「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その3>
コトブキヤの人気オリジナルコンテンツの『フレームアームズ』より、倉持キョーリュー氏による新たなデザインで構成されたバルチャーの製作をお届けする、製作記事第3回!
無事迎えることのできた第3回!
前回はウェブ媒体らしい細かい加工のオンパレードでしたが、今回は前回の続きからバルチャー素体の塗装前加工を仕上げていきます。
■モデラー:ちいたわからし……電撃ホビーマガジン2015年7月号ではフレームアームズ・ガール 轟雷の作例も担当した、フレームアームズ大好きモデラー。
■第1回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その1>
■第2回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その2>
編集部:さて、3回目です。キットも発売されましたし、サクサク進めていきましょう!
ちいた:えー、もうちょっとお話してからにしましょうよ~。
編集部:貴方モデラーでしょ、口より手を動かす!
ちいた:いやぁ(照れ)。前回は細かい工作を紹介してきましたが、このペースで行くとネタ切れも早そうだなって……。では、アーキテクト部分の処理に引き続き、今回は外装メインでお届けしていきます。
ちいた:前回パテ埋めした部分の処理から。大雑把にナイフで処理してから、ヤスリで削って整えています。
編集部:アレ? 前回よりパーツ増えてません?
ちいた:肩や爪先、ヒザのパーツもちょこちょこと隙間が見えるので埋めておきました。
編集部:目立たないところ……大事、ですよね! ね!
ちいた:次は脚です。脚部の内側に押出しピン跡が多数あります。背面から見ればそれなりに気になる部分ですので処理していきます。
ちいた:WAVEの黒い瞬間接着剤をピンポイントで乗せて、硬化スプレーで固めていきます。瞬間接着剤は硬化スプレーを吹きすぎると反応が強すぎて気泡ができることがあるので、吹きすぎないように注意しましょう。
ちいた:先ほど盛った接着剤を削っていきますが、凹部であり周辺に細かいモールドがあります。こういった部分を削るにはヤスリを細かく切って、三角に折って使います。
ちいた:ピンセットで掴みながら削りたい箇所をピンポイントで削っていきます。切れ味が悪くなったら折り位置を変えて削っていきます。
編集部:なるほど、だから細長く切ったんですね。
ちいた:細かく三角形にしたほうが取り回しは楽なんですが、ゴミが出るのが嫌なのでこの方法を好んでます。
ちいた:整形を終えた状態。平面を出そうとするよりも、全体をなじませるつもりで削っていくと削りすぎを防げます。
ちいた:次は各所にある丸モールド彫り直しです。
編集部:型から抜き出す方向の都合で、真円になってない箇所がいくつかありますね。
ちいた:未塗装であれば気にならないんですが、塗装したりスミ入れをすると意外と目立つんですよね。ちゃんと真円になっている部分でも、現状の深さだと塗料で埋まる可能性があるので、ついでに彫り直します。
編集部:これは?
