「フレームアームズ・ガール スティレット」(コトブキヤ)を作る<その1>
今回は第1弾の「轟雷」に続いて『フレームアームズ・ガール』(以下FA:G)シリーズに加わった、大好評発売中の第2弾「スティレット」を製作していきます。
先日掲載した『フレームアームズ』バルチャーの作例記事に続き、フレームアームズファンにはおなじみ(?)のモデラー・ちいたわからしによる製作記事をお届けします。
■モデラー:ちいたわからし……電撃ホビーマガジン2015年7月号ではフレームアームズ・ガール 轟雷の作例も担当した、フレームアームズ大好きモデラー。
■今回のお題:
「スティレット」
フレームアームズ・ガール スティレット コトブキヤ製品ページ
■編集部にて打ち合わせ
編集部:前回はフレームアームズですが今回はガールの方です。
どんな感じで作っていきましょうか?
ちいた:一応、前回のバルチャーの完成記事を貼っておきますね。
「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その5・完結編>
電撃ホビーマガジン2015年7月号では轟雷ちゃんを、バリエーション機であるウェアウルフスペクターをモチーフにして製作しましたが、今回も同じ路線でスティレットをバリエーション機のクファンジャルをモチーフに製作していきたいと思います。
編集部:轟雷ちゃんって言うと、コレですね。
▲フレームアームズ・ガール ウェアウルフ・スペクター&轟雷/ちいたわからし/電撃ホビーマガジン2015年7月号掲載
ちいた:昨今はFA:Gをはじめとして1/12女の子フィギュア全盛ですけど、せっかくの“フレームアームズ”・ガールなので、電撃ホビーウェブでは『フレームアームズ』の部分を大事にしていきたいですね。
編集部:なるほど。いいんじゃないでしょうか。
(最初の打ち合わせの時は、シッカリした人に見えるんだけどなぁ……。)
ちいた:文字だから見えてるけどな!
まぁ正論なので返す言葉もないですけどね(汗)。
編集部:ただ前回のバルチャーと違って、今回はあんまり時間をかけてるといわゆる「旬」が過ぎてしまうかなぁーって。
ちいた:そうですね、熱心なユーザーはもう完成させて楽しんでますし、FA:G作例コンテスト(フレームアームズ・ガール・ユニバース2015 –FAGU2015-)などの参考にしてもらうという意味でも、考えないといけないところですね。
ということで、今回は組んだ後でも手を入れられる加工の紹介をしながら、成型色仕上げとクファンジャル改造の2本立てにしたいと思います!
編集部:それはいいですね!
即応性の高いウェブ記事ならではって感じです!
だからと言ってゆっくり作れるわけでもないですけどね!!
ちいた:あぅぅ……(泣)
■まずはキットを見てみよう!
ちいた:まずはストレートに組んだ状態を見てみましょう。
編集部:あ、通常のスティレットと並べたんですね。
こうして見ると原型機とガール化で見事に特徴を捉えてますね!
曲面が多いぶん、轟雷ちゃんよりもガール化向きなのかもしれません。
ちいた:このスティレットちゃん、製品として後発だから当然といえば当然なんですが、通常の『フレームアームズ』の部品として見ても魅力的なパーツがたっぷりなんです。
編集部:『フレームアームズ』ファンの間でも発売直後話題になってましたね。
電撃ホビーウェブでも以前インタビューした股関節のABSパーツ化や、カカトのタイヤ部スィング等など非常に安定した製品だと思います。
※参考:「FA:Gスティレット」について、コトブキヤのプラモデル開発担当にお話を聞きました!
ちいた:それもそうなんですが、個人的には武器も魅力的なんですよ!
ちいた:ガール化に合わせてそれぞれダウンサイジングされていて、オリジナル武装を作る幅が広がったんです!
編集部:『フレームアームズ』シリーズはオリジナル機体を作る方が多いですからね。そういった意味でも魅力的かもしれません。
ちいた:そう! 『フレームアームズ』に熱中していた方も武装目当てで『FA:G』を買ってみて、少女モデルの魅力にどっぷりハマるきっかけに!
■制作開始!
編集部:さて、そろそろ作っていきましょう。
ちいた:まずは成形色仕上げ、改造共に使える作業を紹介していきます。とにもかくにも最初はこれ。ジョイント部の調整から。
編集部:バルチャーのときにも行なった、ハイキューパーツさんの面取りビットですね
※参考:「XFA-CnV バルチャー」(コトブキヤ)を作る<その2>
ちいた:摩耗に強いABS製とはいえ、角は取って余分な負荷は低減させたほうがよいですからね。
今回はバルチャーで紹介してなかったグリスアップについても紹介したいなと。
編集部:……これ、冬場に大活躍のメン◯レータムですよね?
市販のグリスやシリコンスプレーじゃ駄目なんですか?
ちいた:全然OKですよ~。でもキャラ模型とかフィギュアって頻繁に手で持って遊ぶじゃないですか。
いわゆる「ブンドド」するでしょ?
毎晩枕元でオレロボット対戦が繰り広げられるでしょ!
編集部:……毎日はしねぇよ!
ちいた:ニヤリ。
そんな風に遊ぶとき、グリスだと肌に良くないですが、メン◯ムだったら手についても潤いが与えられるのです。
編集部:あー……なるほど?
何だかいい匂いがしそうですが、どちらにせよグリスアップによる負荷軽減で破損リスクが減るのは良いことですね。
ちいた:綿棒などに少量取って、可動部になじませていきます。
もちろん塗装する場合は塗装後の組み付け時に塗ります。
肩、肘、膝、カカトなど、可動部の処理が一通り終ったら今度は各パーツを接着していきます。
編集部:可動部はABSパーツが多いですが、やっぱりABS用接着剤を使用するのですか?
ちいた:それでもいいのですが、僕はABS用接着剤の独特の粘度がちょっと苦手なので、瞬間クリアパテを使用して接着していきます。
※参照:M-03r 瞬間クリアパテR ガイアノーツ製品ページ
ちいた:適当なパレットに適量出し、爪楊枝などでパーツの片面に塗っていきます。
ちいた:塗り終えたらパーツを挟み込んでムニュっとはみ出させます。
この後、硬化スプレーで固めれば数十秒で硬化するので、紙ヤスリなどで整えていきます。
編集部:瞬間クリアパテやウェーブ社製の黒瞬着など、いわゆる瞬間接着パテはゼリー状接瞬間着剤に比べ切削性が高く作業しやすいですが、硬化スプレーがないと非常に硬化が遅いので注意が必要ですね。
ちいた:ちょっと作業が前後しますが、ヤスリによる処理を終え、つや消しスプレーで傷消しをした状態です。
編集部:完全に継ぎ目が消えるとはいきませんが、ここまで目立たなくなるんですね。
そういえば、普通の溶剤系の接着剤でも言えることなんですが、細かい可動パーツが多いキットだとはみ出させる接着って怖くないですか?
可動部ごと接着しちゃいそうで。
ちいた:そんなこともあろうかと!
ちいた:ヒザ~モモのパーツですね。
ここの上部なんかは側面に塗った接着剤をムニュってしたときに、挟まれた接着剤が回り込んで膝パーツごと固めてしまう恐れがあります。
ちいた:そういった場合は完成時に見えない部分をナイフでざっくり削って、あらかじめ接着剤が回り込まないような処理をしておきます。
編集部:ココのように危うそうな箇所は、最初の可動部の調整を行う際に見当をつけておけば、勢い余って可動部ごと接着してしまうリスクも減らせそうですね。
ちいた:ちなみに肩関節のパーツは胴体を接着してしまうと、そのままでは接続できなくなるので可動の強度に支障がない範囲で胴体側を削っています。
ちいた:今度は各部のパーティングライン処理の説明に入ります。
胴体横のパーツから。
編集部:プラモデルを成型するときに、金型と金型の間に隙間にプラが流れた線のことですね。
ちいた:ちょっと見にくい気がするので、ザックリ赤い線で分かりやすくしてみました。
このラインをヤスリで消していきます。
編集部:おぉ! キレイに消えて傷も無い!
ちいた:今回は成型色仕上げなので、ちょっとしつこく傷消しをしてます。
最近ワタシの中で流行っている整形なんですが、
ゴッドハンドの神ヤス400番
↓
3M/スポンジ研磨剤/スーパーファイン(使いなめして研磨剤が減ったもの)
↓
3M/スポンジ研磨剤/ウルトラファイン
↓
3M/スポンジ研磨剤/マイクロファイン
の順番で消していっています。
※参考:神ヤス ゴッドハンド製品ページ
※参考:スポンジ研磨材 3M製品ページ
編集部:うわぁ……面倒くさそう……。
ちいた:たしかに、文字にして並べるとスゲー大変そうですね(苦笑)。
実際にやってみると1パーツ5分もかからないのでそれほど大変でもないのですが……。
ちいた:丁度スティレット発売後にtwitterに乗せていた、顔パーツのパーティングライン消し動画を紹介しますね。
フォロワーの人向けに作った「ただヤスリでパーティングラインを消すだけの動画」なので、こんな感じでやってるんだ~程度に見ていただければと。
動画テスト。ただパーティングラインを消すだけの動画
https://t.co/we31wFWMd2— ちいた (@ravensnest8525) October 23, 2015
編集部:本当にただパーティングラインを消すだけの動画(苦笑)。
でも他人の作業ってあまり見る機会がないので、参考になりそうですね。
(本名見えとるがな……。)
ちいた:神ヤスで赤く塗ったパーティングラインがどんどん消えていく様子が個人的には好きなんですけどね。
まぁ、超地味な動画です。
近年模型OFF会などにも顔を出すようになってから「表面処理」と言っても意外とみんな違うことに驚いたので、参考程度にしていただけると幸いです。
ちいた:これが仕上がった顔パーツですね。
こんな感じで腕、脚など目立つパーティングラインや継ぎ目を消していきます。
ちいた:特に腕部は目立つので、綺麗に消してあげるとよいでしょう。
多少傷が残っても仕上げにツヤ消しスプレーを吹いてあげると、艶消しの粒子で細かい傷が消えるのであまり神経質にならなくても大丈夫です。
編集部:そういえば、手首のパーツは軟質素材ですよね?
