「フレームアームズ・ガール スティレット」(コトブキヤ)を作る<その2>

更新日:2016年2月2日 11:40

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大好評発売中の『フレームアームズ・ガール』(以下FA:G)第2弾「スティレット」製作記事の第2回。
フレームアームズファンにはおなじみ(?)のモデラー・ちいたわからしによる今回は部分塗装~成型色仕上げ作例の完成までをお送りします。

 

■モデラー:ちいたわからし……電撃ホビーマガジン2015年7月号ではフレームアームズ・ガール 轟雷の作例も担当した、フレームアームズ大好きモデラー。

 

■第1回記事:「フレームアームズ・ガール スティレット」(コトブキヤ)を作る<その1>

 

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編集部:さて、第2回です……って、いきなり完成画像ですか?

 

ちいた:今回は塗装解説がメインなので、工程を先に見せるより結果が見えてたほうが分かり易いかと思いまして。

というわけで比較画像。

 

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編集部:おぉ! 見違えますね!
というかコレで成型色仕上げなんですか? 全塗装っぽく見えるんですが……髪とか肌とかグラデーション入ってるし。

 

ちいた:全塗装してますん。

 

編集部:オイっ!

 

ちいた:いや、クリアコートでツヤのコントロールを全体に行ってるので「成型色活かし」ではありますが、「未塗装」ではないのでどう言ったものかと……。

 

編集部:その辺りの言葉のニュアンスは難しいですね。
前回の「表面処理」の話ではないですが、同じ言葉使っていても言ってる人によって違う作業だったりするので。

 

ちいた:ある程度の共通言語になっていても通じないこともままあるので、正しくは「成型色活かしつつ部分塗装とクリアコートで完成見本みたいに見える仕上げ」ですね。

 

編集部:長い……「成型色仕上げ」でいいです。

 

 

■パンツ

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ちいた:発売発表時に話題騒然となったパンツデカールから貼っていきます。今回はキット付属の中で一番貼りにくそうな青パンツにします。

 

編集部:直販限定の熊さん柄のデカールも話題となってましたね(苦笑)。しかしなんでデカールから? パンツにこだわりたい趣味でも?

 

ちいた:や、趣味に関しては強く否定しませんがちゃんと理由があります。
「デカールを貼る」→「乾燥させる」→「クリアコート」→「また乾燥させる」

と充分に乾燥に時間をとる必要があるので、乾燥時間に別の作業ができるように先に行います。

 

編集部:あぁ、効率を重視してのことなんですね。あと趣味に関しては否定しないんですね。変態!! 変態!! 変態!!

 

ちいた:できれば女子に言われたい言葉ですね。

 

編集部:あぁ、まぁ……ソッスネ。

 

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ちいた:まずは説明書に記載されている通り切れ目を入れます。

 

編集部:コトブキヤさんの説明書はこういった工作に関するHow toを入れてくれるから嬉しいですね。少し話は逸れますが、公式ページでABSの塗装法なども紹介してくれていますし。

※参考:ABSパーツに塗装したい! コトブキヤ

 

ちいた:フレームアームズブログなどでも積極的に工程が紹介されていたりしましたね。さて、話を戻してデカールを貼っていきます。

 

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編集部:デカール軟化剤ですね。でも2種類?

 

ちいた:効果の違う2種類を使用します。モデラーズのもの(左)はもう絶版ですが、「GSRデカール剛力軟化剤」が同じモノになります。名前の通り左が強く、右が普通の効果ですね。

参照:MSS-10 GSRデカール剛力軟化剤 グッドスマイルカンパニー

 

編集部:絶版品を紹介するんですか……紛らわしい。

 

ちいた:いや、デカール貼る作業をあまり行わないので昔買ったモノが残ってまして。

まぁ大量に使うものではないので1個持っていれば長く使えるので買っておいて損はないでしょう。余談が長くなってきたのでここからはガシガシ説明していきます。

 

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ちいた:水を含ませたキムワイプの上にデカールを乗せて水を浸透させます。
水に浮かせても良いですが、この方法だとデカールの粘着剤が流れ出すのを防げます。
ティッシュペーパーを使うとクズが溶け出してゴミがつくので、繊維が崩れない素材を使用しましょう。

 

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ちいた:最初にクレオスのマークソフターを下塗りします。
マークセッターという粘着剤が入っいてるモノを使っても良いですが、まれに粘着剤がパーツに残って汚れてしまうのでこの方法を好んでます。

 

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ちいた:台紙ごとパーツへ移動させてスライドさせながら貼っていきます。

 

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ちいた:筆で中の水を外に出しながら貼っていきます。
綿棒でも良いですが、水を吸った綿棒にデカールが張り付いて剥がれてしまうことがあるので、筆に水分を吸収させながら貼っていきます。

 

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ちいた:取り急ぎ貼り終えました。そこそこシワが残ってますが気にしないで裏も貼っていきます。

 

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ちいた:貼り終えました……が、今度は片側がズレて隙間が空いてしまいました。

 

編集部:ガシガシやるのはいいんですが、雑にやってませんよね……?

 

ちいた:いや、あの、ホラ、Howtoですし、失敗したほうが分かり易いですし……。
ここでデカール剛力軟化剤を使用して強引になじませていきます。強力な効果があるので破けないよう注意しながら軟化剤を塗布し、先程のように筆でなじませていきます。
塗布後、最低丸1日は乾燥させて、完成後も隙間が見えそうな箇所、先ほどズレた箇所に似たような色を塗装してリタッチします。

 

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ちいた:リタッチを終えてクリアコートも終えた状態。
若干シワも残ってますが、スカートの中に隠れるので神経質になることもないでしょう。

 

編集部:まぁ、パンツですし多少シワが入っても気にしなくて良い気がします。

 

ちいた:パンツだから気にしなくていいもん!!

 

編集部:急にそんなネタ振られても……どうしろと?

 

ちいた:いや、なんか言わなきゃいけない気がしました。
ちなみに、各工程に乾燥時間があるので4日程かけてます。

 

 

■筆塗り

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ちいた:先のデカールを乾燥させている間に、筆塗りで部分塗装していきます。

広い平面を塗るための平筆(左)と、筆運びをコントロールしやすい先細の面相筆(右)を使用します。

 

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ちいた:適度に塗りやすい濃度に薄めた塗料と、溶剤を用意します。
今回は油性アクリル(ラッカー系)塗料を使用していますが、他の水性アクリルやエナメル系の塗料を使用する際も基本的には同じです。

 

編集部:塗料に関しては詳細に説明すればキリがないので、専用の溶剤が必要になることを覚えておきましょう。
もっと知りたいという方は弊社の「カンペキ塗装ガイド」などを参考にしていただければ幸いです。

参考:カンペキ塗装ガイドDX (電撃ホビーマガジンHOW TOシリーズ)

 

ちいた:マジで色々参考になるのでオススメです!

さて、まずは面相筆で色の境目や塗料が垂れやすい箇所に塗っていきます。

 

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ちいた:塗っている最中にも皿に出した塗料が乾燥していくので、溶剤で調整しながら塗りやすい濃度をキープしましょう。

 

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ちいた:縁あたりを塗り終えたら30分程度乾燥させて、今度は平筆で1方向に塗っていきます。
盛大に下地の色が透けてますが、気にしないで塗り進めます。
我慢できずに乾燥前に塗り重ねると、せっかく塗った最初の色を筆で引っ張って剥がしてしまったり、不必要な箇所を厚塗りしてしまって塗り痕が目立つのでグッと我慢です。

 

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ちいた:1時間以上乾燥させてから今度は交差方向に塗り重ねていきます。
交差させることで最初の筆痕を目立たないように色を塗り重ねることができます。

 

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ちいた:ちょっと画像が白飛びしてますが上の工程を何度か繰り返した状態です。ほとんど筆跡が気にならなくなりました。

 

編集部:逐一乾燥時間があるのが煩わしいですね。エアブラシだとマスキングこそ必要ですが、ブワーっと塗れちゃうので楽そうです。

 

ちいた:作業効率やスピードで言えばエアブラシのが楽ですけどね。
模型趣味ってソレを追求するものではないですし、いわゆる簡単仕上げを謳っている記事でエアブラシ+コンプレッサーを標準装備してることを前提とするのはいかがかなと。

 

編集部:いや、缶スプレーでもいいじゃないですか。

 

ちいた:……あ。

 

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ちいた:さて、気を取りなおして、先の羽パーツの乾燥待ちの間に細かいパーツなどを塗ってきます。

 

編集部:パンツのときと同じく、乾燥時間を有効に使って塗っていくんですね。
……それにしても。

 

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編集部:盛大にはみ出してますけど……。

 

ちいた:いいんです。全体の青は成型色を活かすので、神経使ってハミ出さないことに注力するよりも、必要な箇所に色を乗せることに注力します。

 

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ちいた:はみ出した箇所にアートナイフなどのナイフの刃を立てて、カンナのようにカリカリと削っていきます。

 

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ちいた:ハミ出した塗料を削り終えた状態です。
下地の色を活かすからこそできる作業です。

 

編集部:でも削った痕がまだ目立ちますね……。

 

ちいた:コレは後に行なうクリアコートで消えるので気にしなくてもOKです。
説明してるのは白ですが、他の濃紺やグレー、黒なども塗っていきます。

 

編集部:一個一個説明していくと長くなるので、まとめた画像で紹介しますね。

画像サイズが大きいので、新しいタブやウインドウで開いて見てください。

 

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ちいた:ちなみに黒とグレーはガイアノーツの瓶入りサーフェイサーを使ってます。
サーフェイサーは乾燥後の収縮が大きいので、多少厚塗りしても縮んで筆痕が目立たなくなります。

全体の塗分けが終ったらクリアコートして乾燥させます。

 

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編集部:ツヤ有り……ですか? ツヤ消しではなく?

 

ちいた:筆痕の段差をクリアの厚みで消す効果とスミ入れの保護も兼ねています。

 

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ちいた:塗分けを行なった箇所はタミヤエナメルでスミ入れしていきます。
この記事をここまで読んでくれるような方はご存知の方も多いと思いますが、エナメル溶剤は浸透(侵食)力が高く、プラ地にそのまま流すと割れてしまうことがあるので、油絵の溶き油、ペトロールで希釈してできるだけエナメル溶剤分を減らして使用します。

先ほど編集部氏は専用の溶剤を~と話していましたが、きちんと特性を理解すればこのようにペトロールなどで代用することもできるんです。

 

編集部:なるほど。そのためのクリアコートなんですね。
ツヤ消しだとザラついたパーツに色が滲んで拭き取りにくくなってしまいますし。
……あれ?

塗分けしてないパーツはどうします? 全部クリアコートするんですか?

 

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ちいた:おなじみガンダムマーカーを使用します。

 

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ちいた:これが今回、塗分け等を行っておらず黒でスミ入れしたいパーツです。
ペンでプラ地に書いていきます。

 

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ちいた:一般的にはスミ入れペンのはみ出しは消しゴムで消していきますが細かい作業はしにくいので、コンパウンドで消していくとコントロールが非常に楽になります。

 

 

■コピックによるグラデーション

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ちいた:今度は髪の毛を立体的見せるためグラデーションを入れていきます。

あらかじめ表面処理を終えたパーツに缶スプレーでツヤ消しを吹いておきます。

 

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ちいた:グラデーションに使うのはコピックです。
コピックはブレンダーという消しペンがあるので、影色を書き込んでからボカシて不自然にならないよう陰影をつけていきます。

 

編集部:ツヤ消しを吹いておくのはコピックを定着させるためなんですね。

 

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ちいた:最初はこのくらい、ピンポイントで書き込みます。

 

編集部:完成画像と見比べると少ないように感じますが……。

 

ちいた:ブレンダーで消すこともできますが、染料が回り込んで消しにくくなったり、やりすぎて汚くなることを防ぐため、最初は少ない量で延ばしていき、バランスを見ながら書込みを増やしていきます。

 

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ちいた:ブレンダーで伸ばしつつ書き込みを足して陰影をつけていきます。
自分の好みの状態まで仕上がったら乾燥させて再度ツヤ消しスプレーで定着させます。

 

編集部:最初に定着のためにツヤ消し吹いたのに、またツヤ消しするんですか?

 

ちいた:簡単にいうと、最初はプラ地をキャンパス(書き込む下地)にするためのツヤ消し。
今やるのは、塗ったコピックが手の油などで擦れて溶け出さないようにコーティングするという意図があります。

 

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ちいた:仕上がった状態です。
影になりそうな部分と光が当たる部分、その境界が適度にボケて、良い塩梅のグラデーションにできたかと思います。

 

編集部:成型色仕上げなので、適度に光が透けたり拡散したりして柔らかい印象になりますね。

 

 

■パステルによるグラデーション

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ちいた:今度は肌部分にパステルでグラデーションを施していきます。

 

編集部:こっちもコピックじゃダメなんですか?

