプラスチックキット
- 価格:1,620円(税込)
- 発売元:バンダイホビー事業部
関連情報
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