塗料が乗らないと思うのですが、それでも大丈夫ですか?
ちいた:ここですね。
必殺「気にしない」でスルーするのもOKですが、消したい場合はまずプラと同じように細かく切ったヤスリで削り落とします。
編集部:(必殺……?)やっぱり傷が目立ちますね。これも細かく磨いていって整えるんですか?
ちいた:それでもいいのですが、細い指の間など磨くの大変ですし、軟質樹脂なのでグネグネ曲がって磨きづらいので、ツールウォッシュなど使用して表面を溶かしていきます。
編集部:表面を溶かす!? 大丈夫なんですかそんなことして。
ちいた:あくまで表面のみなので、漬け置きしない限りは問題ないです。
ちなみに今回はツールウォッシュを使用してますが、流し込み系接着剤やツールクリーナーなど強めの溶剤を塗布すれば同じような効果を得られます。
ちいた:これが溶剤を塗り終わった状態。
編集部:おぉ! 綺麗に消えてる!
表面溶かしたせいか、若干艶消しっぽくなってますね。
ちいた:コンパウンドなどでさらに磨けばピカピカにもできますが、武装の変更で頻繁に動かす部分なのでこんな感じでいいかと思います。
※参考:ツールウォッシュ ガイアノーツ製品ページ
ちいた:さて、大分長くなってしまいましたが、今回は最後に頭部の後ハメ方法を紹介したいと思います。
編集部:顔パーツを交換するための分割ですね。
1/12フィギュアなどでは定番なので、そんなに気にならないと思いますが。
ちいた:私も『FA:G』轟雷ではそう思って消さなかったのですが、ネットなど見ると皆さん後ハメ加工していて「あ、やっぱり消せるものなら消したいんだな」と思いまして。
このスティレットちゃんではやってみようかなと。
ちいた:後ろ髪をこう分割して、
ちいた:内側のダボを赤ペンで記した通りに削り込む。
ちいた:最終的にこういう構成にすると顔パーツを前髪の下から滑り込ませて交換することができます。
編集部:髪の下から滑り込ませる?
なんかよくわからないのですが……。
ちいた:おふっ、画像だけだとどうしてもそのへんはわかりにくいですね…。
ちょうどこの加工しているときに同じ加工してた方が動画で組み方を上げていたので、リンク貼っておきます。
あ、ちゃんと掲載OK貰ってますからね!
https://twitter.com/mystle_tainn/status/655022097148739584
編集部:おぉ! わかりやすい!
そしてさっきのちいた氏の動画より綺麗!
ちいた:うぐっ……痛いところを……。
ミストルさんはオリジナルのFA多数作っていたり、自作のデカール販売したりされてる方で、作品もさることながら画像も綺麗で色々と見習わなきゃです。
編集部:おう、そうだ見習え!
ちいた:ぐぬぬ、容赦ないっすね(汗)
■加工終了
ちいた:さて、これで塗装前の作業が一通り終了しました。
加工前後を見てみましょう。
編集部:比較してみると、加工してツヤが消えた以外はそんなに変わらないように思いますね。
ちいた:たしかにそうですね。
ただ、最初にやった各部の可動部の調整で、とても遊びやすい状態になってます。
実物を触ってもらう機会があれば、比較して効果を実感してもらえるんですが。
編集部:中々そういうのは難しいですねぇ。
『フレームアームズ』『FA:G』キャラバンなどに顔を出して、ご自身で地道に広げてください。
ちいた:ぬぅ……。
ちいた:さて、次回は各部を塗り分けて成型色仕上げの完成としたいと思います。
編集部:今回は冒頭に触れたクファンジャルについて全然触れませんでしたね。
ちいた:スティレット部分の加工に関しては轟雷含めほぼ同じですからね。
とりあえず成型色仕上げではプラの透明感を大事にしつつ、筆塗りや艶消しスプレーなどの割と手軽な方法での仕上げを模索していきます。
編集部:模索もいいですが、発売からそれなりに期間も経ってますのでスピードも大事にしてくださいね!
ちいた:うぐ……了解しました……。
<DATA>
フレームアームズ・ガール スティレット
■NONスケールプラスチックキット
■全高:約150ミリ
■価格:4,800円(税抜)
■原型製作:清水 康智
■発売中
■発売元:コトブキヤ
<関連情報>
フレームアームズ・ガール スティレット コトブキヤ製品ページ
フレームアームズ・ガール スティレット コトブキヤオンラインショップ
アーキテクトマン公式twitter @faman_type001
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(C) KOTOBUKIYA