【いよいよ秋!】“遠足の必需品”だった元祖携帯ゲーム「ポケットメイト」シリーズを振り返る!【連載:懐かし玩具アーカイブス】

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文・写真●初見健一/編集●ジマ丸(電撃ホビーウェブ編集部)

昭和っ子たちを夢中にさせた「懐かし玩具」をレトロ系ライターが紹介する連載企画。今回のテーマは、70年代の小学生なら誰でもひとつは持っていた元祖携帯ゲーム、トミー「ポケットメイト」だ!

 

※現在は生産終了しています。

 

 

トミー「ポケットメイト」シリーズとは?

今回はトミー(現タカラトミー)が販売していた懐かしの携帯ゲーム「ポケットメイト」を紹介するが、そのタカラトミーが往年のエレクトロニクスゲーム「サイモン」の進化版を発売するそうだ。本題に入る前に、ちょっとこのニュースについて触れておこう。

 

「サイモン」といえば70年代っ子たちには説明不要。1978年にヨネザワが発売した未来感あふれるゲームマシンで、もともとアメリカ生まれの商品だ。

 

UFOのような円形パネルにカラフルなタッチボタンが配され、その各ボタンがSFチックなサウンドを発しながら発光する。その発光パターンを記憶しながら、順番通りにボタンを押していく一種の記憶ゲームだった。

 

ルールはいたってシンプルだが、そのレトロフューチャーな外観と、映画『未知との遭遇』のようにスペーシーな音と光を操る感覚がなんともカッコよくて、当時の男の子たちを魅了したのである。

▲1978年に発売された初代「サイモン」。ゲームらしからぬ近未来的オブジェのような外観がカッコよく、独特のサウンドも魅力的だった。

 

そういえば、タカトクトイスも1981年に「サイモン」にインスパイアされたような「ゲームロボット九」という商品を発売した。こちらも現在はハナヤマが継承し、「ゲームロボット50」などの進化版が販売されている。

 

当時はいわゆるLSIゲームの全盛期。多くのゲームがデジタル化を目指しながらも、まだ本格的な液晶画面を採用するにはいたっていなかった時代だ。真っ黒な画面の中を発光ダイオードのボールが電池の動力で飛びまわるといった商品が主流で、“アナログで再現したデジタルっぽさ”がウケていた。

 

思えば、珍品・奇品が市場にあふれた非常にカオスでおもしろい時期だったのだ。

 

こうした過渡期ならではのユニークな状況は、任天堂の「ゲーム&ウオッチ」、そして「ファミコン」の発売によって一掃されてしまった。

 

▲2016年10月、タカラトミーより発売される「サイモン エア」。往年の「サイモン」の進化形だ。円盤形ではなくリング状のデザインが特徴的だが、最大の進化ポイントはボタンを押すのではなく、手をかざすだけの“タッチフリー”方式になったこと。カラフルなライトを“エアタッチ”することでテクニックの幅が広がり、「ダブルス」(二人プレイ)などの多彩な遊び方が楽しめる。

 

今回紹介したいのは、ゲームがデジタル化を志向するようになる70年代後半以前に、主に小学生たちの間で「携帯ゲーム」の代名詞として君臨していたトミー「ポケットメイト」シリーズである。

 

その商品名の通り、ポケットにすっぽり収まるサイズで統一されたアナログゲームのシリーズで、1975年から80年代なかばにかけて販売された。価格は各400円。子どもがお小遣いで気軽に買える価格設定もうれしかったが、最大の魅力はそのバリエーションの豊富さだ。

 

毎月のように続々と新ゲームが登場し、そのひとつひとつにアイデアが詰まっていた。

 

ポケットメイト集合01_▲トミー「ポケットメイト」シリーズ。1975年から約10年間にわたって販売された携帯アナログゲーム。その時々の流行やカルチャーを取り入れた新作が周期的に投入され、続々とバリエーションを増やしていった。「スペースインベーダー」や「パックマン」など、人気ゲームのアナログ化に挑戦したタイトルもあった。

 

「ポケットメイト」の筐体は基本的には統一フォーマットなので、すべてのゲームを約12×7cmの透明プラスチックケースの内部のみで展開させなければならない。しかも、電池などはいっさい使用しない。当然、構造的にもコスト的にもできることは限られており、多くのゲームはパチンコ玉を弾いたり転がしたりする内容か、もしくはルーレット・スロットマシン形式のものだった。

 

この条件でゲーム内容のバリエーションを増やしていくのは至難の業だと思うが、「ポケットメイト」はだいたい常時30種類以上がラインナップされており、定期的にラインナップは入れ替わる。累計するとかなりの数のゲームが開発されたはずだ。

 

また、次々と登場する新しいゲームも、工夫を凝らした設計とコンセプトによって決してマンネリに陥らず、ちゃんと毎回「ほしいっ!」と思えるものが発売されたのだ。手のひらサイズの小さなケースにアイデアとギミックがギュッと詰まっている。そんな商品だった。

 

占いコンピューター_▲当時はトミーだけでなく、各社が携帯アナログゲームを販売していた。「ポケットメイト」のライバルとして代表的なところでは、エポック社の「ミニゲーム」「ブックゲーム」、タカラの「ポケットパンチ」など。写真はエポック社「ブックゲーム」シリーズの「占いコンピューター」。コンピューターといっても電力不要のアナログゲームで、スロットマシン形式の占い遊びが楽しめる。

 

 

「ポケットメイト」傑作ベスト3

では、数ある「ポケットメイトシリーズ」から、小学生時代の筆者がハマりまくったお気に入りのタイトルを3つ紹介してみよう。

 

●第3位
「コンバットタンクゲーム」
初期ラインナップに入っていた人気タイトルで、同世代なら「持ってた!」という人も多いと思う。戦車の砲台を操作して砲撃し、敵の戦車や戦闘機、ヘリなどを攻撃するシューティングゲームだ。

 

基本的には玉を弾くだけのパチンコをアレンジしたものだが、敵戦車などのイラストが描かれたパネルにパチンコ玉が命中するとパネルがクルリと回転し、敵がドカーン!と大破する(もちろん音はしない。頭の中で各自が「ドカーン!」と爆発音を鳴らすのである)

 

コンバットタンクゲーム01_▲6つの弾丸で4つの敵を攻撃し、いくつ大破させられるかを競うゲーム。エネルギッシュなタッチの戦場イラストがイイ!

 

003▲砲台を回転させながら狙いをつけて、パチンコ玉を発射する。


002001▲小窓部分の変化に注目。命中するとパネル回転によって絵が変わり、敵の戦車や戦闘機などが大破!

 

●第2位
「フィールドアスレチックス」
こちらも当時の大人気タイトル。この時代、各地の観光地にフィールドアスレチックが設置されて大流行した。トミーやエポックからも大型ボードゲームの「アスレチックゲーム」が販売されていたが、それをたった400円で所有できてしまうということで(まぁ、ギミックなどは極端に簡易化されてはいたが)、70年代の子どもたちはこの「ポケットメイト」版に飛びついたのである。

 

フィールドアスレチックス01_▲盤を慎重に傾けながら、パチンコ球を転がしてゴールまで導いてゆく。滑り台、階段、丸太渡り、ボートでの池越えなど、さまざまな障害をクリアしていかなければならない。コース外に落下してしまったらゲームオーバー。

 

フィールドアスレチックス02_▲小さな盤面によくもこれほど多くのギミックを詰め込んだな、と感心してしまうほど秀逸なレイアウト。けっこうイライラさせられる意地悪なコース設定だ。

 

フィールドアスレチックス03_▲ボールを操作するだけでなく、コースにも可動するなどのギミックが仕掛けられている。特にボールをボートに乗せて運ぶアイデアは素晴らしい!

 

●第1位
「クリーンテニス」

1位はちょっと変則的なタイトルだ。
「ポケットメイト」シリーズは基本的に共通サイズの盤面で展開されるゲームだが、なかに数点、ちょっと例外的な構造のタイトルもラインナップされていた。

 

たとえば「将棋」。ケースをパカッと開くと将棋盤と極小の駒が格納されている。単なる携帯用のミニ将棋盤なのである。

 

また、「ヨーヨー」などもラインナップされていた。こちらはケースを開くと組み立て式のヨーヨーが格納されている。それだけ。本当にただのヨーヨーなのだ。

 

当時、「なんだろう?」と試しに買った子どもたちの多くを失望させた迷タイトルだった。

 

変則的な構造のゲームでありながら、傑作として名高いのが「クリーンテニス」。組み立て式のアクションゲームで、ケースを開くとそれがそのままテニスコートになる。振り子のように動くボールとボタンで操作するふたつのラケットを取り付けると、本格的(?)なテニスゲームが完成するのだ。

 

二人いないと遊べないという欠点はあるが、400円をはるかに超えたプレイバリューを持った名作だ。

 

クリーンテニス01_▲「ポケットメイト」らしからぬ外観……。

 

クリーンテニス02_▲ケースを開くと各パーツが格納されている。

 

クリーンテニス03_▲完成図。左右にスライドするラケットを操作しながら、敵が打った球を打ち返す。これ以上ないほどシンプルなルールながら、やってみるとけっこう白熱するのだ!

 

 

「ポケットメイト」と遠足の思い出

同世代ならわかっていただけると思うが、「ポケットメイト」といえば遠足である。

 

当時、多くの小学生たちが遠足の前になると、「300円以内」のおやつを購入すると同時に、お小遣いで新しい「ポケットメイト」を買った。遠足の行き帰りのバスのなかで楽しむためである。

 

「ポケットメイト」は家でひとりで遊んでいても楽しいが、やはり携帯ゲームである以上、外出先でプレイするのが本流である。遠足のバスのなかでそれぞれのクラスメイトが「ポケットメイト」を持ち込み、それを交換しあったりして楽しんだ。

 

通常授業の日に玩具を学校に持ち込めば即没収だが、遠足時の「ポケットメイト」は先生たちもなかば公認していたようだ。

 

これが全国的な傾向だったかどうかは知らないが、地元駅前の玩具店では、遠足時期になると「ポケットメイト」の棚がスカスカになっていたのを覚えている。

 

みんなが浮足立ってワイワイ騒ぐバスのなかでプレイする「ポケットメイト」は本当に楽しかったが、注意しておかねばならぬ点がひとつある。

 

上で紹介した「フィールドアスレチック」や「迷路」系のタイトルなど、盤を慎重に操作してパチンコ玉を誘導するゲームは、移動中の乗りもののなかでは絶対にやってはイケナイ。確実にクルマ酔いするのである。

 

揺れる車内でこの種のゲームに没頭していた友人が、10分後には真っ青な顔になって手を上げて「せ、先生! エチケット袋くださいっ!」などと叫びだす。そんな悲劇が毎年のように繰り返されていた。

 

フィールドアスレチックス04_▲シューティングや野球盤系などはそれほどの問題はない。が、盤を動かしてパチンコ玉を転がす類のゲームは、揺れる乗りもののなかではかなり危険なのである。三半規管が思いっきり刺激されてしまうらしい……。

 

「ポケットメイト」は2005年に人気タイトルが限定復刻され、また数年前にもiPhoneアプリとして「フィールドアスレチックス」など3タイトルがリリースされて話題になった。が、どちらも今では入手困難……。

 

ぜひともまた復刻していただきたいと願っているが、できればアプリではなく、やはり商品として発売してほしい。あのころの遠足を思い出しつつ、当時入手できなかった「F1レーシング」や「スマートボール」などをバスのなかで思いっきりプレイしてみたいのである。

 

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●筆者:初見健一
1967年、東京都渋谷区生まれ。出版社勤務を経てフリーライターに。
主に1960~1980年代の玩具やお菓子、キッズカルチャーなどの話題を専門に執筆を続ける昭和レトロ系ライター。主な著書に『まだある。』シリーズ(大空出版)、『ぼくらの昭和オカルト大百科』(大空出版)、『昭和ちびっこ未来画報』『昭和ちびっこ怪奇画報』(青幻舎)などがある。

 

 

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