「Technics」伝説の名機をミニチュアで再現!圧倒的凝縮感から産まれる可愛さと凄み――ケンエレファント開発者インタビュー

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家具に駅弁に喫茶店の名物メニューにDIY……日々、数多くのアイテムが発売されるカプセルトイ・ミニチュアトイの中でも、ひときわ異彩を放つアイテムをリリースするケンエレファント。2000年に創業し、コンビニや大手メーカーのノベルティグッズで一世を風靡。海洋堂とタッグを組んで展開した「ボトルキャップフィギュア」を覚えている読者諸氏も多いことでしょう。

 

ケンエレファントがオリジナルアイテムでカプセルフィギュア市場に参入したのは2015年。ミニチュアフィギュアを用いて新たな市場を開拓していくスタイルは異業種メーカーとのコラボという化学変化を生み、「ミニチュアコレクション」シリーズとして結実。今では80を超えるラインナップを誇る人気シリーズとなりました。

 

その「ミニチュアコレクション」の最新作「Technics(テクニクス)ミニチュアコレクション」が、2020年12月4日(金)より順次発売となります。Technicsといえば、パナソニック(発売当初は松下電器産業)が世界に誇るハイエンドオーディオブランド。1965年に発売されたスピーカー「Technics 1」を皮切りに、様々な音響機器をリリース。特に1972年に発売されたレコードプレーヤー「SL-1200」は世代を重ねて今なお生産され続けている大ヒット作です。その安定した音質と耐久性はDJ文化発展の一助となり、現在においてもその重要性は変わりません。

 

世界中に熱狂的なファンを擁するTechnics製品のミニチュア化は、当時、憧れのまなざしでショーケースを見つめていた世代はもちろん、クラブでターンテーブルを回す現役DJ、そして何より全てのオーディオファンにとって大きなニュース! 果たして本企画はどのような経緯で立ち上がったのか? 歴史的名機をなぜミニチュア化しようと思ったのか? そして込められたこだわりは……。異色のミニチュアフィギュアシリーズ、その生みの親である担当者のみなさんに開発秘話を伺いました。

 

今回、インタビューにお答えいただいたみなさん

スーベニア事業部 部長 樽見純氏
企画開発部 部長 小嶋喜徳氏
営業部所属 ライセンス担当 蒲地加代子氏

 

伝説の名機、念願のミニチュア化

 

――そもそもからのお話になってしまうのですが、今回、新たなコラボ先にTechnicsを選んだ理由を教えてください。

 

樽見:弊社の代表(※編注:ケンエレファント代表取締役社長 石山健三氏)がTechnicsの製品をミニチュア化したいと前々から言っていて、実は以前にも打診したことがあったんです。その時は許諾をいただくことができませんでした。その後、また社内でミニチュアの企画会議をしているときに再度お話を聞いてもらおうと、改めてアタックをしたというのが今回のはじまりです。

 

――では、念願の企画がようやく、というワケですね。

 

蒲地:ええ、そうなんです。おかげで社長もだいぶ力が入っているというか、入りすぎているというか……今もずっと力が入りっぱなしなんですよ。誰も回せないのにDJブースを作っちゃうくらい(笑)。

 

▲大きさの対比用に実機と一緒に撮影。実機のSL-1200LTDは社長の私物(!)。

 

樽見:社長はTechnicsド真ん中の世代なんです。実際に製品を持っているし、思い入れもひとしお。そして、同じような想いを抱いている人が全世界にいらっしゃる。「好きだから」がスタート地点なのは間違いないですが、実際に「やろう」ってなった理由の一つは、そういうファンの方たちの存在なんです。

 

――長い歴史を誇るブランドですから、ミニチュア化したい製品がたくさんあったと思います。今回登場する製品を選んだ理由は? 特にSL-1200シリーズから、この3つを選んだ理由もお願いします。

 

樽見:SL-1200に関しては伝説の名機ですから、やっぱり外せないですよね。その中からMK2とMK7、そして記念モデルのGLDを選びました。

MK2はモンスター級の売り上げをあげてSL-1200の評価を不動のものにした存在だからですね。そして、その流れを受け継ぐ最新モデルとしてMK7を選びました。GLDは300万台突破の記念モデルで実機を手に入れるのは難しいですし、本物を見る機会もほとんどないモデルなんです。なので、ミニチュアででも手にしたい方は多いだろうなあ、と。

 

そして、クラブシーンの時代を変えた存在としてCDJのSL-DZ1200と、DJブース再現に必要な不可欠なミキサーとしてSH-DJ1200を選びました。

 

▲名機「SL-1200MK2」を手のひらサイズで再現!

