「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その2>
コトブキヤの人気オリジナルコンテンツの『フレームアームズ』より、倉持キョーリュー氏による新たなデザインで構成されたバルチャーの製作をお届けする、製作記事第2回!
軽快な(?)切り口のトークでお贈りした初回が好評だったようで、無事迎えることのできた今回の更新。
第2回は作例完成までの指標決定と、How To記事を、前回と同じくモデラーのちいたわからしを迎えてお送りします。
■モデラー:ちいたわからし……電撃ホビーマガジン2015年7月号ではフレームアームズ・ガール 轟雷の作例も担当した、フレームアームズ大好きモデラー。
■第1回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その1>
編集部:さて、フレームアームズブログではバルチャーの出荷日も発表され、週明けにはキットを手にする方が出てくることかと思います。ゲットした方は、ぜひバルチャーのキットを手元に置きながら、第1回・第2回の記事をご覧くださいね。
それでは、ちいた氏をお呼びする前に、今回のバルチャーをデザインされた倉持キョーリュー氏より、なんと電撃ホビーウェブ宛にコメントをいただきましたのでご紹介いたします!
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はじめまして倉持キョーリューと申します。ちょっと前までフレームアームズのユーザーだった僕がご機会をいただき張り切ってデザインさせていただきました。僕が玩具デザイナー出身ということもあり、とにかく遊べるというコンセプトでデザインが始まりました。
飛行メカに変形するロボと聞くと背中に羽が付いているものが主流ですが、変形というコンセプトをダイレクトに伝えられるビジュアルをということで、シンプルな人型のシルエットからの変形を目指し、足→羽、手→足、頭→尾羽、そんな感じで無駄のない逆算の変形になっています。
顔はキャラクター性の強い二つ目にし、上下逆になった時に顔に見えないデザインをということで、涙が顎でつながっているような形状になっています。
一番苦労したのはカラーリングで、ヒロイズムとミリタリズムが混同しているような配色を目指し、変形時は上限逆になるのでそれぞれ見える面積を赤と青で変えていたりします。
モデラーの方たちには「俺の考えたカッコイイ鳥変形ロボ」をガンガン考えていただけると幸いです。
(バルチャーデザイン:倉持キョーリュー)
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編集部:コメントありがとうございました! やはりデザインの意図を知ると、そのキャラクターにもより愛着が湧いてきますね。……ちいた氏?
ちいた:ゴゴゴゴゴ、プンスカ!
編集部:何で怒ってるんですか。
ちいた:僕に任せてくれたら、直接5時間でも10時間でも直撃インタビューして来ましたのに!
編集部:だから声をかけなかったんですよ……。何十ページ分のインタビューを載せるつもりですか。
ちいた:(泣)。
編集部:そろそろ今回の製作に入っていただきたいわけですが、どういう工作にしていきましょう?
ちいた:前回お話したとおり鳥形態への変形は活かしていきたいので、M.S.G(モデリングサポートグッズ)などを使用して、バルチャーの特徴を強調するようにしたいですね。また、元の姿にも戻せるような仕様で作りたいと思います。
編集部:自由な改造が売りのフレームアームズですが、新製品の紹介なので、基のキットから大きく形を変えるようなのは避けたいところですね。
ちいた:その分、誌面からウェブへと移ったことですし、以前はページの都合で掲載できなかった基礎工作とか、細かい諸注意なども紹介した記事にしたいです。
編集部:ではその辺を踏まえて、素組みのバルチャーから紹介していきましょう。
編集部:これは……前回の画像ですね?
ちいた:どうやら前回はバレなかったようですが、この部分をアップで見てみると……。
編集部:白化してますね。
ちいた:そうなんです。コトブキヤさんに限ったことではないのですが、細かい可動パーツは製品段階でもキチンと処理しないと負荷が強すぎてパーツを破損させてしまう恐れがあります。具体的にどこが原因かというと……。
ちいた:可動部分に設けられたゲート跡の切り残しとか。
ちいた:立ちすぎたエッジで差し込み時の負荷が大きいところで起こりがちです。
編集部:なるほど。生産時に型から外す際にできるヒケによる要因もありますから、製品段階での調整も難しそうなところですね。
ちいた:そんなときはコレ! タタタタン! 「「面取りビット~」」
編集部:お約束の似てないダミ声は無視するとして、えらく年季の入った工具ですね(汗)。これは5ミリ径でしょうか。
※面取りビット 5.0ミリ/771円(税抜)/ハイキューパーツ
ちいた:えぇ、使用頻度が高いのでサビサビではありますが、ちゃんと使えます。綺麗な状態はハイキューパーツさんに丁寧な記事が上がってますのでご覧いただければ。
ハイキューパーツ公式ブログ 面取りビットは穴あけにも使える
http://hiqparts.main.jp/blog/?p=1549
ちいた:ゲートの切り残しはヤスリで丁寧に処理していけば良いのですが、受け側の凹部は面取りビットで処理していきます。
▲削り過ぎると組み合わせが緩くなる・パーツ破損の可能性があるので、注意。
ちいた:こうやって負荷を軽減することで破損のリスクを減らします。塗装しないのであれば、グリスなどを塗布してさらに動きをスムーズにしても良いでしょう。
編集部:なるほど。パーツ組み換えで遊ぶ機会の多いフレームアームズなら、破損させないために必須の工作かもしれませんね。未塗装でも加工箇所が目立たないですし。
ちいた:フレームアームズに限らず、可動させて遊ぶ機会の多いキャラクターモデルでは大事な工作かと思います。なので、フレームアーキテクトにも面取りは必須工作として行っています。
ちいた:今回バルチャーで使用するフレームアーキテクト部分です。股関節部分がバルチャー用の新規パーツになるので、キット封入の組み立て済みの状態から一度パーツをバラす必要があります。
編集部:説明書にも記載はありますが、画像で現物を確認すると把握しやすいですね。
ちいた:ここから、完成後も合わせ目が見える部分を接着処理していきます。
編集部:関節部などはわかりますが、上腕とかあんまり見えない部分も処理してませんか?
ちいた:剣部分の話の続きになりますが、可動部分をしっかり処理したパーツであれば、合わせ目を接着処理をすることで強度が上がるので、完成後も安心して遊ぶために行ってます。
編集部:なるほど。その手間暇かけた工作が、予定していた作例制作スケジュールの遅れにつながっているんですね。いいんですけど。
ちいた:ぐ、ぐぅの音もでない……(汗)。フレームアーキテクトを接着したついでに、外装部分の合わせ目が見える部分も接着しておきます……。
編集部:アレ? 鳥頭のトサカとか付いてないですが接着しちゃっても大丈夫なんですか?
ちいた:はい。左上の襟元のパーツは後ハメ加工が必要そうに見えますが、接着後も下の画像のようにスライドさせていけば大丈夫です。
▲パーツスライドイメージ
編集部:タイトではありますが、組み込み可能なんですね。
ちいた:トサカ部分はクリアパーツのピンを切り取るだけで後ハメできます。
ちいた:特に負荷もかからないので、塗装後に接着しちゃえば良いでしょう。鳥形態で首になるパーツは中央に合わせ目がくるのが気になるので少し加工しています。
ちいた:コレがキットの状態です。
ちいた:スジ彫りを1本増やして片側に寄せることで、いわゆる“プラモっぽい合わせ目”を解消しています。別の所に使用したパテも余っていたので隙間に埋めて強度もアップ!
編集部:なるほど。目立たないところですが、大事な工作ですね。
ちいた:昔のキットって合わせ目とか、後に紹介する押出しピン痕とかが凄く目立つ位置にあったのです。そういった箇所の処理って大分前から確立されているのですが、昨今のキットは各社企業努力やノウハウの蓄積で最初から目立たないようになっていて、製品としてすごく向上しているんです。
だから[バルチャーに必要な工作]というわけではないのですが、今でも模型店に行けば昔のキットも普通に置いてありますし、もし作る方が「ここの処理したい!」って思ったときに、「あぁ、そういえばバルチャーで紹介されてたな」って思い出せる場所があるって大事だと思うんです。
昔の模型誌では各モデラーが毎回のように処理について書いていたのですが、ページの都合だったり諸々で紹介さえされないことも多いですよね? ウェブ掲載となって、ページ数を気にしなくて良い【電撃ホビーウェブだからこそ紹介できること】の一つだと思うんです!! どうですか!? 編集部さん!
編集部:あ、すいません、今日の夕飯何食べるか考えてました。
ちいた:聞けよぉ……(涙)。
ちいた:さて、気を取り直して続きです。腰部の加工をしたついでに、完成後も見えそうな隙間にパテを詰めておきます。
編集部:ちいた氏は作例の時にエポキシパテ(エポパテ)を使うことが多いようですが、ポリエステルパテ(ポリパテ)じゃないのは理由があるんですか?
ちいた:工作的にはどちらでも良いのですがポリパテだと臭いので、匂いの出ないエポパテを多用します。使う分量だけ手軽に切り出して使えるのも理由ですね。
ちいた:微妙に余ったパテで脇の下の突き出しピン跡も消しています。
ちいた:アーキテクトの腹部ですが、分割の関係で片側に合わせ目が出ているので、奥側にも1本追加し左右対象にしています。
編集部:これまた地味な工作が続きますね。
ちいた:(ギロッ!!)
編集部:こ、こういう地味な工作の積み重ねが、誌面でも掲載されていたようなハイクオリティな仕上がりの作例につながっていくわけですよね(汗)。
ちいた:そうですね。では今回の工程を経てできたアーキテクト状態だけ。
編集部:今まで誌面を作ってきた身からすると、作例制作の裏側と言うべき地味な工作の紹介は飽きられないか気になりますね。
ちいた:試行錯誤だから仕方ない部分はありますね~。自分でもどこまで記事にしようか迷いながら撮影してますし。これから反響見ながら色々やっていけばいいんじゃないですかね?
編集部:そうですね、今回は実験的な意図も多分にありますし。さて、そうと決まれば夕飯でも食べながら打合せでもしましょうか! 奢りますよ!
ちいた:編集部さん(感涙)。
編集長:(なんだ、あのコント……。)
というわけで、塗装工程までは至らず!
次回はバルチャー塗装前段階まで進める予定です!!
■次回予告
!?
ちいた氏は、また手間の掛かりそうな危うい工作を始めたようです……。
<DATA>
XFA-CnV バルチャー
■1/100スケールプラスチックキット
■全高:約165ミリ
■価格:3,800円(税抜)
■設計:毛利 重夫
■発売日:2015年8月発売予定
■発売元:コトブキヤ
※コトブキヤショップ限定:XFA-CnV バルチャーをお買い上げごとに、特殊メッキ加工の「エナジーウイングパーツ」をプレゼント(配布期間:バルチャー発売日より、特典がなくなり次第終了)
<関連情報>
アーキテクトマン公式twitter @faman_type001
■第1回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その1>
■第3回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その3>
■第4回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その4>
■第5回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その5>
(C) KOTOBUKIYA