超合金魂やスーパーミニプラなどヒット商品多数――不世出のトイデザイナーの活動を振り返る……

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2017年7月の某日、トイデザイナーの加藤大志さんが夭折しました。

 

加藤大志さんはもともとアニメーターであり、『魔動王グランゾート』『獣神ライガー』などに関わったのち、トイデザイナーに転身。1990年から活動を初めて、28年目を迎えています。

 

1990年代は株式会社プレックスに所属し、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』から『百獣戦隊ガオレンジャー』まで「スーパー戦隊シリーズ」に登場するロボットのデザインワークを手掛けました。多くのスタッフが関わる戦隊ロボのデザインにおいて、加藤さんも多くの合体・変形のアイディアを提供しています。また、フリーデザイナーとして独立した後も、加藤さんはデカバイクロボやダイボイジャーなどの変形システムを提案しました。

 

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▲百獣合体DX超合金ガオキング。ガオバイソンの緻密な変形システムは加藤さんの提案によるものでした。

 

加藤さんの戦隊ロボに並ぶ、もう一つのライフワークとして「超合金魂」があります。加藤さんが超合金魂に初めて取り組んだのは、GX-03の超電磁ロボ コン・バトラーVです。奇しくもコン・バトラーVは加藤さんが最も愛するロボットであり、そのスタイルや合体・変形システムは深い愛情を注ぎ込んだものとなりました。GX-03に続いて加藤さんが参加したのはGX-13超獣機神ダンクーガ。ここでも映像を重視しながら立体として成立したダンクーガを生み出します。

 

GX-03コン・バトラーVとGX-13ダンクーガには共通点があります。それは昭和時代に発売された玩具から、一歩先に踏み出したものであることです。加藤さんは1968年生まれであり、ロボットアニメにも超合金にも慣れ親しんだ世代でした。それゆえに、加藤さんは元になった映像、玩具をともにリスペクトしたうえで、最高のバランスを見つける才能を持っていました。それを存分に発揮したのがGX-03とGX-13なのです。

 

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▲GX-03コン・バトラーVとGX-13ダンクーガ。いずれも超合金魂における合体ロボット初期の傑作アイテムとなった。

 

GX-28戦闘メカ ザブングルも加藤さんのアイディアが盛り込まれています。加藤さんは中学生の頃から、ザブングルの変形について考え続けていたそうです。その熟成されたアイディアにより、GX-28ザブングルは映像のディテールと合体・変形を両立した初のアイテムとなりました。ザブングル繋がりで言えば、GX-38アイアンギアーの変形と膝関節可動を両立したのも、加藤さんのこだわりです。
超合金魂への取り組みは、合体ロボットを中心に最新アイテムのDX超合金魂コン・バトラーVに至るまで続きます。企画スタッフが世代交代していく中で、加藤さんはシリーズの初期から現在に至るまで関わり続けた、数少ない人物の一人となっていました。

 

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▲超合金魂ザブングル。そのシステムは加藤さんが中学生の時に考えたメモが元になっている。

 

また、プレックス時代に戦隊ロボへ関わっていたことから「スーパーミニプラ」の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』シリーズにも加藤さんはタッチしています。超合金魂GX-72大獣神も加藤さんが関わっていますから、テレビ放送当時に発売された「DX進化合体」、そして「超合金魂」「スーパーミニプラ」と異なる事業部の大獣神アイテム、3点ともに関わっているわけです。ここに加藤さんの類まれなる才能への信頼が感じられます。また、キャンディトイでは「もじバケる」にも多くのアイディアを提供していました。

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▲ 加藤さんによる「スーパーミニプラ」のキングブラキオンの図面。発売済みのスーパーミニプラ大獣神とドラゴンシーザーのスケッチも加藤さんが手掛けた。

 

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▲「もじバケる」に提供したアイディア。Rabitバケる!は英文がモチーフ。忍びバケる!は「もじバケる」としては珍しいワンピース変形を想定していた(2点とも未商品化)。

 

加藤さんはご病気で亡くなる直前まで仕事を続けていました。これはその一つ、超合金魂のドラゴンシーザーです。おそらく、わたしがまだ知らないアイテムにも関わっているに違いありません。デザイナーが亡くなったとしても、作品は残り続けます。この記事をご覧になったみなさん、かつて、この世に天才のトイデザイナーがいたという事実に思いを馳せてくだされば幸いです。では、最後に加藤さんとともに多くの玩具プロダクトに関わってきた、野中剛さんと大石一雄さんのコメントをご覧ください。加藤さん、安らかに――!!

 

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▲ 現在企画進行中の超合金魂ドラゴンシーザーの図面。加藤さんが込めた「魂」はアイテムの中に永遠に生き続けるのだ。

 


■野中 剛(バンダイOB、超合金魂および恐竜戦隊ジュウレンジャー玩具企画担当)

もうね、びっくりですよ。またすぐ一緒に仕事をするつもりでしたから。
戦隊ロボや超合金魂では、彼の尋常でないこだわりと発想に随分助けられました。
仕事のペースに波はあるし、人物を描くのは苦手だったり、いろいろ弱点はあるのだけれど、それらを凌駕する才能あふれる人でした。僕とは年も近かったから、一緒に「やってやろうぜ!」的にお互いがんばっていた気がします。ここぞという時の集中力は半端ではなかったので、少し無理をしすぎちゃったのかもしれません。
さらば、魂の兄弟。 “偉大なる変人”の職人技を、僕は決して忘れません。

 

■大石一雄(プレックスOB、スーパー戦隊シリーズ玩具デザインマネジメント)

突然の訃報に接し驚愕でした。まだまだアイデアや玩具への情熱に溢れ、これからの更なる活躍を期待できる逸材であったので残念でなりません。加藤君は1990年から外注としてプレックスの仕事をするようになり翌1991年から正社員、そして『ジュウレンジャー』が初担当になりました。
以降、スーパー戦隊シリーズ、メタルヒーローシリーズ等に関わり天才的な能力を発揮していただきました。特に合体ロボのアイデア創出においては、彼の功績は書き切れないほどです。謹んでご冥福をお祈りいたします。


 

 

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