 

“高性能”ミニチュアフィギュア!?

――どれも、ものすごく細かなところまで再現されていますよね。実際の製品からミニチュアモデルを制作される際に、Technics側から何かリクエストはあったのですか。

 

小嶋:実は先方も造形物のコラボは過去に例がなく、お互いに手探りで企画がはじまったんです。そこで弊社が過去に発売したミニチュアを例に、「ここまでは再現できます」「ここは文字を省略させて欲しい」といった文字資料を作成してご説明をしたところ、だいぶ安心してくださったようで……やりとりをしている時の先方からのメールの件名が「高性能ミニチュアにつきまして」となっていて――

 

蒲地:――高性能!? 期待値が猛烈にあがっている! って(笑)。

 

小嶋:これは中途半端な段階のものはお見せできないぞ、と。どの段階で原型をお見せしようか、タイミングを計りながら開発を進めていった感じです。

 

樽見:同じ機械でもマイナーチェンジされている箇所があったりして、どちらの仕様が正しいの? と、Technicsさんと相談しながら仕様を詰めていきました。

 

蒲地:裏なんて、もうどれがどれやら……。

 

――裏といいますと?

 

樽見:造型するときに一番見るのは上からの顔ですが、当然裏(下面)もあるんですよね。で、よく見たら各機種で相当に違う。しかも原型状態では当然色が塗られてませんから、開発初期は3種の違いが私たちも把握しきれてなくて、もう何がなにやら……。

 

小嶋:このダストカバーも、どれがどれ用かわからなかったよね。

 

樽見:そうそう、ツメがあるカバーと、ないカバーがあるんですよ。ツメがないのはただかぶせるだけなんです。しかも、どれも微妙に違う。

 

▲モデルによって形状が異なるダストカバー。MK7(一番右)のみかぶせるタイプでツメがない点に注目。

 

小嶋:この違いを製造工場の人たちに説明するのが大変で大変で……説明したMK2用の仕様が、MK7にも適用されてたこともありました。でも、そんなの絶対わからないじゃないですか。他にも、ボタンの位置やカウンターウェイトの形状をはじめ、似ているけど異なる部分がたくさんあるんです。

 

樽見:大まかにはどれも一緒に見えるので、パッと見て同じ原型を使っているように見えますが、全て違うんですよ。

 

――開発時に特に気をつけた点、注力した点はありますか?

 

小嶋:造型に関してはお任せいただいてましたが、先方からもお願いされていたロゴの再現ですね。「潰れないようにしてください」と。ロゴに関しては企業の顔といえる存在ですから。他のタイトルでも相当に注意しているんですが、今回は小さなプリントが多いので、特に気を使いました。

 

蒲地:プリントに関していえば、SH-DJ1200が一番ハードルが高かったんですよ。この天板をどうやって再現しようか、開発陣はかなり苦労していました。結局、ミキサーの天板だけ別のパーツにして、はじめにプリントしてはめ込む手間のかかるやり方で再現をしています。

 

小嶋:製品に入っている文字や装飾をきちんと再現できないと、造型ができても物として成立しないという危機感を企画当初から感じていたので、実際に動き出した時には「どうしよう……」って、正直思っていました。

 

樽見:先に造型を用意して、そこにタンポを印刷したら微妙にズレて合っていないとか、そういうことはかなりありました。造型とタンポのプリントをいかにうまく合致させて組み立てられるかは、かなり厳しくチェックを入れています。

 

――相当に細かく作られているんですね。これはTechnics側のチェックも大変そうですね……

 

蒲地:今回の監修に携わっているのは十数人もいらっしゃって、実際に機械を造っている方もいらっしゃると伺っています。窓口をご担当いただいている方は、“製品の性能や特性についてはお答えできるけど、細かな形状の違いまでは私も難しいかも……”っておっしゃってました。

 

樽見:Technicsさんとしては、製品の説明をするならば音質や仕様が第一じゃないですか。そういう“形や色”について質問されたことって、おそらく初めてなんだと思います。

 

小嶋:カウンターウェイトの形状についての質問なんて、普通は絶対ないもんね(苦笑)。

 

蒲地:実際の製品を開発されている方たちは、今回の製品監修をとても楽しみにしてくださっていて。認められたみたいで、やっぱりうれしいですね。

 

写真で注目ポイントをチェック!

