明貴美加氏による「MS少女」の最新作品集「MIKA AKITAKA’s MS少女NOTE」受注締切迫る!制作の裏側に迫るスペシャルインタビュー!【前編】
サンライズが運営するクリエイターの諸作品を公開発表するWEBサイト【矢立文庫】にて、メカニカルデザイナーの明貴美加氏によって2019年より隔週連載されてきた「MIKA AKITAKA’s MS少女NOTE」。これらを総まとめしたイラスト作品集「Mika Akitaka’s MS少女NOTE 0079」の受注締切は2021年6月27日(日)!
明貴美加氏は、言うまでもなく『機動戦士ガンダムZZ』のメインメカニカルデザイナーで、ガンダムシリーズではOVA『0080ポケットの中の戦争』、『0083スターダストメモリー』、雑誌企画『ガンダム・センチネル』などにも参加し、ガーベラ・テトラやG-V(ガンダムMk-V)といった魅力的なMSをデザインされてきました。ガンダム以外ではゲーム『銀河お嬢様伝説ユナ』(92年)の原作・総監督を務めたほか、『機動戦艦ナデシコ』(96年)、『とある科学の超電磁砲』(09年)、『サクラ大戦』シリーズ、テレビ版の『シティーハンター』等々、多数の作品でデザインを手掛けてきています。最近では劇場版『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』への参加も報じられています。今回は、明貴氏のもうひとつの代表作とも言える「MS少女」を主題に「仕事論」ともいうべき話を伺っています。
新しいMSのつもりでデザインを考えていった
●MS少女とMS少女NOTEについて
――現在、ガンダムエース誌(KADOKAWA)での「MSG!
明貴美加(以下明):ありがとうございます。矢立文庫は3年近く連載してきましたが、隔週でWEB連載という新しい取り組みだったのもあって、うれしさもひとしおです。
――もともと矢立文庫で連載を始めたきっかけはなんだったんですか?
明:最初は『ガンダムTHE ORIGIN』のプロデューサーから「矢立文庫でなにかやりませんか?」という話があったことですね。さらに、同じ矢立文庫で連載している『サン娘』のプロデューサーやライツ事業部さんから「明貴さんのMS少女を連載しませんか」と、多方面からお話をいただいたこともあって具体的に進めましょう!となった感じです。
――その時、サンライズ側から「こうしてほしい」という指定はあったんですか?
明:とくになにもないです(笑)。普通のMS少女をやって欲しかったみたいですが、それはガンダムエースもあったので、同じことをやってもなぁ……とは思ったんです。そこで、いままでのように既存のモビルスーツのデザインを少女化するのではなくて、「このMS少女がガンダムなんだ!」というのをコンセプトとして考えました。
――つまり、あのデザインのライフルや盾を持っている「新型ガンダム」をデザインしてからの少女化というわけでなく?
明:そうです。あのMS少女がモビルスーツとして存在する世界ってことです。
――モチーフとしたのは一年戦争というか『機動戦士ガンダム』なんですね。
明:そこはやっぱり「最初」からはじめないと。
――そういう意味では、『ガンダム』の翻案と言えるわけですね。極端な言い方ですけど、SDガンダムやガンダムSEEDにむしろ近いですね。
明:そこまで言うと飛躍してますよ。わりとコンセプトは直感的に思い付いたところもありますし。ただ、新しいMS少女をやりたかった!という一言につきる感じです。
●最初のMS少女
――では歴史の話といいますが、一番最初に明貴先生が描いたMS少女というのは、いつ頃なのでしょうか?
明:『Zガンダム』の放送当時にアニメ雑誌の「ジ・アニメ」で、描き下ろしのセル画を連載をしていたのが最初です。
――その連載の画稿の一部は画集『超音速のMS少女』に掲載されていますね。サイコ・ガンダムMk-IIがパワーローダーになっていたりして、のちにつながるアイデアがたくさん詰め込まれてる感じです。
明:あまりやってることが変わってないだけで(笑)。
――『Zガンダム』というと1985~86年あたりですよね。そもそもMS少女的なイラストというのは、当時からファンアート界隈では存在してたと思いますけど……そういったのは?
明:それ以前での同人誌的なものでは描いたことないんですよ。
――いきなり商業誌だったんですか。資料によると、商業誌で最初に「MS少女」を名乗ったイラストを掲載したのはバンダイから出ていた『模型情報』誌ですよね。これが1982年と言われてます。
明:そう、たしか女性の投稿者さんのドムでした!
――のちに模型情報でイラスト連載がされて、MS少女のガレージキットも作られたそうです。
明:出ていましたねぇ。
――ジ・アニメは長く連載されていたんですよね?
明:『ガンダムZZ』の放送中は続いてたと思います。ありがたいことに付録の下敷きにもしていただいて。
――長期連載ということはやっぱり好評だったんでしょうね。MS少女の初グッズが下敷きというあたりには時代を感じますけど(笑)。その後で、月刊モデルグラフィックス(以下モデグラ)での連載ですか?
明:ちょっと期間があきますね。モデグラは『ガンダム・センチネル』の連載の中でのイラストカットが最初で、途中から1ページの連載企画になったんです。
――読者投稿のMS少女も募集してましたね。出席番号とかついてました。
明:当時、投稿してくれたみなさんが盛り上げてくれた感じです。
●移籍しても変わらないモノ
――ところでジ・アニメでの連載当時は、サンライズに在籍していたんですか?
明:その時は企画会社の伸童舎にいました。『ガンダムZZ』の終盤くらいの時期に『ダーティペア』の劇場版の仕事がきたので、伸童舎を辞めてサンライズの1スタに入ったかたちです。
――『Zガンダム』では伸童舎をはじめ、いろいろなデザイナーさんが参加されていたそうですね。明貴さんもデザインの部分で関わっていたのですね。
明:MS以外の各話メカなどを担当していましたね。その流れで後番組である『ガンダムZZ』の企画時にデザインコンペに出して、メカデザインスタッフとして参加することになりました。
――本編のデザインをしながら、同時にジ・アニメではMS少女のセル画を連載していたわけですか?
明:そうなりますね(笑)。
――そのあとも継続してサンライズに在籍して、『シティーハンター』や『劇場版 ファイブスター物語』などなど、いろいろな作品に参加されてます。
明:『シティーハンター』では普通の自動車や日用品のような小物をたくさん描いたので、すごく勉強になった覚えがありますね。
――サンライズからレッドカンパニー(現レッド・エンタテインメント)に移籍されたのは、そのあとですか?
明:それからもう少し後です。『魔神英雄伝ワタル』と『ワタル2』の企画に参加していたこともあったので。
――そういうご縁もあって、という。
明:そういう感じです。
――レッドに入って、原作・総監督として『銀河お嬢様伝説ユナ』(PCエンジン用ゲーム)を制作された、と。
明:レッドに入って1~2年経ってからですね。92年あたりで制作発表をしたので。
――ユナを制作しながら、MS少女の連載があって、さらに『0083』本編のデザイン作業もされていたんですか?
明:当時は若かったから、寝ないでやっていました。
――モデグラの連載が『Vガンダム』をやったあたりで終わって、書籍(画集・超音速のMS少女)になります。そのあとは角川書店(KADOKAWA)のキャラクターモデル誌から月刊ガンダムエースへと、媒体を変えてMS少女は続いていくわけですが、その中で、描き方やコンセプトを変えたということは?
明:それは特にないです。いわゆるデザインの作法はモデグラ時代から変えたりしてないですし。もちろん、雑誌の企画に合わせた表現にしてますけど。特に、ガンダムエースになってからは、カトキ(ハジメ)先生がプロデュースしていたアクションフィギュア「ガンダムフィックス」と連動することがテーマになったので。
――いわゆるカトキ版モデルをMS少女化するという。
明:そういう要請もあって、マーキングデータを別途作って、プラモデルのデカールみたく貼り込んでいくようになりました。程なくして商品に使用してるマーキングデータをもらえるようになったので、あるものは極力そっちを使っています。
――その技法はデジタルならではですね。
明:デジタル化は『キャラクターモデル』誌の1回目からなので、2000年あたりには移行してました。最初は線画だけシャープペンシルで描いて、取り込んでPCで彩色してました。現在はフルデジタル作画です。
――それ以前のモデグラの時代は、マーカー着彩ですか?
明:当時はコピックでしたね。ビームの表現には部分的にエアブラシを使ったりしてます。アナログだったので、マーキングしようとすると、すごく大変でした。
――やはりデジタルのほうが楽ですか?
明:楽というか、何度もやり直しができるのがデジタルの利点です。さっき言ったマーキングを別で作って貼り込むことができるのもデジタルならではの技術だし、大変だけど楽しい部分って言えます。
――デカール貼りが楽しいというあたり、さすが元モデラーですね。連載も長く続いてますけど、ご自分で昔の絵を見て変わったなとか思ったりしますか?
明:確かに昔の絵は違うなって感じますけど。やっぱり自分の絵ですよ。意識的に描き方や画風を変えたりはして来てないですけど、逆にその都度その都度で変わっているということかもしれないです。とくにカトキメカは情報量が多いし、実物の玩具に合わせるかたちでMS少女をデザインしているので、モチーフに合わせて描く試行錯誤は毎回しています。
●MS少女を描くときに気を付けている部分
――当時から明貴さんのデザインは、モビルスーツのパーツを取り付けた女の子、というよりも着用する衣装・スーツとして考えられてデザインされてましたよね。それこそ、センチネルのZプラス少女(椎名ちゃん)は胸アーマーの裏やインナースーツのブラジャーまでデザインされています。
明:そういう考えは一貫して持ってデザインしてました。モノによってはアーマーの分解方法やロック機構まで考えたり。
――衣装・スーツとしてどうなるか?を考察してデザインされているから、明貴さんのデザインは密度感というか情報量を高く感じるのかもしれません。例えば、同じメカ少女ジャンルで活躍されている島田フミカネさんのデザイン作法は、かなり違いますよね?
明:島田さんは腕や脚が途中からいきなりメカっていう、そういうプリミティブな側面から攻めてるところが斬新でした。それを商品化するために、メーカーさんと一緒にいろんな経験を積んできたこともあって、今のデザインラインになったんだと思いますよ。
――島田さんが登場した時はそこが新しかったし、フィギュアと相性が良かったですよね。
明:商品化という制約の中では、難しいラインに挑戦しているな!と思って興味深く見てます。
――明貴さんはプロダクトも経験してきたデザイナーですから、そういった立体商品までしっかり見ているのですね。
明:いやいやフィギュアやプラモデルが好きなだけで(笑)。
――今回のMS少女NOTEの画集にはフィギュア(原型師みすまる★ましい氏製作のガンダムとザク)も掲載されているそうですね。
明:みすまる★氏から、キャラホビの当日版権に申請してみます、という連絡があって、無事通ったのでキットにしてもらえました。
――念願かなってという感じですね。明貴さんとみすまる★さんとの親交は長いんですか?
明:まだモデルグラフィックスで「今月のMS少女」を連載していた時で、彼もアマチュアモデラーだったころから、なんだかんだで20年以上になります。MS少女をガレージキットで造形していて、それ以来仲良くしてもらってる感じです。今回のガンダムとザクは、2020年のキャラホビの当日版権商品ですが、せっかくの立体物なので書籍にも載せよう!という話になったんです。
――製作途中段階で確認して、修正を繰り返したりされたんでしょうか?
明:完全におまかせで彼の解釈で作ってもらっています。そもそもキャラホビの一般ディーラーとして参加するための物だったので、こちらが直接監修してしまうと他のディーラーさんに対してフェアじゃないからです。
――親交はあるといいつつも、そこは線をしっかり引いたんですね。できあがってきたフィギュアを見て、率直にどのような感想を持たれました?
明:さすがみるまる★氏だな!と思いましたね。彼ならできるだろう!と信じてましたから。もちろん細かい部分で解釈が違うところもありますけど、彼独自の色が強く出ていて良いと思います。関節の可動については考えてなかったので、彼の分割の工夫も良いと思います。自分の画集ですけど、自分がタッチしてない作品(フィギュア)が掲載されるのはおもしろいなと思ってます(笑)。お楽しみに!
後編につづく
DATA
Mika Akitaka’s MS少女NOTE 0079
- 仕様:A4サイズ、全116ページ
- 発行:サンライズ
- 発売:メディアパル
- 価格:4,290円(税込)
- 受注期間:2021年4月23日(金)~6月27日(日)予定
- 2021年8月27日(金)発売予定
- 取扱店舗:プレミアムバンダイ、ムービックJP、アニメイトオンライン、Amazon、セブンネットショッピング、e-honほか
※掲載しているページデザインは制作中のもので、実際の書籍では変更になる場合があります。
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