素組みでガンプラ!成形色を活かしたフィニッシュ~上手な合わせ目の消し方~【前編】
超基本からちょっとしたワザまで、ガンプラを素組みで作る“コツ”を、プロモデラー・桜井信之氏が指南する本コーナー。
今回は合わせ目消しについて考えていきましょう。ランナーからのパーツカット、ゲートの削り方、パーティングラインやヒケの処理。これらがマスターできたら、次は難関とも言える合わせ目消しです。
前回は成形色の淡い「ONE YEAR WAR 0079版」のゲルググを使いましたが、それには理由があります。淡い成形色キットのほうが、合わせ目の線を見えにくくすることができるからです。加えて合わせ目の線を見えにくくするには接着剤の選び方も重要な要素に。今回はこれらを実験・検証し、できるかぎり合わせ目の線が見えなくなる工作法を探っていきましょう。
これは「MG シャア専用ゲルググ Ver.2.0」。「ONE YEAR WAR 0079版」とはニュアンスが異なりますが、こちらも比較的色味が淡いです。マスターグレードもVer.2.0まで発展すると、ほとんど合わせ目処理を必要としないパーツ分割がされています。
そしてこちらが「MG シャア専用ザク Ver.1.0」です。ゲルググと比べるととても鮮やかなシャア・ピンクで成形されています。僕のような1st世代にはとても懐かしい成形色です。しかしこの鮮やかな成形色が、合わせ目消しに大きく影響してきます。
「MG シャア専用ゲルググ Ver.1.0」も、「MG シャア専用ザク Ver.1.0」と同じような色で成形されているのですが、今回入手できませんでした。しかしザクを選んだ理由はそれだけではありません。目立つ位置に合わせ目があり実験にピッタリだったからです。ザクのモモですが、これはきちんと接着して合わせ目の段差も隙間もなく削った状態ですので、このあと塗装すれば合わせ目は完全に見えなくなります。
しかし今回は成形色を活かしたフィニッシュで基本色はプラそのものの色を利用。これだけはっきりと合わせ目のラインが見えてしまっていては、次のステップに進んでもクオリティの高い完成品は望めません。
これは成形色の“濃い・淡い”が影響しているだけでしょうか? ピンク(赤系)ということも影響している可能性はないのでしょうか? ザクには成形色の異なるキットが存在するので、同じMG Ver.1.0の量産型ザクで見てみましょう。左は「通常版」、右は「ONE YEAR WAR 0079版」です。グリーンの成形色ではどうなるか検証してみましょう。
まずはランナー状態で比べてみます。ゲルググと同じように「ONE YEAR WAR 0079版」のほうが淡い色で成形。手足のグリーンだけでなく、ボディのダークグリーンにも色の違いが確認できます。
ソールやコクピットハッチなどダークグレーのパーツも、関節やフレームのライトグレーのパーツも色味に変化があります。とくにダークグレーのパーツは色の濃淡だけでなく、「ONE YEAR WAR 0079版」は青味の入ったグレーであることがわかります。
綺麗に合わせ目が消えるかどうかの実験には、不要パーツやランナーのタグ部分を使うと便利です。これは両方のキットのタグを2枚張り合わせて、合わせ目消しの作業をしたもの。「ONE YEAR WAR 0079版」は綺麗に合わせ目が消えているのに対し、通常カラーのキットは合わせ目に白っぽいラインが見えています。
実際に両方のキットを組み立ててみました。モモ正面の合わせ目を見ると、やはり通常カラーのほうはランナータグでの実験と同じように、白い線が残っています。やはり成形色の濃さも合わせ目消しに影響があるようです。
成形色を活かした製作の場合、いくら段差が消えていても接着ラインが見えてしまっていては興ざめしてしまいます。しかし使用する接着剤の選択次第で、この現象を軽減可能。写真は「流し込み式の接着剤」と「通常の接着剤」です。通常の接着剤は接着に必要な溶剤分に加え、透明の樹脂が混入されているので樹脂入り接着剤と呼ばれることもあります。
これは「FG 量産型ザク」のモモパーツ。左は流し込み式の接着剤、右は通常の接着剤を使用し合わせ目消しをしたものです。通常接着剤を使ったほうは綺麗に合わせ目線が消えているのに対し、流し込み接着剤を使ったものは合わせ目ラインが残り、さらにシミのような現象が現れています。
これは通称旧キットと呼ばれる「1/100 ザクII ジョニー・ライデン少佐機」の手首パーツです。では真紅のプラスチックで成形されたこのキットで実験をしてみます。
左右のパーツを合わせて、3~4回合わせ目付近に流し込み接着剤を塗布してみます。すると、ハケの先端が赤く染まっていきました。これはプラスチックに含まれる赤の染料が染み出しているためです。このような現象はカーモデルなどの塗装時に発生する染料の染み出しと原理は同じです。
これは同じジョニーライデンのザクの肩アーマー、もう1枚は旧ザクのモモパーツです。流し込み接着剤に含まれる溶剤分が塗布した部分に影響し、キチンと接着効果はあるものの、プラスチックの変色を起こしているのです。とくに成形色の濃いキットではこの現象がより強く現れます。
こちらは「1/144 旧ザク」と「1/144 グフ飛行試験型」の肩アーマーです。赤や青だけでなく、緑のプラスチックでも同じ現象が確認できます。それほど色の濃くないグレーのプラスチックでも、やはり白い合わせ目ラインが出てしまいました。
それでは改めて確認しておきましょう。こちらはゲルググマリーネのボディパーツ。こちらはほぼ合わせ目線は見えていません。使用する接着剤でも違いが現れますが、淡い色味のパーツは濃い色のプラスチックより合わせ目ラインが消えやすいことがわかります。
もう1つのポイントは接着剤。これはMSVのゲルググキャノンの限りなく白に近いグレーのパーツです。ゲルググキャノンの上側・モモパーツは通常の接着剤を使用し、下側のスネパーツは流し込み接着剤を使用しています。使用した接着剤で明らかな差が出ています。この2点を認識したうえでキットと接着剤を選べば、合わせ目ラインが目立たないように接着することがある程度は可能ということがわかりました。
それでは改めて、合わせ目を消すための通常接着剤の使い方を確認しておきましょう。パーツの内側から外側に向けてハケを動かし接着剤を塗布します。外側に接着剤が流れ出さないように注意し、貼り付けるパーツの両方に接着剤を塗っていきましょう。
その後パーツを合わせます。両側からギュッとパーツを合わせ、接着剤をはみ出させるように押さえつけます。24時間ほど乾燥させ、接着剤のはみ出し部分が完全に固まったら、はみ出した接着剤をヤスリで削っていきます。
これで終了です。ある程度の条件はありますが、通常の接着剤を使えばほとんど目立たないレベルまで合わせ目ラインを消すことが可能。今回の検証からわかったのは以下の2点です。
- ①接着剤は流し込みタイプより通常接着剤のほうが、合わせ目ラインは見えにくくなる。
- ②成形色が淡いプラスチックのほうが、合わせ目ラインは見えにくくなる。
最初に戻りますが写真のような鮮やかで濃い成形色のキットの場合はどうしたらいいでしょうか? 次回はこの問題についていろいろ実験してみましょう。
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