ここからは写真を中心に注目ポイントを紹介します!

 

まずSL-1200の3アイテムから。話に上がっていたとおり、パッと見は同じように見える3機種。ですが背面の形状はどれも別で個性的。さらに、カウンターウェイトやターンテーブルの形状も異なっています。当然、モデルごとの操作性の違い(ボタンの配置など)も再現!

▲(上から時計回りに)GLD、MK7、MK2の開発原型。プリントがない分、スイッチの有無や形状の違いが分かりやすいですね。

 

▲(左から)MK2、GLD、MK7の背面。表面とは打って変わり形状が大きく異なっています。

 

▲(上から時計回りに)MK2、MK7、GLD。モデルごとにカウンターウェイトの形状が異なっていますね。

 

特に注目したいGLDは、貸し出し可能な実機がパナソニック社にもなく、開発時のモックアップ(形状確認用の実物大模型)を元に造型を進めていったそうです。ですが、そのモックも製品とは細かな差異があり、それを製品版に近づけるべくTechnics側と協力して造型を進めていったとのこと。

▲SL-1200GLD

 

プリントのハードルがもっとも高かったというSH-DJ1200。天板の細かい部分はもちろん、背面にも注目です。すべてこの密度でミニチュア化されています。

▲SH-DJ1200

 

こちらはSH-DJ1200とセットとなるステレオヘッドフォン EAH-DJ1200と、ターンテーブルのラッキーver.についてくるLP盤。レコード盤面の再現度の高さに注目です。

▲EAH-DJ1200とLP盤のサンプル。盤面の再現度がすごい!

歴史を変えたCDJ、SL-DZ1200。未来的なフォルムはミニチュア化でもバッチリ再現、CDも出し入れ可能! 中央はクリアパーツが用いられ、その奥にモールドが印刷されているというこだわりよう。拡大しないと見えない!

▲SL-DZ1200

 

▲実機どおり、CDがスロットイン!

 

▲SL-DZ1200の開発サンプルを真上から撮影。中央、クリアパーツの奥にプリントされたモールドがおわかりいただけるでしょうか。

 

世界中にある普遍的なものを精巧にミニチュア化していきたい

――「Technicsミニチュアコレクション」から少し外れた質問になってしまいますが、御社が工業製品をミニチュア化しようと思ったきっかけって何なのでしょうか。

 

樽見:経緯として、これまで海洋堂さんと組んでたくさんのカプセルトイとミニチュアフィギュアを作ってきて、“世界中にあるモノを精巧にミニチュア化したい”っていう想いが弊社にはあります。長く愛されてきたもの、いつの時代にもある廃れないもの。そういった品をミニチュア化してコレクションできたら、面白いと思ってます。

 

――実際の品だと、コレクションするにもハードルが高いですものね。

 

樽見:あと、もう一つの要因としては、ミニチュアフィギュアの時流というか、楽しむ方の年齢層が広がってきて、大人の方もカプセルトイを回したりするようになりました。おかげでリアルな製品ミニチュアが受け入れられるようになり、また新しい層が入ってくるという循環が起きていると感じています。

 

――実際の工業製品をミニチュア化するとき、注力しているところ、心がけていることはありますか?

 

樽見:うーん、そうですね……ミニチュア化したときに可愛いというか、パッと見でそれに見えるか……でしょうか。もちろん、そのまま縮小してもらしくはなりませんから、ここは省略してあそこは強調させよう――みたいなことはします。本当にパッと見で忠実に見えるかというのは、ものすごく大切なことなんです。

 

小嶋:設計時のデータ上では、いくらでも詰められるんですよ。でも、実際に立体にしてみると、できることとできないことが見えてくる。特に生産側からはパーツの厚みや数などたくさんのリクエストが上がってきます。それらを反映し、不格好ならどうするのか――取り除くのかそのままいくのか、別のやり方を考えるのか――そういうトライ&エラーを何度も繰り返して社内で検証し、ベストの状態まで持っていくんです。

