フィギュアの新時代を切り拓くセガのニューブランド「S-FIRE」インタビュー!その初発表作に『ヒロアカ』が選ばれたのには“プルス・ウルトラ”に通じる必然性があった

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取材・撮影・文●キャプテン住谷

2021年5月5日、セガサミーグループより新たな商品ブランド「S-FIRE」が発表されました。それとともに公開されたのは、大人気TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』のキャラクターたちを立体化したフィギュア。近年、加速度的にハイクオリティ化が進むフィギュア業界に切り込むにあたり、新参とは思えないほどの出来栄えの良さがファンの間で話題となっています。

 

ただでさえクオリティの高さから注目を集めている「S-FIRE」ですが、その予約開始を前にして「AR(拡張現実)によるエフェクトをフィギュアに乗せることができる」という、新たな仕様が明らかに。このたび、その発表にあわせて「S-FIRE」の企画立案やディレクションを担当する竹中博史さん(以下、竹中さん)にお話を聞くことができました。インタビュー会場にて展示された「緑谷出久」「爆豪勝己」の撮り下ろし写真とあわせてご覧ください。

 

 


立体化する作品に対して“熱”をもってやっていきたい

 

――本日はよろしくお願いします。まずは、「S-FIRE」立ち上げの経緯から教えてください。

 

竹中さん:はい。元々、弊社内ではずっと前から「新たな商品ブランドを立ち上げたい」という思いがあったんです。そこで、私を含めその実現に向けた人材や準備が整い、「S-FIRE」が始動しました。

 

――「S-FIRE」というブランド名にはどのような意味が……?

 

竹中さん:実は関係者向けにアイデアを募って、英語でも中国語でも「人気がある」という意味のスラングである「FIRE」が入っているブランド名をつけました。「立体化する作品に対して熱をもってやっていきたい」というスタンスもありますので、そういった我々の熱さが伝わればいいな、という思いもあります。

 

僕のヒーローアカデミア フィギュア 緑谷出久

 

 

さらにクオリティの高い商品を――“プルス・ウルトラ”に通じるブランドコンセプト

 

――初発表作品というのは、今後のブランドイメージそのものを左右しかねないほど重要かと思います。それに『ヒロアカ』を選ばれた理由は?

 

竹中さん:完成品フィギュア市場って、今はもう完全にハイエンド志向になっていると思うんですね。そのなかで新参者が存在感を示すには、すごいクオリティのものを出すというのが大前提になると考えました。『ヒロアカ』は世界的に人気がある作品ですし、すでに各社さんからリリースされているフィギュアもクオリティの高いものがそろっています。そこで、さらにもう一段回クオリティの高いものを出せたらブランドのデビューとしては申し分ないだろうと。

 

――まさに“プルス・ウルトラ”の精神という訳ですね。セガさんといえばやはりプライズ(クレーンゲーム景品)のイメージが強いのですが、例えばこれまでに立体化してきたフィギュアのなかで人気だったアイテムなど、そういう市場データ的なものを「S-FIRE」の商品企画に役立てているのでしょうか?

 

竹中さん:実は、「S-FIRE」にはプライズ事業で培ったノウハウやデータは一切使用されていないんです。完全にゼロからのスタートになります。「これ、本当にセガが作ったの?」って言われるくらいのものを作ってやろうと思っています。

 

――それは意外でした。実際に彩色見本を拝見しましたが、仰るように非常に高いクオリティに加えて、専用アプリを介することでARエフェクト表現を楽しめる点がユニークですね。このアイデアは企画のどの段階で盛り込むことになったのですか?

 

竹中さん:ブランドの立ち上げ時期とほぼ同時ですね。スケールフィギュアは多数のメーカーさんがしのぎを削っている業界なので、そのなかでも注目してもらえるよう、付加価値のひとつとしてアピールできる要素だと考えました。

 

僕のヒーローアカデミア フィギュア 爆豪勝己

 

 

セガサミーグループだからこそ実現できた“フィギュア+AR”という体験

 

――こういったアイデアを実現できるかどうかという予想を立てるだけでも、実は結構難しいことなのではないかと思います。セガさんはグループ内でゲーム開発も行われていますし、そういったノウハウが活かされているのでしょうか?