 

ちいた:コピックでも良いのですが、様々な方法論の提示ということで。
個人的には染料のコピックで塗るよりも、粉を擦りつけるパステルのほうがコントロールしやすいです。塗料を塗るコピックよりも定着力が弱いのが難点ですが。

 

編集部:定着……ってことは今回もツヤ消しで下処理しておくんですね。
パステルは何か専用のモノを使うんですか?

 

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ちいた:普通に一般的なパステルを使っています。
フィギュア向きの商品もありますが、まだまだ色数も少ないので、混色して好みの色を作れる一般的なモノを使用します。

 

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ちいた:400番程度の紙ヤスリで磨りおろしながら、肌の影色を作ります。

 

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ちいた:100円均一などの化粧コーナーで売っている化粧筆を使って影になる部分に擦りつけていきます。
はみ出した部分は普通の筆で払い落としたり、濡らした綿棒などで拭き取って調整していきます。

 

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ちいた:仕上がるとこんな感じにして、ツヤ消しスプレーで定着します。

 

編集部:なんだか微妙な違いですね。

 

ちいた:パーツ単位でみるとあまり目立ちませんが……

 

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編集部:おぉ! セクシー!

 

ちいた:適度な影になって人間味が増したかと思います。
化粧と同じような感じなので、パーツ単位でハッキリさせてしまうとパーツを合わせたときにケバくなって少女っぽさが消えてしまうので、塩梅には注意が必要です。

 

編集部:あえて濃いめにすることで違うキャラクター性を持たせることも可能そうですね。

 

ちいた:今回は頬紅など、ピンク系の陰影はパステルで行ってます。
コピック=色を滲ませるグラデーション
パステル=色を乗せるグラデーション
という形で使い分けるといいと思います。

 

 

■成型色仕上げ完成!

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ちいた:一通りの作業を終え、メンタムでグリスアップしながら組み立てて完成です。

 

編集部:冒頭で完成画像を出してますので、そんなに感動はありませんね。

 

ちいた:ウグっ! 最初に完成画像出すのはこういう弊害がありますね……。
せっかく成型色仕上げで動かしやすいので、遊び画像も貼っておきましょう。

 

編集部:あぁ、また撮ってきたんですか、懲りませんね。

 

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【アナタの積み(罪)を数えろ!】

 

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【特に乗り物乗らない人キィーーークッ!!】

 

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【ボク、スティレットちゃん】

 

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【働きたくない】

 

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【うぉぉぉぉ!!!!】

 

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【逆立ち】

 

 

編集部:……ふざけてますよね?

 

ちいた:はい。自宅で撮れるぶん、超真面目にふざけてます。

 

編集部:ぬ、悪びれない……だと……。

 

ちいた:こういうのもこのサイズのプラモの楽しみ方だと思うんですよね。
成型色仕上げなので塗装剥がれもほとんど気にせずガシガシ遊べますし。

 

編集部:だからといってコラ画像みたいなオフザケばかりでも困りますけどね。

 

ちいた:まぁ、楽しみ方の提示ということで。

 

編集部:何かもう終わった感じになってますけど、前回ちいた氏から提示されたクファンジャルへの改造を全く行なってないですからね。
まだ序章みたいなモノですからね!

 

ちいた:チっ! バレたか……。
基本となる工作は今回でも紹介できたので、次回からは改造を中心に紹介できそうですね。

 

編集部:今回はバルチャーのときにあまり紹介できなかった塗装に関してもガッツリ書きましたね。
追いかけてくれる読者の方は、無理に一気読みせずにゆっくり何回かに分けて読んでくださいな。

 

ちいた:とりあえず今回で成型色仕上げは完成ということで。

 

編集部:そうですね。
クファンジャルが完成したら今回の成型色仕上げもスタジオでちゃんとした写真撮ってあげますから、頑張ってください。

 

ちいた:まじっすか! これは雑コラ用の小物をいっぱい用意しなくては!

 

編集部:はいはい、今度は遅刻しないでくださいね。(この人に任せて本当に大丈夫なんだろうか……。)

 

 

<DATA>

フレームアームズ・ガール スティレット

■NONスケールプラスチックキット

■全高:約150ミリ

■価格:4,800円(税抜)

■原型製作:清水 康智

■発売中

■発売元:コトブキヤ

 

<関連情報>

フレームアームズ・ガール スティレット コトブキヤ製品ページ

フレームアームズブログ

アーキテクトマン公式twitter @faman_type001

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