ちいた:100円均一ショップで売ってるドライバーを研いだものです。これをモールドに沿ってクルクル回します。
編集部:おぉ、ちゃんと深く彫れてますね。
ちいた:ピンバイスだと貫通したり、彫った底面がV字になったりするのですが、ドライバーだとちゃんと平面になるのです。
ちいた:同じように楕円になってしまってる部分も彫り直します。楕円になってる部分は1.5ミリのドリルで軽くなぞって、ドライバーが回る下穴を開けてから作業しています。
編集部:元が楕円だと、ドライバーで彫ったときにズレやすいからですね。
ちいた:自分で研いだドライバーの精度の問題とかもありますね。ちゃんと製品になってるものを使えば、もっと楽でキレイに仕上がると思います。
編集部:いま話題のゴッドハンドさんでも、トライアル版ですが製品がありますね。こちらも『フレームアームズ』を題材に使用例を紹介しています。
「フレームアームズ 三二式伍型漸雷」スピンブレード使用例(ゴッドハンド公式サイト)
ちいた:次はクリアーパーツの加工です。
▲左が加工したもの
ちいた:爪のクリアーパーツには補強用のリブ(水かき状の部分)が付いてるので、エッチングノコで余分なリブを切取りシャープに仕上げています。
編集部:クリアーパーツを削るのはちょっとリスク高いですよね。クリアーパーツは他の色のプラに比べると硬いので割れやすいですし、失敗して傷が付くと消しにくいですし。
ちいた:まぁ改造工作全般に言えることですが、その辺りは自己責任ですね~。ちなみにクリアーパーツについた傷は、クリアーカラーで塗装すると塗料がパテ替わりに傷に入って、ある程度傷を消すことができます。
編集部:なるほど、無理にパーツ状態で磨こうとせずに、塗ったほうが楽でキレイに仕上がるんですね。
▲手前が加工したもの
ちいた:その辺りの保険があるから、クリアーパーツも豪快に削れます。肩のパーツも好みでシャープ化しました。
▲手前が加工したもの
ちいた:上腕側面のモールドは整形時に邪魔だったので、一度削り落としてプラ棒で再生。
▲手前が加工したもの
ちいた:下腕は爪パーツを手首に装備させると露出するので、メカパーツっぽいディテールを追加しました。
続いて頭部です。
編集部:これは……? 何だかコメカミのところが……。
ちいた:えっと……あの……遊んでたら壊しました……。
編集部:……。
ちいた:あ、ほら、でも分割方法変えてちゃんと直しましたから!
編集部:頭部パーツって鳥型変形時にはマスクを下げるんですよね? これじゃ位置移動できないじゃないですか!
ちいた:いや、この時工作していた段階では気がつかなかったので……。
(チッ! しらばっくれて完成させようと思ったのに、完成後も取り外す部分だったとは……。)
編集部:おい! 心の声漏れてるぞ!
ちいた:ほ、ほら、接着面積も少ない破損箇所の修復方法の紹介ということで!
編集部:ん~、まぁ壊した以上仕方がない。ちなみになぜ分割方法を変えてるんですか?
ちいた:接着面積が2ミリないですからね。安定して接着できる構成に変更しました。
編集部:修復箇所の色が違うのはなぜでしょう?
ちいた:グレーの部分はプラ板、黒い部分は瞬着パテ(先ほどの黒い瞬着)ですね。画像のような構成になってるので、プラ材で芯を作って、盛り削りしやすいパテで微調整しながら形状を合わせています。
編集部:変形には使用できなくなりましたが、ロボ形態での強度は増したようですね。確かにこういった細かい部分であれば、割りきってどちらかの形態に合わせた補修のほうが、完成してから遊ぶこと考えると得策かもしれません。
ちいた:壊さないのが1番だけどな!
編集部:お前が言うな!!
……あ、まさか、急に「頭部にLEDを」という話をし始めたのって?
ちいた:ドキッ!!
いや、違いますし……?
初めからやるつもりでしたし……?
そうだ! 実はLEDを仕込むためにあえて分割したんですよ。
編集部:「そうだ!」じゃないですよ! さっきと言ってること違うじゃないですか!!
ちいた:破損箇所の修復に、LEDの仕込みまで、一粒で二度オイシイですね!!
