『キャプテン・アース』デザインの現場 荒牧伸志(その3)
『下書きしちゃダメなんですよ、コクピットは一発書き出来るようにならなきゃ(笑)。』(荒牧伸志)
インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/8/15)
※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年11月号に掲載されています。
―『キャプテン・アース』における宇宙デザインの原型として荒牧さんの画稿があると。
コヤマ:ほかのデザイナーと荒牧さんの決定的に違うな、っていうところは、どういうデザインなのか、というのを決める段階でレイアウトが決まっている。演出家・荒牧伸志として、ここがデザイン的な見所である、絵的にも問題ない、と提案されてるんです。
荒牧:こういうアングルで観てね、というのが大事なんだよね。五十嵐監督が「管制室のシーン同じCGモデルを使ったけど、ラフのようにならないんですよ、どうしたらいいですか?」って言うので、こういう風にアームを曲げないと格好良くならないですよ、と提案したこともあります。
コヤマ:なるほど。それは圧倒的に今までのCGで得られた経験値が大きく作用しているんですね。五十嵐監督が「ここのシーンは後ろから撮りたいんです」ってイメージに対して「じゃあこの壁を下げますか」と荒牧さんが演出を加味されてレイアウト込みでデザイン調整されていたのが印象的でした。
荒牧:……と、いいながらだんだん手癖で描くようになってきて(笑)。コクピットってだいたい一発で描くんですよ。昔から何度も描いていて、前と同じようなコクピットはやっぱり嫌なので、ちょっとずつ変えようとしているんですけどね。
コヤマ:でも、安定できるかたちって大体決まってるんです。椅子やハンドルを変なかたちにすると収まりが悪くなったり、パーツが隠れちゃったり、それっぽく見えなかったり。意外と冒険し辛いところでもある。
荒牧:でも同じものじゃダメ、という。キッチリ描かないといけない。困ったね。
コヤマ:もう漢字の書き取りのようです。
―本当にコクピットは大変なんですね。
コヤマ:前回のインタビューで、僕がコクピットを描きたくなかったっていう話をしまして。今回は斎藤君に、「君には良い仕事があるよ!」って言ってやってもらったんです(笑)。
荒牧:僕はコクピットを描くのは嫌いじゃないんですよ、昔からね。基本好きなので。
―大変とおっしゃるんですが、観ている側としてはコクピットは楽しみな部分です。
コヤマ:ちゃんとパーツをあわせたり、狭まった空間の感じを描いていくのは楽しいんですけど、圧倒的に時間がかかるんですよ。だからずっと下書きで……。
荒牧:下書きしちゃダメなんですよ、コクピットは一発書き出来るようにならなきゃ(笑)。
コヤマ:ていねいに描こうとするからいけない! 今日はいいことを聞いた。コクピットはざっくりと一発書きで(笑)。
―宇宙といえば、各国の無人インパクターもデザインしていますね。
コヤマ:NASAとか、ロシア宇宙局とか、JAXAとか各国の宇宙開発が統合されてGlobeになっている、という設定があるので、その各国の無人インパクターもデザインしていただきました。インパクターの名前は榎戸(洋司)さんが考えていたのですが、各国の果物や野菜が語源にあって。
荒牧:迎撃衛星としてのインパクターのアイデアを出してくださいということで、3、4種類を出していますが、その果物と野菜のイメージからデザインしています。これがニンジン、これがブドウ、みたいな感じで。
コヤマ:こうして各国のインパクターができました。リアルなんだけど、元ネタの形が分かると、たしかにその通りに見えるというのがカッコイイ! って思います。
(11月10日につづく 3/4)
<関連情報>
その1:『自分のやりたい映像をどうやったら作れるか、という実験という意味ではつながっていると言えますね。』
その2:『ちゃんとリアクションしてくれるので、やっていて楽しいんですよ。』
その3:『下書きしちゃダメなんですよ、コクピットは一発書き出来るようにならなきゃ(笑)。』
その4:『何を描いても「こんな面倒臭いものを描かせて、申し訳ない!」という気持ちでデザインやっています。』
(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS