『キャプテン・アース』デザインの現場 okama&齋藤将嗣(その4)
『だけどそれ以上に教えを受けるのが楽しかった。』(齋藤将嗣)
インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/7/18)
※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年10月号に掲載されています。
―齋藤さんが担当されたメカでGlobeとは異なるラインとなったブルーメについて聞かせてください。
齋藤:ブルーメはokamaさんのデザインをクリンナップしたものです。
okama:僕のラフとは思えないくらいカッコよくなりましたよ。
齋藤:okamaさんのコンセプトデザインを壊したくない、という強い想いがあったので、たくさん周りの意見を聞きました。
コヤマ:相当難しかったよね。特にokamaさんの背面図のラフがむちゃくちゃカッコ良かったんですけど、ラインを辿っていくと「あれ……この線はどこに繋がるんだろう」という、だまし絵みたいなラフで(笑)。ブルーメ全体が一つの花のようなデザインというのは、五十嵐監督がやりたかったイメージだったので、okamaさんのイメージをいかに壊さず、設定画に起こすか、という作業でした。見た目は美しいんですが、とにかく難解な構造で……(笑)。
浅井:これもブルーメ研究会が発足しました。三週間くらい正面からみたブルーメの話をしていた気がしますよ(笑)。
okama:ブルーメは3DCGでは作らなかったんですか?
コヤマ:おそらくこういうデザインの場合は、正確な3Dでは五十嵐監督の見たい絵にならないんじゃないかと。ウソというか“ケレン味”が大事なので。
―齋藤さんはプラズマグナムや戦車や戦闘機などもデザインされていますね。
齋藤:プラズマグナムはコヤマさんのラフを元にデザインしました。フトモモへの収納ギミックもデザインしましたが、アイデアはコヤマさんのものです。戦車や戦闘機は最初のラフが描き込み過ぎてNGだったのを覚えています。この手のメカは、数がたくさん出るのでシンプルにしないといけないということを教わりました。戦車はポーランドの新型軽戦車「PL-01」という具体的なイメージが伝えられたので、それをモチーフに無人機としてのディテールを考えました。
―こういったデザインはどの時期でやられたのでしょうか?
齋藤:参加したメカデザイナーの中でも僕が新人ということもあって、実際に学びながら描いていたせいもあって、なかなか完成しなかったんです。だから、どの時期とか順番とかもう関係なくて、全て同時に並行して進めていった感じですね。
コヤマ:齋藤くんの話を補足しますと、制作インしたデザイナーは、通常は今受け持っている「これをやらなきゃいけない!」というメインの設定を抱えている状況の中で細かいメカデザインが次々と発注されて行くんです。「今週はこれ。終わったらこっちやって!」みたいな感じで。齋藤くんの場合はライブラスターをやっている間にコクピットをデザインして、それからまたライブラスターにもどって、今度はエクスパンド・システムをやって、またライブラスターをやって、さらに戦車をやって……みたいな感じだったよね。
―かなり、教わることの多い作品だったんですね。
齋藤:そうですね。コヤマさんにどんな意図があろうとも、初めてのアニメの仕事でロボット物では花形のコクピットのデザインをやらせてもらえました。この1年は良い意味でスパルタで毎日が先輩達に見ていただく勉強でした。僕としてはこの作品を通じて自分の中で成長した部分もあると思うので、次回があればそれを活かしたいです。キャラを描くのも好きですけど、メカでも、小物でも、とにかくアニメに関われることが嬉しくて。本当にそれだけの気持ちで『キャプテン・アース』をやらせていただきましたね。僕は楽しんでたんですけど、先輩達が僕を加えたことで楽しかったかどうかは分かりません(笑)。
コヤマ:楽しかったよ。ほんと、ぶん殴ってやろうか! と思った瞬間もあったけど(笑)。
齋藤:たぶん、その瞬間って僕の心が折れそうになった時だと思います(笑)。だけどそれ以上に教えを受けるのが楽しかった。
okama:うんうん。教えてもらえるって良いことだよ。
齋藤:本当にそうですね。この年になって絵のことを始めから教えてもらえるって体験はあまりないと思うので。
コヤマ:でも齋藤くんは最後までへこたれずにやってくれたので、ほんとに助かりました。
okama:僕はもうそんな努力しながらクリンナップされたライブラスターが劇中で大活躍しているので満足です。これからブルーメも出てくるし!
コヤマ:ブルーメも含めてですが、現時点ではまだまだ劇中に出てきてないokamaさんのスゴいデザインが出てきます。これもまたものすごい衝撃的なエピソードがあるんですが、それはまたいつか……(笑)。
(第4回終了。 次回、第5回は10月6日よりスタート予定です 4/4)
<関連情報>
その1:『見たこともないものが見たいんですよね。最近の作品って、見たこともないものが描けなくなってきましたから……。』
その2:『コミックも今ではデジタルで1ピクセルまで修正できるから小さな立ち絵のキャラクターの顔まで、しっかり描かなきゃいけない。』
その3:『「それを描いてください」と言われて困ったので「それを共有させてください」とお願いしました。』
(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS