初代のプラモ制覇!!電ホビ版第6回――ニッパーの力学~プラモ用こそが最上位機種という奇跡~
さて今回の奥の院、初出の「道具、材料編」でもあることだし、少々蘊蓄からいってみたい。
ニッパーとはそもそも日本語名で、英語ではdiagonal cutting pliersと言う。
「ニッパー」の名称が定着しているのは日本だけであり、海外では文字通り『切断力のあるプライヤー』、つまりペンチの一種という認識で、ニッパーという“独立した工具”感は日本特有なのだ。
そして、この種の道具は本来どこが専門であるのか? そう、もちろん主流は金属線切断業界(笑)である。ただこの種の業界では強度、耐久性、切断力、絶縁性などは問われても切断面の美しさなど求めはしない。
ではこの種の道具で切れ味が問われる物というと……
爪切などのネイル用品。盆栽などの植木ばさみ類くらいだろう。
これとて、爪切にそれほど厳密な切れ味は求められないし、ネイル用はむしろ装飾性重視、植木用は楽な切り応え重視ではなかろうか。
プラモデル用ほど切れ味に固執するニッパーは全世界に存在しないのだ。
●プラモ制覇的究極のゲートカット
さて、そんなニッパー界、最上位機種を駆使する「模型人」としての自覚と尊厳を持って、奥義、2度切りならぬ「マルチ切り」を伝受したい。
通常の2度切りについては前述の通りだが、キャプションにもある通り、1度切りよりは遙かにマシと言いながら、所詮ナイフやヤスリに頼らなければならない中途半端な技。
数式まで持ち出しておいて、2度切りでお仕舞いでは余りにも竜頭蛇尾。
先ほどの1度切りの後からもう一度、プラモ制覇的究極のゲートカットをご覧に入れよう!
では1ミリ程度残したゲートを、実際にどのくらいの薄さに、どのくらいの回数攻めることができるかを例の動画でご覧頂こう。
<ゲート多数回切り>
恐らく、ほとんどの方は「ニッパーってこんなに切れる物なのか!?」と感じられたことだろう。
普段、いかにニッパー本来の切れ味が発揮されることなく切断が行なわれているかが、ご理解いただけたことと思う。
●応用的に板などを切る
最も代表的なニッパーの使い道としてゲート処理を解説したが、もちろんこのマルチ切りは板材やキットパ-ツにも使える。
考え方は同じで、厚く堅い板であっても薄切り法ならばバターのように切れるし、みだりに切り込んでパーツを割ってしまう危険も回避できる。
<板でもスライス動画>
そもそもニッパーは、それほど大きいわけでも、複雑なわけでもなく、タングステン鋼や、モリブデン鋼等の高級材料も必要としない。
かなり古くから「プラモデル用ニッパー」が登場しているのは、独自に開発したとて、せいぜい刃先の長さや角度、厚みを調整といった程度で、さほど高額な開発経費が掛からないことも幸いしたのだろう。
プラモデルにとっては一番最初に必要とする重要道具でありながら、既存他業種用ニッパーがプラモデル使用にふさわしい性能を持っていないという、極めて珍しい状況も手伝っていただろう。
おかげで現在プラモデル用ニッパーは、その切れ味、使いやすさにおいて、ニッパー界最高の逸品であり、幾多の怪しげな「プラモデル専用◯◯」が乱立する中にあって、ニッパーだけは胸を張って名実ともに「プラモデル専用ツール」の名を冠することができるのだ。
著者:鋭之介・初代・日野
月刊電撃ホビーマガジン誌 初代ガンプラ王。プロモデラー原型師。各模型誌で活躍中!
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