ダイアックローン!!30年ぶりの復活に寄せて――『ダイアクロン』五十嵐浩司のお蔵出し第2回

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アニメーション研究家・五十嵐浩司が30年以上に渡って集めてきた、オモチャやプラモデル、そのほかキャラクターグッズについて書いていくというコラム連載。

 

※バックナンバーも併せてご覧ください。

 

さて、今回は30年以上の沈黙を破ったリブートが好評の『ダイアクロン』について語っていこうと思います。

 

自分と『ダイアクロン』の出会いは、リバイバル中のウルトラマンや仮面ライダー目当てに読んでいた「テレビマガジン」の漫画でした。1979年から1980年にかけて、かつてのヒーローが続々とテレビに復活しています。ウルトラやライダーの他にもガッチャマン、ドラえもん、サイボーグ009、鉄人28号、鉄腕アトム、あしたのジョー……。懐かしのヒーローが続々と蘇る中、『ダイアクロン』は新規のキャラクターとして登場しました。
ただし、その「テレマガ」は従弟の持ち物です。小学3年生に上がる頃、なぜか児童向けテレビ情報誌が痛烈に恥ずかしくなり、読むのをパタッとやめていたのです。それでもウルトラやライダーがどうしても気になったので、従弟の家で読みふけっていた。そんな時代のことでした。

 

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▲1982年発行のカタログより。3年目を迎えた『ダイアクロン』のラインナップが一覧できる。左上に描かれたロボット要塞Xのイラストはスタジオぬえの宮武一貴による。

 

「テレビマガジン」で漫画を描いていたのは成井紀郎さんです。石ノ森章太郎さんのアシスタント出身で、「テレビマガジン」で『電人ザボーガー』や『宇宙鉄人キョーダイン』などを描いていました。アシスタント時代の繋がりで、ひおあきら先生の『宇宙戦艦ヤマト』の作画にも携わっておられたそうです。成井さんは人物もメカニックも上手な方ですから、漫画『ダイアクロン』はとても面白い作品に仕上がっていました。初めて読んだ時、題名の“アクロ”から『ミクロマン』の敵アクロイヤーを連想して、「悪役が主役の漫画?」と思ったことを白状しておきます。

 

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▲「テレビマガジン」連載の漫画版『ダイアクロン』。シリアスな世界観とコミカルなキャラクターのバランスが絶妙だった。この他、「てれびくん」でも『ダイアクロン カーロボット』を題材にした『チェンジ戦隊カーロボット』が連載された。

 

『ダイアクロン』との二度目の出会いは「スタジオぬえのデザイン・ノート」。「アニメージュ」1981年11月号付録です。スタジオぬえ(※)が日本のSFアートの草分けであることは、当時13歳の自分も知っていました。その中に河森正治さんの描いたダイアクロン・ロボットベースのデザインが載っていて、「ダイアクロンって実はスゴイ!!」と思った記憶があります。
翌1982年6月1日発行、「デュアルマガジン」創刊号のスタジオぬえの取材記事にも『ダイアクロン』のデザイン画があり、ますます興味は高まっていきました。やがて、その年の10月から『超時空要塞マクロス』が始まって、スタジオぬえの底力を知ることになります。

 

しかし、『ダイアクロン』の漫画やデザイン画を見る機会があったものの、肝心のオモチャに触れる機会はありませんでした。売り場で見た記憶がほとんどないのです。例えば1981年ですと、日本の津々浦々がガンプラブームでした。自分もガンプラ欲しさにオモチャ屋やデパートに足繁く通っています。しかし、あんなに目立つはずのロボットベースを目撃したことはありません。自分としては、青森市の玩具問屋が『ダイアクロン』を仕入れなかったのだと想像しています。「テレビで放送されていない番組のオモチャ」または「テレビCMを放送していないオモチャ」の扱いに消極的だったのではないか……と。

 

実際にオモチャ屋の店主から聞いた話があります。青森では『太陽の牙ダグラム』が1年遅れで放送されたのですが、その影響で県内の需要が高まったために東京の問屋に残っていた在庫がまとめて青森へ送られたそうです。この話そのものの信ぴょう性はともかく、番組やCMの関係で、オモチャの流通に地域差があったことは間違いないと思っています。

 

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▲タカラの『太陽の牙ダグラム』商品ラインナップ。図版は1982年春発行のパンフレットで、スケールアニメキット、デュアルモデル、1/144コレクションシリーズなど初期の主要アイテムを掲載する。

 

かくして長い旅を経て、自分は20代前半の頃に初めて『ダイアクロン』を手にすることになります。第1号アイテムは「ワルダロス」。個性的なデザイン、大胆な合体システム、メッキや透明パーツを多用した仕様……すべてに惹かれたのです。
「ワルダロス」をきっかけにして入ったダイアクロン・ワールドは大変魅力的でした。当時は「超合金」の収集を始めてから既に数年経っていましたが、「ダイアクロン」には「超合金」に通じる魅力を感じていました。前述した「ワルダロス」への感動は、まさに「デラックス超合金」に通じるものなのです。のちに『ダイアクロン』の企画資料を読む機会があり、まさに「超合金」へのカウンターとして生まれた事実を知った時には、パズルのピースが埋まった感覚がありました。

 

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▲『ダイアクロン』のワルダロス。モスキーダー、アリンダー、サソランダーの3機が合体する。1980年代の『ダイアクロン』シリーズの敵キャラクターとしては最大サイズだった。

 

もちろん『ダイアクロン』には独自の魅力もたくさんあります。手のひらサイズから全高50センチまで、さまざまなサイズで展開された変形・合体ロボットはその中核です。ほとんどのロボットにはダイアクロン隊員と呼ばれるフィギュアが付属していて、これが1インチというミニミニサイズながら、大変存在感がありました。この共通フィギュアが乗り込むことにより、各メカニックがスケールモデルとしてリンクするのです。さらに自分がロボットと同じくらい気に入ったのは、付属のブックレットでした。

 

『変身サイボーグ1号』や『ミクロマン』といったタカラの歴代オリジナルSFシリーズには、世界観を伝えるためのブックレットが付属しています。『ダイアクロン』もその例に漏れないものでしたが、宮武一貴さん、幡池裕行さん、上田信さんなど諸氏によるイラストレーションと松崎健一さん作成による基本設定は、ハタチ過ぎの感性にも強めに響きました。自分にとって『ダイアクロン』収集は、ブックレットのためにあった……というのは言い過ぎかもしれませんが、それだけの価値を感じられたのです。

 

現在展開中のリブート版『ダイアクロン』も世界観を補うブックレットが付属しています。合体メカ、ダイアクロン隊員、そしてブックレットと1980年代の『ダイアクロン』の魅力を継承した「ダイアバトルスV2」。今後の展開にも注目していきたいと思います。

 

【スタジオぬえ】
SFクリエーター集団。高千穂遙、加藤直之、松崎健一、宮武一貴、河森正治、森田繁などのメンバーが集い、小説、イラストレーション、脚本、メカニックデザイン、映像企画など様々な分野で業績を残している。主要作品は『宇宙の戦士』(イラスト)『クラッシャージョウ』『ダーティペア』(小説)『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(メカニックデザイン)『超時空要塞マクロス』(映像企画・デザインほか)『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』(脚本)など。

 

プロフィール

いがらし・こうじ。1968年、青森県生まれ。1992年よりフリー編集者およびルポライターとして活動中。主なジャンルはアニメーション、特撮、トイやプラモデルのホビー関連。2015年には、アニメーション研究家として「メカニックデザイナー大河原邦男展」の監修を担当している。近作は『スーパー戦隊Walker』『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』(BD解説書)の編集など。

 

 

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