超合金魂GX-70マジンガーZ 第3回――異例続きの開発物語、ゴールまでの道のり

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文●アニメーション研究家:五十嵐浩司

この連載は、超合金魂20周年を記念して製作されている『超合金魂GX-70マジンガーZ』の、企画立ち上げから完成までの道のりを、リアルタイムでお届けしていく連載である。

 

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2015年よりスタートした、バンダイコレクターズ事業部企画チームと越智一裕氏の共同作業は、年が明けた2016年になっても続けられていた。また、越智氏の参入に先行する形で、プロジェクトに参加していた前野圭一郎氏(株式会社T-REX)が本設計を担当。2015年の12月に越智氏の指示を元にした設計用データが上がり、そこにさらに越智氏が修正を加えていく。

※株式会社T-REX・・・玩具設計会社。DX超合金魂やDX超合金、また大人の超合金なども手がけた。

 

A

▲設計データに関する越智氏のチェック。足首の形状指示は、まさに映像から検証されたものである。

 

掲載した図版をご覧いただければ一目瞭然だが、越智氏の監修はきわめて微に入り細を穿つものだ。設計担当の前野氏もそれに答えて、越智氏が望むデリケートなラインを設計用データに反映させる。そういった流れがコツコツと積み上げられていった。

 

B

▲頭部、特に顔については越智氏が特にこだわった箇所だったという。チェックの多さからもそれが伺える。

 

C

▲頭部のディテール参考スケッチ。マジンガーZの目の形状について綿密な検証が行われている点に注目。

 

越智氏が担当したのは、映像キャラクターのプロポーションとディテール、彩色などを、設計データや試作品とすり合わせることである。その他にギミックについての提案も行った。その中で採用されたものとしては、ジェットパイルダーの固定案がある。それまでの超合金魂マジンガーZとは異なり、パイルダーをマグネットで固定できるのだ。これにより、はめ込み用の突起や穴を設ける必要がなくなった。また、胴体のミサイルパンチについても同様である。企画チームの想定では可動を優先してオミットする方向だったが、越智氏のこだわりを活かし、腹部パネルを交換して再現することになった。その他、ジェットスクランダーのサザンクロスナイフ発射口にも越智氏の提案が活きている。翼を前後入れ替えても、映像どおり発射口が翼の正面のみに来るのである。

 

一方で、設計担当の前野氏から提案されたギミックも存在した。肩関節の構造がそれにあたる。歴代超合金魂マジンガーZの肩は、胴体にめり込んだ黒く丸いパーツを肩と解釈していた。だが、その構造では可動域に限界があったため、今回は自然な見た目と可動域の両立を重視し、黒く丸いパーツが肩アーマーであるかのような設計になっている。加えて、ジェットスクランダーのベルトは合体前と合体後で形状が変わっていた。これはアニメならではのマジックだが、GX-70では2種類のベルトを付属させて、両方の状態を再現した。これも前野氏の手によるものである。

 

D

▲全身正面の彩色指定。銀色系統だけで4色の塗り分けが提案されている。脚と足裏の色の違いも指摘してある。

 

E

▲頭部の彩色指定。アニメーション用の設定に準じて、顔の塗り分けを行うように提案されている。

 

F

▲ジェットスクランダー。『マジンガーZ対暗黒大将軍』に登場した後期版である。翼の表裏の塗り分けはもちろん、翼の厚みやベルトの内側もこの指定に沿って塗装された。

 

やがて、2016年2月。無塗装の試作品の登場となる。続いて越智氏は、彩色にも鋭く斬り込んでいる。鼻の横のライン、鼻と頬の前面の塗り分けなど、これまでの超合金魂シリーズでは再現していなかった部分にも言及した。彩色という点では、ジェットスクランダーに関して翼の表裏の色違いを指摘していることも付け加えておきたい。

 

越智氏による彩色提案を経て、2016年5月、彩色が施された試作品ができあがった。2014年の春からスタートして丸2年。これでほぼゴールが見えた。彩色版試作品に関する越智氏のチェックが行われ、ジェットスクランダーの固定用ベルトを銀から白へ、目のエッジをよりシャープにするなどの指示が出ている。ここを終えれば、あとは生産へ向けて動き出すのみである。2年間という前代未聞の開発期間を掛けられた、超合金魂GX-70マジンガーZの企画はまもなく区切りを迎えようとしていた。

 

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