円谷プロ作品を彩った楽曲を、オーケストラで生演奏!! 『ウルトラマンシンフォニーコンサート2015』レポート!
文/浅井 渚
『ウルトラマンシンフォニーコンサート』は、2013年の開催に続き、今回が第2回。前回はオーケストラの演奏をバックにボーカルを入れた楽曲も披露されましたが、今回は「オーケストラの演奏をじっくり楽しんでもらいたい」という意図により、アンコール以外の全曲がオーケストラアレンジのインストゥルメンタルとなりました。
指揮は、日本フィルハーモニー交響楽団、ロイヤルチェンバーオーケストラなどでの指揮経験を持つ矢澤定明さん。コンサートマスターは、ウィーン室内管弦楽団などのオーケストラでコンサートマスターを務める岩村聡弘さん。演奏は、今回のコンサートのために新しく結成された楽団・ウルトラマンシンフォニーオーケストラ。編曲を担当したのは、『ウルトラマンサーガ』などの音楽を担当した原文雄さんと、2008年にリリースされた『ウルトラマン・オン・ブラス』でも編曲を担当した福田洋介さん、というウルトラマンシリーズの楽曲をよく知るお二人。
出演は『ウルトラマン』の科学特捜隊の紅一点、フジ・アキコ隊員役などでファンにはおなじみの桜井浩子さん。明るいトークで会場を盛り上げてくれました。
そのほか、ゲストとして、最新シリーズである『ウルトラマンX』でメイン監督を務めている田口清隆さん、『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』などで楽曲を担当された冬木透さん、『ウルトラマン』など数多くのウルトラマンシリーズでメガフォンを取っている飯島敏宏監督、『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のマドンナ・友里アンヌ隊員を演じたひし美ゆり子さんが登壇しました。
コンサートは2部構成となっており、1部はまず、誰もが一度は耳にしたことがある永遠のヒーローソング、「ウルトラマンの歌」と「ウルトラセブンの歌」からスタート。原曲がオーケストラに準じた編成で作られていることもあり、オーケストラの厚みある音にもぴったりマッチしていました。
続いて、「円谷プロ特撮メドレー」と題し、円谷プロダクションが手がけた様々な名作のテーマ曲をメドレーで演奏。『ウルトラQ』メインテーマから始まり、「快獣ブースカ」、『怪奇大作戦』より「メインタイトル」(※OPENING-A)と「恐怖の町」、「ミラーマンの歌」、「ファイヤーマン」、「ジャンボーグA」、『マイティジャック』より「MJの歌」と「マイティジャック」が演奏されました。
これらは、宮内國郎さん、山本直純さん、玉木宏樹さん、冬木透さん、小林亜星さん、菊池俊輔さん、冨田勲さんといった、多彩な音楽家によって作られた曲。今回は、福田さんのアレンジによって、バラエティ豊かな楽曲にも統一感が生まれ、会場に映し出された各作品の名場面と合わせて楽しめるメドレーとなっていました。
今回のコンサートにはちびっ子の姿もたくさん見かけられましたが、子どもたちも大好きな新しい世代のウルトラヒーローたちのテーマ曲を集めた「新世代ウルトラヒーローメドレー」が、第1部の最後を飾りました。
まず、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』で使用された、川井憲次さん作曲の「ウルトラマンゼロのテーマ」。今回のアレンジャーである原さんが原曲の編曲も担当していますが、ここで演奏されたのは、原さんがさらに改訂したという最新バージョン。ストリングスの旋律が映える曲だけあって、オーケストラでの生演奏はまさに感涙モノの美しさでした。
続いて、『ウルトラマンギンガ』より「ウルトラマンギンガのテーマ」。元々はボーカル曲ですが、今回はインストでの演奏。原曲で印象的なのが井上裕治さんによるギターパートですが、今回の編曲では、ギターのインパクトに見合う存在感を持つ楽器として、トランペットが選ばれたそう。
最後は、現在好評放送中の『ウルトラマンX』より、主題歌の「ウルトラマンX」。劇中で使われているインスト曲「ウルトラマンXのテーマ」とは異なり、オーケストラらしく金管楽器や弦楽器が全面に効いた編曲で、耳なじみのある劇伴とはまた違った印象の好アレンジでした!
20分間の休憩をはさみ、第2部は昭和歴代防衛チームのテーマ曲を集めた「特捜隊メドレー」から再開!
『ウルトラマン』の「大怪獣出現」~「科特隊のテーマ」、『ウルトラセブン』の「ウルトラ警備隊の歌」、『帰ってきたウルトラマン』より「MATのテーマ」、『ウルトラマンA』の「TACの歌」、『ウルトラマンタロウ』より「ZATのテーマ」、『ウルトラマンレオ』の「MACのテーマ」、そして『ウルトラマン80』の「ワンダバUGM」と続きます。
ウルトラの防衛チームといえば、印象的なのは、楽曲のタイトルにも使われている“ワンダバ”と呼ばれる男声コーラス。冬木透さんによる「MATのテーマ」で初めて使われたこのコーラスですが、今では防衛チームの代名詞ともなっている言葉。今回のコンサートは完全ボーカル抜き(コーラスもなし!)なので、このワンダバ部分も楽器による演奏で再現されました。原曲でもトランペットや弦楽器、木琴などで同じ旋律を奏でているそうですが、印象に残ってしまうのはやはり人間の声なのだとか。今回のコンサートでは、この部分の演奏をじっくり聴くことができました。
そして、今回はこれを楽しみに来場された方も多いのでは……という、お待ちかねの「昭和ウルトラマン主題歌メドレー」と、「平成ウルトラマン主題歌メドレー」!
昭和メドレーでは、「帰ってきたウルトラマン」、「ウルトラマンA」、「ウルトラマンタロウ」、「ウルトラマンレオ」、「ザ☆ウルトラマン」、「ウルトラマン80」を演奏。原曲の持つイメージを崩すことなく、オーケストラによる雄大さが加わったすばらしいメドレーに、会場のファンも聴き入っていました。
平成メドレーは『ウルトラマンティガ』の「TAKE ME HIGHER」からスタート。続いて「ウルトラマンダイナ」、「ウルトラマンガイア!」、『ウルトラマンコスモス』の「Spirit」、『ウルトラマンネクサス』の「英雄」、「ウルトラマンマックス」、「ウルトラマンメビウス」。
昭和のシリーズとは違って、シンセなどが多く使われるようになった平成シリーズの楽曲。オーケストラバージョンは予想がつきませんでしたが、原さん渾身のアレンジによってオーケストラ曲として楽しめるメドレーとなっていました。
中でも「英雄」は、シンプルなバンドサウンドによる原曲とは全く違った雰囲気で、原さんもアレンジに苦心したそうですが、ストリングスが奏でる美しいメロディラインは、原曲の新たな良さを気付かせてくれる良アレンジとなっていました。
逆に「ウルトラマンメビウス」は、原さんも原曲の完成度を絶賛しており、アレンジもスムーズに行えたそう。伸びやかなメロディや深みあるコーラスは、オーケストラでの演奏に非常に合っており、聴いているだけで……あれ、おかしいな、目から汗が…?
第2部の最後は、スクリーンでの映像と一緒に楽しむ「ウルトラマン交響曲」。
演奏時間約15分という大作で、『ウルトラマン』で使用された劇伴(一部『ウルトラQ』からの流用曲含む)を、スクリーンに映し出される映像に合わせて演奏。「平和な町に突然怪獣が現れ、科特隊が出動し、ピンチに陥ったところにウルトラマンが登場!怪獣との激戦を制し、空の彼方へ去っていく」……という、ウルトラマンシリーズ定番の流れを、オーケストラの演奏とともに再現する、実にぜいたくな試み!
演奏された楽曲は「イントロダクション・ウルトラゾーンからの響き(『Q』M-1t2+タイトルt6、タイトルB)~平和の情景(M-22)~大怪獣現る!(K-1、B-1、L-8)~科特隊、出動!(科特隊のテーマ)、激戦(A-1、A-2、M-4t2、戦い/Mナンバー不詳、G1、M2)~ウルトラマン登場!(M-5)、勝利そして帰還(A-5、E-2、M-118)、エピローグ(最終回ED/Mナンバー不詳)。サウンドトラックをお持ちの方は、この順で聴いてみるのもいいかも。
そしてコンサートの締めくくりとして、「マイ メモリアル ウルトラマンシンフォニー」の時間が設けられ、ファンが自由にステージの撮影&録音することができました。この時間に演奏されたアンコール曲は、コンサートの最初にも演奏された「ウルトラマンの歌」と「ウルトラセブンの歌」!ウルトラマンとウルトラセブンも登場しました。
このとき、コンマスの岩村さんが使用していたのは、今回の会場で「宇宙で1本だけ」として限定販売された“ウルトラヴァイオリン”!
ウルトラマンの故郷であるM78星雲にちなみ、価格は税込78万円。宇宙でたった1台のこのウルトラヴァイオリンとオーケストラによって奏でられた「ウルトラマンの歌」と「ウルトラセブンの歌」を、ゲストの皆さんと会場のファンが一緒に大合唱し、コンサートは大歓声の中で幕を閉じました。
今回演奏された楽曲のほかにも、円谷プロ作品にはまだまだたくさんの名曲があるので、ぜひとも第3回、第4回と続いて欲しいところです!
2016年に50周年を迎えるウルトラマンシリーズを、もっともっと盛り上げて行きましょう!
<関連情報>
ウルトラマンシンフォニーコンサート2015 – 円谷プロダクション
http://m-78.jp/ultraman-symphony/2015/
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