『キャプテン・アース』デザインの現場 柳瀬敬之(その3)
『運用面では意外と考えて設定させてもらいました。』
インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/7/2)
※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年9月号に掲載されています。
―MGFとキルトガングは劇中ではリンクした存在ですが、デザイン作業でも浅井(真紀)さんと相互にやりとりがありましたか?
柳瀬:実は一切しなかったんです。イメージは全て五十嵐監督の中にありましたから。
コヤマ:実際の設定でもMGFとキルトガングって関係ないんですよ。MGFはあくまで軍事用の兵器であって、厳密的には搭乗者のパーソナリティとは関係ない、ユニットシステムなので。ただアマラとモコによって密かに意識転送システムが組み込まれているだけなんです。
柳瀬:デザイン的には搭乗するデザイナーズチャイルドの特性を反映した装備を考えてますけど。バクと爆裂獣なんて本当にそのままのキャラクターでデザインしてました。MGFの性能って、あの世界では誰が決めているんだろう(笑)。
コヤマ:意外とそれは、パックが決めているのかも。
柳瀬:たぶんデザイナーズチャイルドの特性をパックが理解して、それぞれに対して作って提案しているんでしょうね。もともといわゆる、あの機械は軍事用として売り出すというのが基本にあって。だから飛行機タイプもありの、戦車タイプもある。人型だったら長距離タイプ、重爆撃タイプ、射撃タイプ、高機動タイプ、というような振り分けはしている。ほんとうに、こういう兵器があればいいんじゃないか、人型兵器の運用として、こういうバリエーションがあると。
コヤマ:最初に話が戻るんですけど、天狼星を「狼」のシルエットにしてしまうとアマラ専用機でしかなくなるんですよね。よくよく見るとシルエットが狼に見える、というぐらいが美しい落としどころではないかなと。
柳瀬:確かに初期稿では軍事用ロボットじゃないです(笑)。MGFはあくまで兵器であって、基本的にはマクベス・エンタープライゼスという企業の量産機。実際に天狼星や猛攻兎もズラーッと戦場に並んでも違和感がないようにデザインしています。アマラとモコはそれを勝手に使ってるんですね(笑)。
コヤマ:量産機だけどそこだけ意識してもデザイン的な外連味がなくなっちゃいますし、かといってヒーロー性を出し過ぎると使えなくなってしまうという。MGFのストライクゾーンは限られていましたね。天狼星が出た時に、ここら辺が今回の落としどころとしてベストだな、と思いました。
柳瀬:キルトガングとのリンクで言えば、カラーリングだけは合わせています。キルトガングのほうが全然先にデザイン上がってましたから、色だけは合わせられたんですよ。
コヤマ:軍用だと本来はグレーとかオリーブドラブとか地味なカラーになってしまいそうなんですが、それだと映像で見たときに誰が誰だか判らないので(笑)。でもGlobe側と比べると彩度下げたり、調整してもらってます。
―トレーラーによる運搬やコンテナからの出撃シーンなど、MGFは確かにミリタリー要素が強く盛り込まれてますね。
柳瀬:トレーラーのシーンは劇中では短いですが、ちゃんとMGFの大きさを考えて構成されています。天狼星は1台で運ばれてましたが、背部に巨大な飛行ユニットを持つ人外鏡などは1台に納まらないので2台で運搬しています。砲撃型の蛇花火は5台だし、可変型水中戦用の人魚姫は船外に大型格納庫を備えさせないとダメだったしで、運用面では意外と考えて設定させてもらいました。
―クリンナップも手がけられたとか?
柳瀬:エクスパンション・ゲートですね。これは荒牧(伸志)さんの描かれたラフをキレイに整えるだけですから「デザイン」というより、単純な「クリンナップ作業」でしたね。
コヤマ:いやいやいや! それができるってことがスゴイんですよ! クリンナップはラフを読み解く力とセンスが必要なので、デザインというものが何であるか理解していないとできないんです。手が空いてる誰かでやれるようなものではないんです。ラフに描かれた線を見て、それが凹んでいるのか凸なのか、角度がついていて斜めなのか段差なのか、……という構造としてデザイン画を読み解く能力が必要なんです。柳瀬さんはそこを読み取れてなおかつ手も早いのでめちゃくちゃ助かりました。
柳瀬:読み解くと言っても荒牧さんの絵には全部きちんと描いてあるんですよ(笑)。
コヤマ:描いてあるけど(笑)。でもラフを読めるからそう思うだけで、普通そう簡単には拾えないもんですよ(笑)。
(8月25日につづく 3/4)
<関連情報>
その1:『メカをデザインしたら、その格納庫までデザインしたい性分なので。』
その2:『この作品は手描きの持ち味を大事にしていますから、そこにはとても気を使いました。』
その4:『コンテや演出だけでは作れないその世界で違和感のないモノを作る。』
(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS