素組みでガンプラ!シリコーンバリアーを使ったチッピング表現【前編】
超基本からちょっとしたワザまで、ガンプラを素組みで作る“コツ”を、プロモデラー・桜井信之氏が指南する本コーナー。
今回は「MG ザクII F2型」を使って、シリコーンバリアーを用いたチッピング法を紹介します。
F2型ザクIIと言えば、ジオン軍オリジナルのグリーンの機体カラーと、連邦軍に鹵獲されて塗り直されたセールカラー、加えてキンバライト基地所属のサンドカラーなどさまざまなバリエーションが存在します。今回はジオン・オリジナルカラーのキットを使って、キンバライト基地所属のツートンカラー版を製作します。
上半身だけ塗り直してもおもしろくないので、今回はシリコーンバリアーを使って、上塗りしたデザートカラーが剥がれ、オリジナルのジオングリーンが所々露出した塗装を施してみます。今回使用したのはもっとも入手しやすいGSIクレオス「Mr.シリコーンバリアー」。
シリコーンバリアーはもともと、シリコーン&レジンでの複製作業の際に使用する商品。シリコーンゴムで型を作るとき、シリコーンゴムの接着防止に使用します。今回はこれを塗装前に下地剤としてキットに塗っていきます。塗装を剥がしたいと構想している箇所に、筆で薄く塗布。溶剤などで希釈せず、瓶に入った状態のシリコーンバリアーをそのまま塗っていきましょう。
もし機材を持っていたら、エアブラシで全体に薄く吹きつけるのがベスト。写真はGSIクレオスの吸い上げ式のエアブラシと、簡易吹き付け塗装に使うガイアノーツのエージーペインターです。繊細な細吹きなどを行うわけではないので、簡易吹き付け器具でも充分。もちろん筆で塗布しても問題ありません。
シリコーンバリアーは比較的短時間で乾燥します。乾燥後はつやが消え、塗布した場所が分かりにくい感じになります。シリコーンバリアーが乾燥したら、Mr.カラースプレーの「ダークイエロー」を全体に吹き付け。水溶性アクリル塗料ではなく、油性アクリル(通称・ラッカー系)の塗料で問題ありません。
ダークイエローを全体に吹いた状態。関節などグレーの成形色を残したい場所は、装甲パーツを外した状態で塗装するといいでしょう。コクピット周辺のダークグレー部に関しては、キンバライト基地所属の機体はこの部分も含めて機体と同色に塗られているので、注意して塗り分けましょう。
ちなみに今回製作する機体は、両脚に関してはジオン・オリジナルのグリーンで塗装します。これはいわゆる“共食い整備”で、カラーリングがバラバラの機体が存在するという設定のためです。上塗り塗装が乾燥したら、いよいよ剥がしの工程へ。
このような副資材を使用したチッピング法には、頭髪用のハードスプレーを使用した方法も存在。ただしこの方法の場合、上塗りに使う塗料は水溶性アクリル塗料を使用するので注意してください。ラッカー系を上塗りした場合、塗料が剥がれなくなるので必ず水溶性アクリル塗料を使用してください(厳密にはラッカー系でも剥がすことはできますが、コツが必要なので原則としてアクリル塗料の使用をおすすめします)。この技法に関しては、また別の機会に紹介したいと考えています。
塗装を剥がすのに使用するのは先端が尖ったツール。とはいえスジ彫り用ニードルやデザインナイフなどを使用すると、パーツそのものを傷つけてしまうので、材質としては柔らかいものを使用しましょう。爪楊枝などがおすすめですが、より繊細な剥がしを行うのであれば、接着剤の精密塗布に使用する「Mr.グルー・アプリケーター」がおすすめです。
先端が尖ったツールを使用して、上塗りしたダークイエローを剥がしていきます。最初に塗ったシリコーンバリアーが作用して、簡単にパリパリと剥がせます。
各装甲パーツのエッジ部分や、装甲が擦れて塗料が剥がれそうなところを考えて剥がしていきましょう。剥がしすぎも汚くなりますが、剥がしが少ないとおもしろ味がありません。今回は作例なのでわかりやすいようにハードに剥がしてみます。もっとも注意すべき点は、「おもしろくなって剥がしすぎないようにすること」です(笑)。
上半身の剥がし工程が終わったところです。腕や頭部のライトグリーン、胴体のダークグリーン、胸部のダークグレーがそれぞれエッジから顔を出し、色の情報量が増えてとても効果的。
脚部のミサイルポッドも同様のチッピングを施します。このとき注意するのは、ミサイルの弾体にはチッピングを施さないこと。基本的にミサイル自体は発射してしまうものなので、上塗りもダメージによる塗装ハゲという現象は起こらないからです。このような些細なことの積み重ねがリアリティを生み出すので、いろいろと想像しながらチッピングを楽しみましょう。
最後に、さらに深いダメージを受けたと思われる場所にはシルバーをタッチするとよいでしょう。これは上塗りダークイエロー→オリジナルのグリーン→金属のシルバーと段階的に塗料の剥がれを表現するためです。このポイント塗装を加えることで、地層のように塗り重ねられた塗装膜の層を表現可能。
シリコーンバリアーを使った基本的なチッピング作業はこれで終了です。次回はさらにウェザリングを重ねてリアリティを増すための塗装を行っていきます。
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