素組みでガンプラ!成形色を活かしたフィニッシュ~上手な合わせ目の消し方~【後編】

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超基本からちょっとしたワザまで、ガンプラを素組みで作る“コツ”を、プロモデラー・桜井信之氏が指南する本コーナー。

 

今回は、鮮やかで色が濃い成形色の合わせ目の対処方法を考えていきましょう。

 

※バックナンバーもあわせてご覧ください。

写真は「MG シャア専用ザク Ver.1.0」です。本キットはマスターグレード第1弾のため、脚正面や腕の側面部分などにパーツの合わせ目が存在します。このような設計に加え、成形色の色が濃いキットの場合は、接着剤の選択だけでは合わせ目のラインを見えなくすることは困難です。ではどうするのがいいでしょうか。

 

まずは「HG シャア専用ゲルググ」の肩アーマーで実験。成形色は鮮やかで濃いピンクが使用されており、前後2分割の構造で、この合わせ目を処理する必要があります。

 

用意するのは流し込み接着剤と製作するキットのランナーです。ランナーは長さ2~3ミリくらいにカットします。

 

流し込み接着剤をスペアボトルに少量移します。下から5ミリ程度移せば十分です。この中にカットしたランナーを投入します。

 

この状態で24時間ほど放置すると、ランナーが溶けてランナーと同色の接着剤を作れます。流し込み接着剤には樹脂が入っていないので、ランナーを溶かしこむことでシャアピンクの樹脂が入った通常タイプの接着剤と同様の物ができあがります(厳密には同様の物でありません)。

 

この接着剤を筆でパーツに塗布して使用します。使い方は前回紹介した通常接着剤と同じ要領で、接着する両側のパーツに接着剤を塗り、パーツを貼り合わせます。

 

貼り合わせ時にはみ出した接着剤は完全にパーツの成形色と同じです。この状態で十分に乾燥させます。このとき注意するのは、通常よりも長く乾燥時間を取ること。接着剤にランナーを入れており本来の接着性能が下がっているので、3倍程度放置してゆっくりと接着剤を乾燥させ、固める必要があります。

 

十分に乾燥したら通常と同じようにヤスリがけをします。徐々に番手を細かくして、上の画像は最終的に1000番まで磨いた状態です。この方法を用いることで、色の濃い成形色キットの合わせ目ラインを消すことに成功しました。

 

合わせ目ラインはほぼ見えないレベルまで消せましたが、今度はむしろゲート痕が見えています。しかしこれは射出成型の原理上、どうすることもできない現象です。「これでは意味がない」と考えるより、「ここまで消えたのだから、あとはウェザリングなどの後処理塗装で何とかしよう」と前向きに考えましょう。

 

次はゲートがえぐれてしまうなど、パーツの一部が欠損した場合を考えてみましょう。どれだけ丁寧にゲート処理を行っても、購入後の持ち帰り時に破損させてしまうことなどもあるでしょう。このカラー接着剤をパテのように使うことができるのでしょうか?

 

これはボディに使われているワインレッドのランナーを流し込み接着剤で溶かしたものです。これを爪楊枝や虫ピンなど先端が鋭い物を使って、欠損部に充填します。

 

やはり3日ほどかけてじっくり固めたあと、ヤスリで整えていきます。周囲の成形色と完全に同化は無理でしたが、グレーの接着剤などを使うよりは自然な感じに修復できました。先ほどのゲート痕と同じレベルなので、ここからは後処理塗装でレタッチしていきましょう。

 

自作のカラー接着剤を使用して完成した「HG シャア専用ゲルググ」です。写真はツヤ消しを全体にスプレーして調子を整えた状態。肩アーマーだけでなく、上腕・前腕・ボディ側面など合わせ目が存在する箇所は、このカラー接着剤で接着、合わせ目処理をしています。

 

では最後に冒頭から提示している「MG シャア専用ザク Ver.1.0」で実験してみましょう。プラスチックの色味は似ていますが、ニッパーでカットしたりヤスリで削った感覚は、「HG ゲルググ」のプラスチックより硬質な感じがします。同じくランナーを使ってカラー接着剤を作成。

 

ここで不思議なことが起こりました。流し込み接着剤にランナーを溶かしてみると、成形色より淡くなってしまいました。理由はわかりませんが、見た目の成形色はほとんど同じでも、使用されているプラスチックや染料に違いがあるのでしょう。

 

理論で解明できないのであれば、実際に作業をする前にテストしてみるしかありません。ランナータグを使って接着、合わせ目消し実験を行います。上は先ほどの「HG ゲルググ」、下は「MG ザク」のランナーで作ったカラー接着剤を使用しました。しかしランナータグにカラー接着剤を塗布しただけで、その色味の違いがわかります。実際に削ってみるとピンクのラインが残ってしまいます。

 

不要パーツなどで検証するのもとても有効な手段です。これはスネ前方のスラスターに使うパーツですが、S型ザクには不要となるパーツ。「FG シャア専用ザク」のランナーで作ったカラー接着剤で、見事に合わせ目ラインが消えました。

 

「FG シャア専用ザク」のランナーを溶かしたカラー接着剤を使い、すべての合わせ目を接着します。同時に隙間ができるパーツにもこのカラー接着剤をパテのように盛り付けてみます。頭部の羽飾りは前方部分を薄く削ると隙間が出てしまいます。また右肩のシールドには段差が発生するので、ここにもカラー接着剤をパテ代わりに塗布します。

 

さて、3日程じっくりカラー接着剤を乾燥させて(固めて)、合わせ目消しの作業を行いました。結果は写真の通りで、若干の合わせ目は見えますが、最初に製作したもののようにはっきりとした白線ではなく、成形色とほぼ同色のうっすらとした線となっています。羽飾りの隙間やシールドの段差などは合わせ目部分よりは目立ちますが、まったく異なる色のパテなどを使うよりは目立たなくなっています。

 

これまでの実験・検証結果から、そのキット専用のカラー接着剤を作り使用することで、鮮やかで濃い色のプラスチックでもかなりのところまで合わせ目ラインを軽減させられました。ゲルググのところでも書きましたが、「この程度の消え方では意味がない。完全に消えなければダメだ」と考えるより、「ここまで消えたのだから、あとは後処理で何とかしよう」と前向きに考え、次のステップに移るのがいいでしょう。

 

では実際にどんな後処理がいいでしょうか? 加えてその後処理でどのような効果が生まれるでしょうか? 次回も引き続き、このテーマを細かく検証し考えていきたいと思います。

 

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