 

竹中さん:仰る通り、ARのグラフィック製作は弊社でそういったゲームの開発に携わっている方々に担当してもらっています。「ウチだからこそできる!」ということで打ち出したアイデアではありますね。ただ、ARという要素を今後リリースする商品すべてに実装するのか、ARによる演出のパターンなども諸々研究中でして。作品にあわせて適宜ベストなAR表現をお見せできるよう、模索している段階です。

 

 

――AR表現を体験する際、ユーザーはカメラとARエフェクト、いわば2枚のフィルターを通してフィギュアを見ることになるかと思うのですが、それでもフィギュア自体の出来栄えの良さというか、印象が損なわれていない点が気になりました。

 

竹中さん:ご購入いただいた方全員がARを見られる環境にあるとは限りませんので、まずは商品自体の魅力が120%伝わるよう、きっちりと作り込むというところは前提に考えています。ARによる表現もフィギュア自体の演出を邪魔せず、よりイメージを増幅できるものを目指していますので、一旦フィギュアを完成させてからどう見せていくかを詰めています。

 

 

――そのほかにも、特に彩色面での工夫を感じます。なんというか、通常のフィギュアに比べてコントラストがパキッとしているような……。具体的にはどういった仕掛けなのでしょうか?

 

竹中さん:ARに負けないよう、ベタ塗りに近い塗装をしています。フィギュア単体で見た時の見栄えもいいですし、ARが乗った時にアニメっぽく見えるようになるんですね。あとは、例えば炎の照り返しで服がちょっと赤く見えるとか、そういうすごく細かい部分も作り込んでいます。さらに言うと、ARって透明感のあるデジタル映像なんですよ。エフェクト部分に透明パーツを使用すると、ARを重ねた時に互いを潰し合ってしまうんです。なので、極力透明パーツを使用しない方針で作っていますね。

 

 

ブランド発表の反応と、今後のラインナップについて

 

――そんなこだわり抜いた商品を発表してから3カ月以上が経ちましたが、周囲の反応や手応えのほどはいかがでしょうか?

 

竹中さん:ブランドサイトを立ち上げて製品写真を公開した後、色んな関係者や版権元、関連メーカーから「すごいものを作ったね」という問い合わせをいただきまして。今後のラインナップでは「新参なのによくこんなビッグネームの許諾が降りたな」というタイトルも控えています。自信を持って送り出せる商品を作れたことが、そういった展開につながっているという手応えはありますね。定番のものから「えっ、これ!?」と、ファンの皆さんの期待を良い意味で裏切るようなアイテムも準備中です。もちろん、『ヒロアカ』からも当面リリースしていく予定です。

 

――最後に、「S-FIRE」の今後についてのアピールや、リリースを楽しみにしているユーザーへのメッセージをお願いします。

 

竹中さん:『ヒロアカ』のほかにも、国内だけでなく海外でも需要が見込める、認知度の高いタイトルをラインナップしていきます。造形から表情から塗装から、見れば見るほど新しい発見があるような、企画コンセプトやクオリティが高い水準のアイテムを出していきたいと思っていますので、そこはぜひ、ご期待いただければと。可能な限り、多くの方に実物を見ていただけるようなプロモーションも頑張っていきたいと思っています!

 

――ありがとうございました!

 


 

フィギュア+AR表現を実現するために、専用アプリまで開発したという「S-FIRE」。ブランドラインナップ第1弾として『ヒロアカ』をリリースすることになったため、“個性”発動時に現れるエフェクトをAR化することにしたそうですが、本来「S-FIRE」から発売される商品に必ず実装される機能ではないとのこと。ただユーザーを楽しませるためだけに用意された、あまりにも贅沢すぎるAR体験をぜひ味わっていただきたいと思います。「緑谷出久」「爆豪勝己」は9月20日(月)から、公式サイトにてそれぞれ予約開始。『ヒロアカ』以降も海外需要の高い作品から商品化が予定されており、ゆくゆくは海外ユーザーからの受注対応も検討中なんだとか。今後の動向から目が離せない「S-FIRE」をお見逃しなく。

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

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