……それではLEDの説明を。
ちいた:ミネシマで発売されてる配線済みチップLEDです。値段も安くてオススメです。配線が太めなのが残念ではありますが、自分のような電飾初心者には扱いやすい商品です。
編集部:チップLEDの配線は、半田ごてを使い慣れてない人にはちょっとハードル高いですからね。
ちいた:最近は色々なところで電飾が注目されて関連書籍も発売されたりと、作業の助けになる環境は整ってきていますので、まだやったことがない方もチャレンジするには良い頃合かなと思います。
ちいた:バルチャーの頭部には丁度良い隙間があるので、そこにサイズを合わせてLEDを仕込み、ホットボンドで固定しました。ある程度組んだら点灯チェックします。
編集部:丁度良い隙間じゃなくて、変形時にマスクで目を隠す際に使う穴ですけどね……今回の作例ではマスクの分割処理をしたので使いませんが。
ちいた:ぐう。
編集部:未塗装でも光ると迫力ありますね。顎までクリアーパーツなので、倉持さんのコメントにもあった涙部分も一緒に光っていて良い感じです。
ちいた:加工している最中に断線したり、何か失敗していたりすることがあるので、工程ごとに細かく点灯チェックします。文字にすると面倒くさそうですが、光るのを確認するたびに製作テンションが上がるから楽しいです。
編集部:そういえば、電池はどこに仕込むんですか? 外装が小さい機体なので、仕込む場所がなさそうなのですが。
ちいた:友人の作品を参考に、ユナイトソードの基部に仕込んで外付けにしました。
ユナイトソードに付属のアレで電源ユニット。フレームアームズ電飾したい方どうですか。付けるだけ。 #フレームアームズ pic.twitter.com/dMbVDP6XHN
— つん🐈🐕🍊 (@Tuntun_k) April 12, 2015
編集部:おぉ! これなら他の機体に仕込むときも楽ですし、外に露出させてても違和感が少なく、使いやすいですね。
ちいた:後に仕込むギミックのために「つん氏の考案した形」とは少し違うのですが、『フレームアームズ』には万能で使える便利なアイディアだと思います。
ちいた:メカものは頭部アップで撮影されることが多く、頭部からスグにケーブルが見えていると格好悪いので、襟部分に穴を空けて背中に逃しました。
編集部:電飾が仕込まれているという情報を伝える意味では見えていてもいいと思いますが、機体内に収まっているほうが“それらしい”感じで良いかもしれませんね。
ちいた:さて、これで本体の工作は一通り終わりました。地味な工作紹介のオンパレードでしたが、ここでキット素組み状態と加工済みの状態を比べてみましょう。
▲キット素組み(左)、整形工作後(右)
編集部:やっぱりこうして並べて比較すると、工作の効果が随所に現れていますね。
ちいた:全体を整形したことでツヤが消えて、光が拡散して見えている効果もありますけどね。スタイルの変更工作は一切していませんが、引き締まった印象になります。
編集部:ひとつひとつの工作からは伝わりにくいけれど、やればキチンと効果が出る。読者の皆さんには、その効果と作業量を天秤にかけて、お好きな方を選択してもらいたいですね。
ちいた:実際、仕上げの方向性によっては必要ない工作も多々ありますけどね。あくまで“ちいたわからしの作り方”って感じで受け取ってもらえると嬉しいです。
編集部:いや、なんか終わったような口ぶりですが、まだ塗装も追加パーツもできてないですよね? 全体の進捗からいえば50%くらいですよね!?
ちいた:う……次からは追加パーツの製作を解説します。
編集長:(もう少し仲良くしろよ……。)
というわけで、やっとこさ折り返し地点通過!
次回更新時は今度こそ塗装前段階まで進める予定!
どうやら追加パーツのイメージは固まっているようです。
次回の更新もよろしくお願いします!
<DATA>
XFA-CnV バルチャー
■1/100スケールプラスチックキット
■全高:約165ミリ
■価格:3,800円(税抜)
■設計:毛利 重夫
■発売中
■発売元:コトブキヤ
※コトブキヤショップ限定:XFA-CnV バルチャーをお買い上げごとに、特殊メッキ加工の「エナジーウイングパーツ」をプレゼント(配布期間:バルチャー発売日より、特典がなくなり次第終了)
<関連情報>
アーキテクトマン公式twitter @faman_type001
■第1回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その1>
■第2回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その2>
■第4回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その4>
■第5回記事:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その5>
(C) KOTOBUKIYA