素組みでガンプラ!成形色を活かしたフィニッシュ~ウェザリングとマーキング~【前編】

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超基本からちょっとしたワザまで、ガンプラを素組みで作る“コツ”を、プロモデラー・桜井信之氏が指南する本コーナー。

 

今回も成形色を活かしたフィニッシュ法の徹底追及です。「MGシャア専用ザク」を使い、前々回は上手に合わせ目を消すためのコツ、前回は実戦編として実際の工作作業をお送りいたしました。今回は第3弾で、後工程としての塗装やデカール作業に進みます。

 

どんなに丁寧な合わせ目処理をしても、消えきらない箇所がどうしても残ってしまいます。そのような部分のカムフラージュもかねた汚し塗装やデカールワークをお送りします。

 

まずはプレシェーディングをかねて、全体にGSIクレオスのウェザリングカラー「ステインブラウン」を薄く塗ります。「MGシャア専用ザク」は近年のシャア専用キットに比べると、ポップで華やかな成形色をしています。そこで全体のトーンを落とす目的で、逆エッジやスジ彫りに塗料が軽く溜まるように塗布していきます。

 

今回はシャアピンクに合わせて「ステインブラウン」を使用していますが、青や緑、グレーなどの成形色の場合はそれぞれに合った色を使うようにします。しかし「ステインブラウン」や「グランドブラウン」などの茶系塗料は比較的どんな成形色にも使用できるので、まずは茶系の塗料が似合うかどうかを考えてから別の色をチョイスするといいでしょう。

 

ボディなどあずき色のパーツは「ステインブラウン」では明るすぎて効果がわかりづらいので、この部分はさらに色味の濃い(暗い)「グランドブラウン」を使います。

 

さて、問題の合わせ目部分。ランナーを溶かした接着剤を使用してどんなに慎重に作業をしても、合わせ目があったところが見えてしてしまう箇所も出ます。そのような場合は、コーションデカールなどを貼って隠すのがもっとも手っ取り早い方法です。

 

スネ中央部分の合わせ目はほとんどわかりませんが、合わせ目が目立つところだけデカールを貼っていると強引にデカールで隠している感じが出てしまいます。なので左右で対になる部分や、脚の延長線上などデザイン的に統一感を生み出す部分にもデカールを貼っておきましょう。もともとマーキングは機能的に必要だと思う部分に存在するべきですが、デザイン的な“リズム感”を大切にすることも重要。モモパーツの下端に合わせてスネパーツの下端にもデカールを貼ると統一感が生まれます。

 

MGシリーズには「ガンダムデカール」というマーキングシールが入っています。これはドライデカールという転写式のもので、僕のような古い世代には“インスタントレタリング(インレタ)”という名前でおなじみのアイテム。まず必要部分を切り取り、作業中にズレないようテープなどで固定します。

 

透明台氏の上から先端が硬いもので擦り、模型表面にマークを転写します。先端が丸く回転するボールペンを使用すると、もっとも効果的に転写作業ができます。台紙の上からマーキングの色が変わり転写されたことがわかるので、台紙を静かに剥がします。

 

これで終了です。水転写デカールと違い、ニスがまったくないのでとても清潔にマーキング作業ができます。余談ですが今回転写したキルマーク(撃墜マーク)ですが、シャアがザクに乗っていた時点ではまだ連邦軍はモビルスーツの開発に成功していません。そのためキルマークは艦船(おそらくマゼラン級戦艦)のみになっています。キルマークが5つということで、その後伝説として知られるルウム戦役での戦果と考えられます。

 

各種マーキングが終了した状態です。この時点で保護層を作るために、ツヤ消しクリアーを吹いておきましょう。保護層を作るだけでなく、模型とマーキングのツヤを統一できます。

 

ツヤ消しが乾燥したら、ウォッシングとスミ入れをかねてエナメル系塗料を塗ります。今回使用したのはウェザリングカラーの「マルチグレー」。グレー系でのウォッシングはあまり聞かないと思いますが、僕は赤系キットのウォッシングには頻繁に使用しています。全体に「マルチグレー」を塗ったあと、溶剤を含ませたティッシュペーパーで大雑把にふき取ります。

 

そのあと、溶剤を含ませた筆で強弱をつけるように、残った溶剤を溶かすように調整していきます。ティッシュなどでスジが残るようにふき取るのも効果的です。

 

スジ彫りや逆エッジ部分などは筆で塗料を乗せてから、ティッシュなどでスジが残るようにふき取るのも効果的。またマーキングが鮮やかな色味のままでは浮いて見えてしまうので、この部分にもウォッシングを施してピンクの成形色に色味をなじませるようにしましょう。

 

全体のマーキングに対して、キルマークは機体の運用後に描き足していくものです。そのため、汚れ方がほかと異なっているのが普通です。先ほど貼ったキルマークはウォッシングを軽めにして、汚れの違いを再現するといいでしょう。スケールモデルではよく用いられる手法です。

 

動力パイプは、MGシリーズでは一節ずつ繋げていく処理がされています。作業は大変ですがゲート処理を丁寧に行えば、非常にリアルな動力パイプを再現可能。ゲート痕の向きをそろえて接着し、回転しないように固定しておくとより美しく仕上げられます。

 

脚部やランドセルのバーニア関係も、成形色を活かして処理していきます。ライトグレーで成形されているので、茶系でウォッシングするだけで雰囲気のいい色味に仕上げられます。

 

これで基本的な後処理塗装は完了です。ウェザリング控えめが好みの人はこの時点で完成でもいいでしょう。ウォッシングとマーキングだけでも、消えきらなかった合わせ目やゲート痕をかなり見えにくくすることが可能です。しかしパーツの先端など、マーキングが不自然になる部分のゲート痕などは隠し切れていないのも事実。それらが気になる人はチッピングなどで隠すしかありません。次回は最終的な汚し塗装で、残ったゲート痕を処理していきましょう。

 

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