『キャプテン・アース』デザインの現場 高倉武史(その4)
『誰が描いても同じように見えるシンプルでカッコ良いものを考えるようにしています』
インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/5/30)
※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年8月号に掲載されています。
―これら以外に、グローブ基地の自動車などもデザインされてますね。ここではどんな部分を意識されましたか?
高倉:自動車はもともと好きなもので、この車には何人乗って、お話の中でこういう使い方をします、という設定をもらった後は、息を吸うように自然に描いています。気を付けたとすれば世界観に合うデザインを考えながら車としてもウソのないディテールでまとめる、というところでしょうか。
コヤマ:グローブの車は可愛いですよね、個人的にはリア周りのデザインが好きです。
高倉:80年代、90年代くらいのデザインラインですね。最近の車のデザインも悪くないんですが、今回はグローブ基地の中をいっぱい走っている車ということで、工業デザイン然とした、主張しないものを考えました。
―本当に多くのデザインを手がけていらっしゃいますが、高倉さん自身のお気に入りのものはありますか?
高倉:やっぱり機動列車です。これはもう趣味で描いてましたね。鉄ヲタですから(笑)。あまりそういう作品もないので描かせていただけるというだけで正直ありがたくて。
コヤマ:企画の段階で東京を舞台に戦う展開が考えられていたのですが、そこで「東京にどうやって(オーディナリーを)持っていこう?」となって、グローブは世界的な防衛組織であって当然政府にも顔が利くので、国が管理する線路を使って輸送することが可能だ、となったんです。使っていない線路を使って移動するのって熱いよね、という榎戸さんの案はアイデア的にはすごいカッコ良いなと思いつつも、これを実現できるメカをどうデザインするべきなのかと悩みました。でも、鉄道に詳しい高倉さんが参加してくれることになって「これでやれる!」と(笑)。その後、高倉さんが初めて打ち合わせに参加された時も榎戸さんが「電車が出るからお願いします!」と言い続けていたのが印象的でした(笑)。
高倉:そのやりとりを見ていた五十嵐監督が「いや、先の話ですから、まだやらなくてイイです」と(笑)。鉄道ネタに関してはもう全力でやらせていただきました。鉄道の世界では線路や道路に対して建築物を設置してはならない「建築限界」というのがあって、要するに鉄道車輌のデザインはゴテゴテと飛び出して周囲に迷惑をかけちゃダメなんです。当然、鉄ヲタの僕としてはそれを無視したデザインは描きたくないわけで。すると五十嵐監督が、「移動する時は収納して、活躍する時は周囲に障害物のない場所で展開させるので大丈夫!」と言うので、じゃあやりますと。
コヤマ:一番はじめの質問に戻りますが、昔のアニメを見てもロボットより普通の乗り物が好きだったんですか?
高倉:どちらも同じくらい好きですね。
コヤマ:人型ロボットも嫌いではないと。
高倉:嫌いではないです。ただ、人型ロボットはコヤマさんをはじめ、すごい人が大勢いらっしゃるので、オファーがあまり来ないんです。もちろん、やれば楽しいです。過去の作品になりますが『機神大戦ギガンティック・フォーミュラ』のケイロン5世は、僕の中で一番ロボットらしいデザインの仕事でしたね。
―高倉さんの中では、すべてのメカが平等に愛すべき対象なんですね。
高倉:はい。フレームがあって、動力があって、それを囲むシェルがあって、動くところがあればそれは関節になるし、センサーがあれば顔になるしと。すべて一緒ですね。
コヤマ:高倉さんのデザインは独自のラインがありつつも、他のデザイナーとのマッチングがしやすいというのがすごいんですよね。僕のアースエンジン、荒牧さんや柳瀬さんがデザインした他のメカとも合うし、Okamaさんのライブラスターとも合う。
高倉:ライブラスターは本当にすごい格好をしているので、それをセットする棚は、自然に収まるようにすごく意識しました。
コヤマ:当然ですが、デザインされたメカって、アニメの現場では作画や美術のスタッフも描いたりするので、デザインによっては他人が描くとメカっぽく見えなくなってしまうようなケースが多々、あるんです。その辺りも高倉さんのデザインは絶妙で、凹凸とかフォルムとかで、ちょっとバランスの違う描かれ方をしてもメカとして成立して見えるんです。これってデザインにとって実はすごく大事なことなんです。
高倉:昔、僕は有機的なグリップのデザインをしたことがあるのですが、自分で描いていて「格好良くないな」と思っていたんですけど、すごい上手なアニメーターがそれを作画したら、これがもうカッコ良かったんですよね。その時、これは何か意味があると思ったんです。デザインと作画の違いがそこには確実にある、と。それは今、コヤマさんがおっしゃったようなことなんです。描き手によって、絵というものはずいぶん変わってきちゃうので、ベテランが描けば、当然カッコ良く描けます。でも、必ずしもベテランだけが描いてるのがアニメの現場ではないので、誰が描いても同じように見えるシンプルでカッコ良いものを常に考えるようにしています。
―クオリティのコントロールを考えながらのデザインなんですね。
高倉:それがすごく楽しい。現場とコミュニケーションを取って、クオリティを上げるために効果的なことは何か、それを探るのが楽しめる性格なんですよね。もちろん、作り込んで良い、というなら永遠に作り込んでしまうくらい集中できると思います。けど、僕は10年や20年くらいの作りかけプラモデルがたくさん転がっているような人なので、作り込みに集中しちゃったら、もうデザインが終わらないです(笑)。
コヤマ:締め切りは偉大、みたいな(笑)。
高倉:はい。締め切りがないと完成しない人間なので。
(第2回終了。 次回、第3回は8月4日よりスタート予定です 4/4)
<関連情報>
その2:『Globeは研究室、マクベスは軍事施設、といった違いが出せるように考えています』
その3:『昔は飛ばない飛行機を描くと業界で怒られてましたからね』
その4:『誰が描いても同じように見えるシンプルでカッコ良いものを考えるようにしています』
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