あとは、必ずロゴを入れることですね。本当は入ってなかった商品も、どこかに入れるようにしています。

 

――社内のやりとりの密度が、製品のこだわりに反映されているんですね。

 

小嶋:やっぱり(コラボしている)先方は不安だと思うんですよ、自分たちの商品がどういう風にミニチュア化されるのか。基本的にお任せいただければ悪いものは作らないという自負はありますが、そこはやってみないとご理解いただけないですから。

 

樽見:最初の頃は大変だったよね。「え、ミニチュア?」って言われて(笑)。

 

小嶋:いやもう、本当に大変でした……どんなものになるのか想像がつかないので、どんなに説明しても先方のご理解が得られないんですよ。

 

樽見:実績を積み重ねてきたことで、版元さんへのご説明もだいぶスムーズになりました。サンプルをお見せすると、「ああ、あの!」って言ってくださる。これはありがたいですね。

 

蒲地:ライセンス担当としては、企業さんとのコラボってとても楽しいんです。ある企画で伺った企業さんから、別の会社さんや販売先を紹介していただいたこともあるんですよ。私たちが組みたかったメーカーさんからお声がけをいただいたこともありました。こういう繋がりが広がっていく様は、キャラクターものでは味わえない面白さですね。

 

▲ケンエレファント本社の会議室の壁面には、これまで製作してきたミニチュアコレクションがズラり。写真はごくごく一部(!)。

 

――企画のスタートから開発、発売まで、社是というか社風の「すべてのことを面白くする」で繋がっているんですね

 

樽見:面白いって、やっている人たちが本気でないとダメですね、アガんない。

 

蒲地:会議でよく出ますよね、「アガる・アガらない」って。

 

樽見:言う言う、「アガんなよ~」って。

 

蒲地:ウチの企画会議では、最終的に担当になる人がアガればGoがでるし、アガらなければボツになります。

 

小嶋:やっぱり他社さんがやっているのは、やりたくないっていうのはありますね。

 

樽見:どの企画でも、それぞれ何かにチャレンジしたい、新しい要素を詰め込みたいって思っています。前に試したから今度は別のやり方でやろう、新しいことを取り入れて行こう、って。

 

小嶋:もっと簡単に作れる方法ってあると思うんですよ。でも結局、難しい方、難しい方に行ってしまうのは弊社の性(さが)ですね(苦笑)。

 

――最後になりますが、ミニチュアの魅力はどこにあると感じますか?

 

樽見:さっき言った内容とかぶっちゃいますが、すごい似ている小さな物って、無条件に可愛いし凄みがあるじゃないですか。これは普遍的なものだと思います。

 

弊社の製品は、ミニチュア化するときにわざとスケールを統一させてないんです。価格に見合うサイズ感、モノとして可愛いサイズを突き詰めたい。もう、そこにあるだけで可愛い――そう言ってもらえる存在感のあるミニチュアをこれからも作っていきたいですね。

 

――本日はありがとうございました。
(2020年11月、ケンエレファント本社にて収録)

 

DATA

Technics ミニチュアコレクション

  • カプセル商品/ブラインドBOX商品
  • 全5種
  • 素材:ABS、PVC、紙(LPジャケット)
  • 企画制作・発売元:ケンエレファント
  • 価格:カプセルトイ 1回500円(税込)、ブラインドBOX 1個500円(税別)
  • 2020年12月4日(金)より順次発売予定
  • 販売場所:全国のカプセルトイ売場、ホビーショップ、オンラインショップ、タワーレコードをはじめとしたレコードショップ、ロフト(一部店舗)、パナソニック ミュージアム、ケンエレスタンド秋葉原店・新橋駅店、上野ランドなど

※Technicsは、パナソニックの商標または登録商標です。
※本商品はパナソニックとの契約により、ケンエレファントが企画・販売するものです。
※本商品は、日本国内のみの販売となります。
※本商品の対象年齢は15歳以上です。
※実際の商品とは、仕様が異なることがあります。
※商品は中身が見えないブラインド仕様での販売となります。商品を選んで購入することはできません。
※販売開始時期は店舗によって異なります。

 

 

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